続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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「滑って川に落ちた!?」

 珍しく甲高い声を上げて驚いたイオリはパティの体をペタペタと触って無事の確認をした。

「それで?大丈夫なの?!」

 イオリのあまりの心配そうな顔にパティはコクリと頷いた。

「正確に言うと滑ってだ。
 あっという間の事で、みんな身動きが取れなくてパティが姿を消していくのを慌てて見る事しか出来なかった。
 それが・・・。」

 ヒューゴは何とも言えない顔でスコルとチラッと視線を交わした。

「知らない男の人がパティを助けてくれたんだ。」

「え?」

 キョトンとするイオリにスコルは慌てたように説明した。

「イオリと別れた直後の事だったし、ちゃんと周囲に人がいないのを確認してたんだ。
 それなのに気配もなく現れて、パティをヒョイっと引っ張り上げてくれて、お礼も言えないままに行っちゃったんだ。」

「スコルの言ってる事は本当の事だ。
 癖のある長い髪をした男だった。
 パティを助けたかと思ったら、岩を飛び越えるように走り去って行ったんだ。
 向かった方角にホワンが待っていたから、男の事を聞いたが見てないらしい。」

 ヒューゴの話にホワンは小さく頷いた。

「うん。
 知らない。
 皆んなが来るまで誰も来なかった。」

 不可解な話に一同が首を捻る中、イオリは大きな溜息を吐いた。

「誰であろうと、恩人ですね。
 大事にならずに済んで良かったぁ。
 パティ。
 自然の環境下は、どんな事で大怪我につながるか分からないのだから、注意しなければいけないよ。」

 パティはイオリの言葉に頬を染めて頷いた。

「はい。
 ごめんなさい。」

「イオリ。
 俺からもスマン。
 心配をかけた。」

 ヒューゴの謝罪にイオリは頷くと、肩をポンと叩いた。

「無事なら何よりです。
 こちらもお待たせしました。」

 知らない男の存在を気にしながらも、一同は互いの無事を喜んだ。

「だから!
 歩き辛いっての!」

 ヒューゴや子供達は穏やかな空気を切り裂くような騒がしさに気づくと、イオリを避けて覗き込んだ。
 すると、ずんぐりとした影がロクに纏わりついているのが見えてきた。

「何あれ?」

 スコルが見上げるとイオリはニコニコと微笑んだ。

「旅の同行者。」

「「「はっ?」」」

 驚いたヒューゴと双子は正体を知ろうと近づいていく。

「あ。
 ゼンちゃん。」

 ゼンがせっつく様に、ずんぐりとした男の尻を突っついていた。

「ドワーフか・・・。
 あれが、イオリの言ってた気配の正体か?」

「はい。
 洞穴にシールドを張って隠れていました。
 “グランヌス”では鍛治職人をしていたみたいです。
 どうやら国内で危険な目に遭って逃げてきた様なんですが、やはり国に戻りたいとの事で同行する事になりました。」

「はぁ・・・。
 また、お前は・・・。」

 呆れたようなヒューゴにイオリは「へへへ。」と笑って誤魔化した。

「で?
 あれは何をしてるんだ?」

 ヒューゴが顎でしゃくるとイオリは苦笑した。

「なんでか、なにかとロクさんに絡むんですよね。
 同じ国の人だからでしょうかね。」

 ロクは前後左右をドワーフに囲まれ歩き辛そうに近づいてくる。

「おぉ、お前達が旅仲間か!」
「大きのと小さいのといるな。」
「仲良くしよう。」
「腹が減った。」

 自由なドワーフに面食らう大人達に比べ、子供達はワクワクしたように笑顔で出迎えたのだった。
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