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旅路〜パライソの森3〜
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昔々、山深い里に心優しい男が暮らしておりました。
ある日、男は風邪を拗らした母の為に薬を買いに山を超えて町を訪れました。
無事に薬を買い、家に帰ろうにも、辺りは日が暮れそうです。
悩んだ男でしたが、母の容態を心配し、早く帰ろうと足早に山道に踏み込みました。
暗くなっていく道を男は心細い小さな火を手に進んでいきます。
山頂に近づき一息つこうと、月が照らしていた岩に腰掛け休憩していると徐に男を呼ぶ声が聞こえました。
「もし、もし。
そこの人。」
ギョッとした男はキョロキョロと辺りを見渡します。
「もし、もし。
そこの人。」
聞き間違いではないと目を凝らす男の前に美しい女性が木の影から顔を覗かせました。
色が白く艶やかに美しい女性に男は見惚れました。
「もし、もし。
そこの人。
こんな夜中に、何処に行きなさる?」
「病の母の為に薬を買って帰る所です。」
「優しい人、ちょっと助けてくれませんか?」
良く見れば、女は足を怪我しているようです。
「怪我をして家に帰れず困っていたのです。
私の家は、この奥にあるのです。」
「それはお気の毒に、手を貸しましょう。」
気の毒になった男は女性を助けて森の奥の家を目指す事にしました。
着いたのは小さな茅葺の家でした。
「優しい人。
ありがとう。
どうぞ、朝まで休んで行って下さい。」
母の事を思い、悩む男も女性の誘いを断れずにお邪魔する事にしました。
女性が用意した暖かいご飯に舌鼓をし、フカフカの布団に横たわると、すぐに意識が薄れていきました。
ズルズル ズルズル
ズルズル ズルズル
奇妙な音に目が覚めた男は、まだ外が暗い事を確認し目を擦りながら起き上がりました。
「あのー。」
扉の向こうにいるであろう女性に声をかけるが返事かない。
「もうし?もうし?」
恐る恐る男は転がっていた棒を手にし扉を開くと、なんと、大きな大きな大蛇がとぐろを巻いて舌をペロペロとしている姿があったのでした。
「なっ!」
声を失う男に大蛇が女性の声で笑い出しました。
「餌が起きた。
餌が起きた。
お前に傷つけられた傷が疼くんだよ。
傷をつけられた代わりに、お前を喰ろうてやろうと狙っていたのだ。」
男は思い出しました。
畑仕事の時に現れた蛇を手荒に追い払った事を・・・。
「あの時の・・・。
すまなかった。すまなかった。」
謝る男を大蛇は楽しそうに体を揺らています。
「餌。餌。餌。」
今にも襲いかかってきそうな大蛇に震えた男は、傷ついた蛇の足に棒を突き刺し逃げ出しました。
「待てぇぇぇ!」
追いかけてくる大蛇から男は必死に逃げました。
振り返る余裕もない男の耳にズルズルと這いずる音が聞こえます。
「待てぇぇぇ!
