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旅路〜グランヌス(渓谷・渓流)〜
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「美味い!
世界には、こんなにも美味いものがあるのかっ!?
このゴロっとした肉は、昼間のデスカローヴァですか?」
カレーを初めて食したムネタカは顔を高揚させて頬張った。
「何処にでもあるわけじゃないよ。
イオリのカレーが美味しいんだよ。
肉もデスカローヴァじゃないよ。
魔獣の肉って、解体してから時間をおいた方が美味しんだ。
カレーに使った肉は別物だけど沢山あるから、おかわりする?」
自慢げなスコルの言葉に口をパンパンにしたムネタカが頷くと、追随するようにロクも目をキラキラさせて「自分も」と手を上げた。
「気に入ってくれて良かったです。」
久しぶりのカレーに舌鼓を打ち、イオリも満足そうに笑うと、リルラ達に視線を向けた。
スコルによって大盛りに盛り付けられたラックは夢中にガツガツと食べ進め、ゴヴァンは噛み締める様に顔を綻ばしていた。
「・・・ホッとする。」
リルラは大きく切られたニンジンをスプーンで掬うとパクッと食べた。
「食べましょう。
食べて力を蓄えて下さいね。」
イオリの言葉に何度も頷くとリルラはラックに負けずにガツガツと食べ始めた。
洞穴の中での食事を終え、片付けをするイオリの耳に強めの雨の音が聞こえた。
「さっきより、降ってますね。」
「そうですね。
渓谷の下には渓流・・・すなわち川があります。
雨量によって水嵩が変わります。
嵐の時は荒れる川に巻き込まれる危険があります。」
片付けを手伝っていたゴヴァンが渓流の歩き方を教えてくれる。
「逆に敵も雨の日には近づかないと言う事です。
当分は敵との遭遇はないでしょう。」
「なるほど・・・。
子供達にも注意しなきゃいけませんね。」
焚き火を囲み、絵本を朗読するナギに耳を傾ける子供達を見つめるイオリだった。
___________
むかしむかし、我儘で傲慢な王子がいました。
ある日の夜、王子のもとに1人の老婆がやって来ました。
「ここ迄の旅で疲れてしまったのです。
一晩泊めて頂けませんか?」
助けを求める老婆がボロボロな服を着ているのを見て、王子は首を横に振りました。
「冗談じゃない。
さっさと帰れ。」
「でしたら、水1杯頂けませんか?」
そう願う老婆を王子は足蹴りにして激昂しました。
「薄汚い老婆め!
お前には水の1滴でもやるものか!」
王子が手酷く追い払った次の瞬間でした。
老婆の体がピカッと光り、美しい女神に姿を変えたのです。
「1粒の優しさも持ち合わせぬ其方に罰を・・・。」
愚かしい王子が許しを願うのも目に留めずに女神は魔法で王子を醜いペスフロッグに変えてしまったのでした。
その後、汚らしい姿を人々に嫌われた王子は家臣や民に泣きながら助けを求めましたが、王子である事すら気づかれずに石を投げつけられる始末でした。
人を外見で判断し、困った人すら助けなかった王子は自分の過ちを悔やみながらペスフロッグの姿で一生を終えたのでした。
_________
読んでいた絵本を閉じたナギは一息付いた。
「人を容姿で判断した愚かしい王子の話だよ。」
パチパチパチパチ
子供達は拍手をした。
「王子、女神様に魔獣に変えらちゃったんだね。」
「ペスフロッグってカエルみたいで、ベトベトの液体が出るから嫌い。」
双子が顔を顰めるとニナがパティに抱きついてイヤイヤと首を横に振った。
「ボク・・・人を見た目で判断するのやめる。」
ラックが身を竦ませると子供達は同意するように頷いたのだった。
「人を見た目で判断するなか・・・。」
ナギの話を聞いていたムネタカは苦笑すると、片付けを終えようとするイオリに近づた。
「イオリさん。
聞いて欲しい話があります。」
世界には、こんなにも美味いものがあるのかっ!?
