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旅路〜パライソの森3〜

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 霧が晴れ、朝露が煌めき出した。

「そろそろ魔獣が動き出すぞ。」

 タイソンが辺りを見渡し耳を澄ました。

「はい。行きましょう。」

 イオリは短く返事をするとアマメを見上げた。

『この“パライソの森”は、この森に住むモノ達の物。
 イオリは好きに動けば良い。
 もイオリを待っている。』

「ソライヤ・・・。」

『ドラゴンについては“火の吹く山”で引きこもっている奴に聞けばいい。
 さぁ、行きなさい。』

「はい。
 ありがとうございます。」

 ソライヤに会いたいイオリにヒントをくれたアマメに礼を言うと、イオリは小鹿の頭を撫でた。
 小鹿は気持ち良さそうに擦り寄り甘えてると、引き留めようとコートと袖をハムハムと噛む。

「ごめんよ。またね。」

 イオリが離れると名残惜しいのか、トコトコと近づいてくる。
 その小鹿をアマメが引き戻していた。

『我儘を言うんじゃない。
 お前にはお前の役目があるのだから。』

 不満そうな小鹿を宥めるアマメは、やっぱり母親だった。

『真っ直ぐに進め。
 森を抜けるまで。』

『ありがとう。
 またね。』

 ゼンが挨拶するように鼻を突き出すと、アマメもチョンとくっつけた。

「よしっ。行こう!」 

 イオリが走り出すと、1番にゼンが反応し飛び出した。

「あっ、待ってぇ。
 バイバイ。」

「またね。」

「行ってきます。」

「また、会いにくるね。」

 慌てたように子供達がアマメや小鹿に手を振りながら“大樹”から離れた。

 慌てたのはガーディアン達やムネタカ達である。

「守護神様。
 失礼します。」

 タイソンをはじめ祈りを捧げるとガーディアン達はイオリの後を追いかけた。

「なっ・・・えっと・・・。」

 どうしたら良いのだと困るムネタカの肩をヒューゴが叩いた。

「なっ?
 いつも、のんびりしているクセに、時々せっかちなんだよ。
 イオリってのは。
 アマメ様。
 慌ただしくて申し訳ありません。
 お世話になりました。」

 礼儀正しく挨拶をするヒューゴにアマメはズズっと顔を近づけた。

『良き旅を。
 我らの愛し子を頼む。』

「承知しました。
 行きましょう。
 ムネタカ様、ロクさん。」

 ヒューゴが促すと戸惑いながらも2人はついてきた。
 そんな2人の背にアマメの声が届く。

『心迷うは人の特権。
 美しく生きるは己次第。
 人の心を忘れずにあらがう其方等に幸あらんことを・・・。』

 振り返った2人であったが、すでにアマメと可愛い小鹿の姿は消えていた。
 
 顔を見合わせたムネタカとロクはどちらともなく微笑むと“大樹”に頭を下げるのだった。

「夢のような時間だった。」

「そうッスね。
 誰に言っても信じてもらえそうにないッスよ。」

 国から逃げて苦しい思いをしたムネタカは、この森で出会った全てに感謝した。
 
「帰ろう。
 私達の国に・・・。
 父を・・・全てを解放し、国を取り戻す。」

「はい。
 お供します。」

 迷いを晴らした2人の若者は真っ直ぐと故郷を目指した。
 
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