食事をして丸々太って旨かろう。
寝ている間に食ってやれば良かった。」
走って走って走った男は月明かりに照らされた山道に戻ってきた。
「口惜しい・・・口惜しい・・・。」
大蛇は光の元には出てくる事が出来ないようで、木々の中から男を睨みつていました。
男は逃げ転がるように家に帰って行きました。
生きて戻れた男はホッとして母に薬を飲ませました。
元気になった母に安堵した男は、元の生活に戻りましたが、その後も時折、蛇の悔し気な声が聞こえてくるのでした。
___________
「おしまい。おしまい。」
「怖っ!」
ナギが話て聞かせるとロクは顔を引き攣らせた。
「人の見た目に騙されちゃ駄目って事。
後は、どんなに良い人、優しい人も時には間違った事をするっていう教訓だよ。」
「へー。」
ナギとロクの会話を聞き、ムネタカはロクはとは別の意味で顔を顰めた。
「我らにとって耳の痛い話だな。
さしずめ、姫巫女は大蛇か・・・。」
「フフフ。
あっ。
大樹にが見えて来ましたよ。」
イオリが指差す大きな大木を見上げてムネタカは顔を引き締めるのだった。
昔々、山深い里に心優しい男が暮らしておりました。
ある日、男は風邪を拗らした母の為に薬を買いに山を超えて町を訪れました。
無事に薬を買い、家に帰ろうにも、辺りは日が暮れそうです。
悩んだ男でしたが、母の容態を心配し、早く帰ろうと足早に山道に踏み込みました。
暗くなっていく道を男は心細い小さな火を手に進んでいきます。
山頂に近づき一息つこうと、月が照らしていた岩に腰掛け休憩していると徐に男を呼ぶ声が聞こえました。
「もし、もし。
そこの人。」
ギョッとした男はキョロキョロと辺りを見渡します。
「もし、もし。
そこの人。」
聞き間違いではないと目を凝らす男の前に美しい女性が木の影から顔を覗かせました。
色が白く艶やかに美しい女性に男は見惚れました。
「もし、もし。
そこの人。
こんな夜中に、何処に行きなさる?」
「病の母の為に薬を買って帰る所です。」
「優しい人、ちょっと助けてくれませんか?」
良く見れば、女は足を怪我しているようです。
「怪我をして家に帰れず困っていたのです。
私の家は、この奥にあるのです。」
「それはお気の毒に、手を貸しましょう。」
気の毒になった男は女性を助けて森の奥の家を目指す事にしました。
着いたのは小さな茅葺の家でした。
「優しい人。
ありがとう。
どうぞ、朝まで休んで行って下さい。」
母の事を思い、悩む男も女性の誘いを断れずにお邪魔する事にしました。
女性が用意した暖かいご飯に舌鼓をし、フカフカの布団に横たわると、すぐに意識が薄れていきました。
ズルズル ズルズル
ズルズル ズルズル
奇妙な音に目が覚めた男は、まだ外が暗い事を確認し目を擦りながら起き上がりました。
「あのー。」
扉の向こうにいるであろう女性に声をかけるが返事かない。
「もうし?もうし?」
恐る恐る男は転がっていた棒を手にし扉を開くと、なんと、大きな大きな大蛇がとぐろを巻いて舌をペロペロとしている姿があったのでした。
「なっ!」
声を失う男に大蛇が女性の声で笑い出しました。
「餌が起きた。
餌が起きた。
お前に傷つけられた傷が疼くんだよ。
傷をつけられた代わりに、お前を喰ろうてやろうと狙っていたのだ。」
男は思い出しました。
畑仕事の時に現れた蛇を手荒に追い払った事を・・・。
「あの時の・・・。
すまなかった。すまなかった。」
謝る男を大蛇は楽しそうに体を揺らています。
「餌。餌。餌。」
今にも襲いかかってきそうな大蛇に震えた男は、傷ついた蛇の足に棒を突き刺し逃げ出しました。
「待てぇぇぇ!」
追いかけてくる大蛇から男は必死に逃げました。
振り返る余裕もない男の耳にズルズルと這いずる音が聞こえます。
「待てぇぇぇ!
食事をして丸々太って旨かろう。
寝ている間に食ってやれば良かった。」
走って走って走った男は月明かりに照らされた山道に戻ってきた。
「口惜しい・・・口惜しい・・・。」
大蛇は光の元には出てくる事が出来ないようで、木々の中から男を睨みつていました。
男は逃げ転がるように家に帰って行きました。
生きて戻れた男はホッとして母に薬を飲ませました。
元気になった母に安堵した男は、元の生活に戻りましたが、その後も時折、蛇の悔し気な声が聞こえてくるのでした。
___________
「おしまい。おしまい。」
「怖っ!」
ナギが話て聞かせるとロクは顔を引き攣らせた。
「人の見た目に騙されちゃ駄目って事。
後は、どんなに良い人、優しい人も時には間違った事をするっていう教訓だよ。」
「へー。」
ナギとロクの会話を聞き、ムネタカはロクはとは別の意味で顔を顰めた。
「我らにとって耳の痛い話だな。
さしずめ、姫巫女は大蛇か・・・。」
「フフフ。
あっ。
大樹にが見えて来ましたよ。」
イオリが指差す大きな大木を見上げてムネタカは顔を引き締めるのだった。
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