このゴロっとした肉は、昼間のデスカローヴァですか?」
カレーを初めて食したムネタカは顔を高揚させて頬張った。
「何処にでもあるわけじゃないよ。
イオリのカレーが美味しいんだよ。
肉もデスカローヴァじゃないよ。
魔獣の肉って、解体してから時間をおいた方が美味しんだ。
カレーに使った肉は別物だけど沢山あるから、おかわりする?」
自慢げなスコルの言葉に口をパンパンにしたムネタカが頷くと、追随するようにロクも目をキラキラさせて「自分も」と手を上げた。
「気に入ってくれて良かったです。」
久しぶりのカレーに舌鼓を打ち、イオリも満足そうに笑うと、リルラ達に視線を向けた。
スコルによって大盛りに盛り付けられたラックは夢中にガツガツと食べ進め、ゴヴァンは噛み締める様に顔を綻ばしていた。
「・・・ホッとする。」
リルラは大きく切られたニンジンをスプーンで掬うとパクッと食べた。
「食べましょう。
食べて力を蓄えて下さいね。」
イオリの言葉に何度も頷くとリルラはラックに負けずにガツガツと食べ始めた。
洞穴の中での食事を終え、片付けをするイオリの耳に強めの雨の音が聞こえた。
「さっきより、降ってますね。」
「そうですね。
渓谷の下には渓流・・・すなわち川があります。
雨量によって水嵩が変わります。
嵐の時は荒れる川に巻き込まれる危険があります。」
片付けを手伝っていたゴヴァンが渓流の歩き方を教えてくれる。
「逆に敵も雨の日には近づかないと言う事です。
当分は敵との遭遇はないでしょう。」
「なるほど・・・。
子供達にも注意しなきゃいけませんね。」
焚き火を囲み、絵本を朗読するナギに耳を傾ける子供達を見つめるイオリだった。
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むかしむかし、我儘で傲慢な王子がいました。
ある日の夜、王子のもとに1人の老婆がやって来ました。
「ここ迄の旅で疲れてしまったのです。
一晩泊めて頂けませんか?」
助けを求める老婆がボロボロな服を着ているのを見て、王子は首を横に振りました。
「冗談じゃない。
さっさと帰れ。」
「でしたら、水1杯頂けませんか?」
そう願う老婆を王子は足蹴りにして激昂しました。
「薄汚い老婆め!
お前には水の1滴でもやるものか!」
王子が手酷く追い払った次の瞬間でした。
老婆の体がピカッと光り、美しい女神に姿を変えたのです。
「1粒の優しさも持ち合わせぬ其方に罰を・・・。」
愚かしい王子が許しを願うのも目に留めずに女神は魔法で王子を醜いペスフロッグに変えてしまったのでした。
その後、汚らしい姿を人々に嫌われた王子は家臣や民に泣きながら助けを求めましたが、王子である事すら気づかれずに石を投げつけられる始末でした。
人を外見で判断し、困った人すら助けなかった王子は自分の過ちを悔やみながらペスフロッグの姿で一生を終えたのでした。
_________
読んでいた絵本を閉じたナギは一息付いた。
「人を容姿で判断した愚かしい王子の話だよ。」
パチパチパチパチ
子供達は拍手をした。
「王子、女神様に魔獣に変えらちゃったんだね。」
「ペスフロッグってカエルみたいで、ベトベトの液体が出るから嫌い。」
双子が顔を顰めるとニナがパティに抱きついてイヤイヤと首を横に振った。
「ボク・・・人を見た目で判断するのやめる。」
ラックが身を竦ませると子供達は同意するように頷いたのだった。
「人を見た目で判断するなか・・・。」
ナギの話を聞いていたムネタカは苦笑すると、片付けを終えようとするイオリに近づた。
「イオリさん。
聞いて欲しい話があります。」
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