上 下
496 / 781
旅路〜ルーシュピケ2〜

504

しおりを挟む
 跪き、主人を仰ぎ見ていたソウスケを立ち上がらせるとムネタカは書状を手渡した。

「これをデザリア王へ渡してくれ。
 ルーシュピケの皆さんとイオリ殿も紹介状を書いてくれたが、私からもご挨拶が必要だろう。」

「承知しました。
 必ず、お渡しします。」

 2人の側にはロクとキクが見守っていた。

「ロク、ムネタカを頼む。」

「分かってますよ。
 アンタの分も守ってみせます。
 ソウスケさんも、砂漠で干からびないでくださいよ。」

 いつもの軽口を叩くロクにソウスケはニヤリと笑った。

「あぁ。」

 1人、口少なくいるキクをムネタカが背中を押す。

「キクよ。
 お前もソウスケと共に行け。」

 突然の言葉にキクは驚いて声を上げた。

「ムネタカ様!?」

「ムネタカ!」

 それはソウスケとて同じ事だった。

「私の元を離れるのが罰だとソウスケは言った。
 それを聞いたキクも思う所があったのだろう?
 それに・・・ソウスケを1人にしたくない。
 命令だ。
 ソウスケと共にデザリアへ参れ。」

「・・・。」

 何も言えずに目に涙を溜めるキクをムネタカは微笑んだ。
 
「さらばだ。」

 別れを告げて背を向けたムネタカを2人は頭を下げて見送った。

「・・・良いんですか?
 幼馴染が1人もいなくなっちゃいましたよ。」

 揶揄うロクにムネタカは笑った。

「良いんだ。
 あの2人は、幼い頃より好き合っていたからな。
 引き離すのは忍びない。
 1人でいるよりも2人の方が安心だ。
 それに、私にはお前がいる。
 そうだろう?」

「へーへー。
 どこまでも、お供しますよ。」

 ムネタカにとって幼馴染のソウスケとキクは兄と姉であった。
 そんな2人との別れは身が裂ける程に寂しく、不安であった。
 それでも、前を向くと決めたムネタカにとって見るべきは故郷“グランヌス”に蔓延る敵である。
 信じると決めたイオリと共に旅立つムネタカであった。


「準備は良いですか?」

「はい。
 お待たせしました。」

 ムネタカ達の別れを見届けたイオリ達はいよいよ、出発の時となった。
 
「さぁ、霧が晴れる前に行きなさい。」

 ハニエル老の言葉にイオリは頷いた。

 ハニエル老の目線はイオリからナギに移っていく。

「いつでもおいで。」

「はい!」

 ナギは満面の笑みで返事をした。

。」

 ハニエル老の言葉にイオリは頷いた。

「それじゃ、お別れです。」

 ルーシュピケの門が開かれると、ガーディアン“サバト”が飛び出して行く。
 彼らが“パライソの森”を抜けるまで案内をしてくれるのだ。

「みんな、行こう。」

「「「「おー!!」」」」

 子供達が飛び出すとイオリとヒューゴは集まった人達に会釈をして門から出た。

 霧に消えていくイオリ達を見送るとルーシュピケの住人達が家に戻っていく中、2人の男女がいつまでも見つめているのだった。

「ムネタカよ。
 達者でな。」

「お気をつけて。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

記憶を無くした聖女様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:42

邪魔者はどちらでしょう?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:91,365pt お気に入り:1,223

この白魔術師は癖が強い 〜私が最強?知らんわそんなん〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:874pt お気に入り:27

旦那様は私が好きじゃなかった。ただ、それだけ。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:9

【第2章開始】あなた達は誰ですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:468pt お気に入り:9,700

大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

BL / 連載中 24h.ポイント:674pt お気に入り:4,470

婚約破棄された令嬢は、実は隣国のお姫様でした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,437pt お気に入り:3,025

【完結】25妹は、私のものを欲しがるので、全部あげます。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,199pt お気に入り:4,853

処理中です...