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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜

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トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

 どこからか陽気な音が聞こえた。

「ホイサ!」
「ヨイサ!」
「ソリャ!」
「ドッコイ!」

トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

「リズムがズレてるぞ。」

「そーかなぁ?」

「そう言うお前は、どうなのだ?」

「ワシは見事なもんさ。」

「みんな、もう一息だ。
 もう一度。」

トンッ!テンッ!カカンッ!
トンッ!カカンッ!

 4人の男が何やら音を奏でていた。

「おい!
 静かに!
 近くに人の気配がする・・・。」

「こんな渓谷に誰が来るものか。」

「・・・いや、確かに気配がするな。」

だったら、どうする?」

 4人の男は抜き足、差し足と静かに様子を伺った。

「・・・行ったみたいだな。
 大丈夫だ。
 ワシらを見つけるのは至難の技だぞ。」

「そうだ!
 見つかるもんか。
 驚かせやがって!」

「誰でもかかって来い!」

「でも、まだ近くにいるかもよ?」

 すると4人の男達は顔を見合わせて震えるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーー

 昔々の事でした。
 ある所に一生懸命に働く真面目なロバがいました。
 
 年月が経ち、年老いたロバが働けなくなると飼い主は彼に暴力を振るう様になりました。
 耐えきれなくなったロバは、風の頼りに聞いた、遠くの街にいる音楽隊に入ろうと飼い主の元から逃げ出しました。

 1匹寂しく旅を続けるロバは、同じく年を取り、狩りが出来なくなった犬と出会います。
 犬は今にも主人から見放されると嘆いています。
 そこでロバは一緒に音楽隊に入ろうと誘いました。
 
 2匹になった旅の途中にロバと犬は、年を取りネズミ取りが出来なくなった猫と出会います。
 猫は今にも家から放り出されると悲しんでいます。
 そこでロバと犬は一緒に音楽隊に入ろうと誘いました。

 3匹になった旅の途中にロバと犬と猫は、朝の時間を告げる役を引退勧告された鶏に出会います。
 鶏は、まだ声が出るのに明日の夕食にされると泣き出しました。
 そこでロバと犬と猫は一緒に音楽隊に入ろうと誘いました。

 4匹は仲良く旅をしていましたが、途中で疲れて休憩しようとしました。
 しかし、周りには何もありません。

 辛抱して歩き続けると森の中に一軒の家を見つけました。
 月の灯りを頼りに恐る恐る近づくと、そこは盗賊達の家でした。

 盗賊達は盗んできた酒と食べ物で宴会中です。
 
 どうしてもお腹の空いた4匹は、どうにか出来ないものかと相談しました。
 
 そこで、ロバの上に犬が乗り、犬の上に猫が乗り、猫の上に鶏が乗り一斉に鳴き出したのです。
 すると、夜の森から化け物の声がすると盗賊達が慌てて逃げ出しました。

 もぬけの殻となった家でロバと犬と猫と鶏は食事を済ますと疲れた体を癒したのでした。

 家を取り返そうと来た盗賊達を力合わせて追い出したロバと犬と猫と鶏は、森の家を気に入り音楽隊に入らずに共に暮らしたのでした。

ーーーーーーーーーーーーーーー 

 
 
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