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旅路〜ルーシュピケ2〜
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「それじゃ、皆さん。
お世話になりました。」
朝霧の中、別れの挨拶をするイオリにハニエル老とフェンバインを始めとしたルーシュピケの住人達が見送りに出ていた。
“グランヌス”が攻めてこようとしている今、ルーシュピケを離れるのは不安もあるが、イオリ達には役目がある。
「この地の事は心配しなくてよい。
いつの時代も自分達で守って来たのだ。」
「そうだゾウ。
お前さんは、とっとと親玉をブッ叩いてもらわなきゃならねーからな。」
「「「そうだ!そうだ!」」」
声をあげる住人達の団結にイオリは微笑んだ。
振り返ればヒューゴを始めとして、子供達が睡魔を封印して気合いを入れている最中だった。
“パライソの森”の通過には注意しなければならない事があると知っているからだ。
それぞれがストレッチや持ち物の確認に忙しい。
それは従魔であるゼンやアウラも同じでありソワソワとしている。
いつもと変わらないのはフェニックスのソルだ。
「ソル、また眠ってる。」
アウラの頭で丸くなって目を瞑るソルをパティが覗き込んで微笑んだ。
ソルは“パライソの森”に来てから、いつもの倍は眠っているようだった。
助けて欲しい時には力を貸してくれるが、それ以外は目を瞑っているのだ。
「・・・それじゃ、後を頼んだぞ。」
「ああ。」
イオリは声のする方に視線を向けた。
そこにはムネタカに跪くソウスケの姿があった。
ーーー昨晩の事。
「ムネタカ、許して欲しい。
俺はお前と共に“グランヌス”には帰らない。」
夕食も終わろうという時にソウスケが宣言したのだ。
「・・・どういう事だ?」
家臣であり、友である男が短絡的に出した言葉ではない事はムネタカは承知の事だった。
「俺は、今だに自分の事が許せずにいる。
お前と共にある事が俺の役目であり、願いだ。
今でも、王となるお前を支えたいと思っている。
だからこそ、主人であり、幼馴染のお前の命を脅かす・・・それに利用された自分が許せないのだ。」
ーーー例え、お前が許すと言っても。
ソウスケの決意は堅かった。
1番大切であるムネタカの側を離れる。
それ以上の罰は自分にはない。
ソウスケは己の弱さを主人の所為にしかねない甘さを呪った。
「今の私ではお前の隣どころか後も歩く事すら出来ない。」
ムネタカは友人の思いを汲んでやりたかった。
「離れて何をする?」
「正直、何も分からないんだ。」
2人の会話を固唾の飲んで見守っていたロクと涙を流すキクは、どうしようもないのだと悟っていた。
「それなら・・・。」
声をかけたのは薪を抱えたヒューゴだった。
「ルーシュピケに囚われている“エルフの里の戦士”をデザリアに届ける役目をすればいい。」
どういう事だと首を傾げるソウスケにヒューゴはニヤリとした。
「と言っても、辛いぞ?
“パライソの森”を抜けて灼熱の砂漠を越えなきゃデザリアの首都バッカスには着かない。
その間には魔獣も現れるし、下手したら“エルフの里”の奴らが襲って来るかもしれない。」
過酷の道のりである事は間違いない。
「“グランヌス”の影に“エルフの里”があると知って、アースガイルやミズガルドも動くと聞けば、当然、デザリアも力を貸してくれるだろう。
ルーシュピケに奴らが攻めて来るのならガーディアン達だけじゃ心許ない。
要請すればデザリアから助けが来るだろう。
“グランヌス”の王子の代理としての使者の役割は重要だ。」
「私は、まだ・・“グランヌス”の・・・ムネタカの役に立つ事ができるのか。」
“魅了”が解けた後、塞ぎ込んでいたソウスケの瞳に力が戻ってきた事にムネタカは嬉しく感じていた。
友との別れを決意したムネタカは一抹の寂しささえも見せてはならないと、別れを認めたのだった。
お世話になりました。」
朝霧の中、別れの挨拶をするイオリにハニエル老とフェンバインを始めとしたルーシュピケの住人達が見送りに出ていた。
“グランヌス”が攻めてこようとしている今、ルーシュピケを離れるのは不安もあるが、イオリ達には役目がある。
「この地の事は心配しなくてよい。
いつの時代も自分達で守って来たのだ。」
「そうだゾウ。
お前さんは、とっとと親玉をブッ叩いてもらわなきゃならねーからな。」
「「「そうだ!そうだ!」」」
声をあげる住人達の団結にイオリは微笑んだ。
振り返ればヒューゴを始めとして、子供達が睡魔を封印して気合いを入れている最中だった。
“パライソの森”の通過には注意しなければならない事があると知っているからだ。
それぞれがストレッチや持ち物の確認に忙しい。
それは従魔であるゼンやアウラも同じでありソワソワとしている。
いつもと変わらないのはフェニックスのソルだ。
「ソル、また眠ってる。」
アウラの頭で丸くなって目を瞑るソルをパティが覗き込んで微笑んだ。
ソルは“パライソの森”に来てから、いつもの倍は眠っているようだった。
助けて欲しい時には力を貸してくれるが、それ以外は目を瞑っているのだ。
「・・・それじゃ、後を頼んだぞ。」
「ああ。」
イオリは声のする方に視線を向けた。
そこにはムネタカに跪くソウスケの姿があった。
ーーー昨晩の事。
「ムネタカ、許して欲しい。
俺はお前と共に“グランヌス”には帰らない。」
夕食も終わろうという時にソウスケが宣言したのだ。
「・・・どういう事だ?」
家臣であり、友である男が短絡的に出した言葉ではない事はムネタカは承知の事だった。
「俺は、今だに自分の事が許せずにいる。
お前と共にある事が俺の役目であり、願いだ。
今でも、王となるお前を支えたいと思っている。
だからこそ、主人であり、幼馴染のお前の命を脅かす・・・それに利用された自分が許せないのだ。」
ーーー例え、お前が許すと言っても。
ソウスケの決意は堅かった。
1番大切であるムネタカの側を離れる。
それ以上の罰は自分にはない。
ソウスケは己の弱さを主人の所為にしかねない甘さを呪った。
「今の私ではお前の隣どころか後も歩く事すら出来ない。」
ムネタカは友人の思いを汲んでやりたかった。
「離れて何をする?」
「正直、何も分からないんだ。」
2人の会話を固唾の飲んで見守っていたロクと涙を流すキクは、どうしようもないのだと悟っていた。
「それなら・・・。」
声をかけたのは薪を抱えたヒューゴだった。
「ルーシュピケに囚われている“エルフの里の戦士”をデザリアに届ける役目をすればいい。」
どういう事だと首を傾げるソウスケにヒューゴはニヤリとした。
「と言っても、辛いぞ?
“パライソの森”を抜けて灼熱の砂漠を越えなきゃデザリアの首都バッカスには着かない。
その間には魔獣も現れるし、下手したら“エルフの里”の奴らが襲って来るかもしれない。」
過酷の道のりである事は間違いない。
「“グランヌス”の影に“エルフの里”があると知って、アースガイルやミズガルドも動くと聞けば、当然、デザリアも力を貸してくれるだろう。
ルーシュピケに奴らが攻めて来るのならガーディアン達だけじゃ心許ない。
要請すればデザリアから助けが来るだろう。
“グランヌス”の王子の代理としての使者の役割は重要だ。」
「私は、まだ・・“グランヌス”の・・・ムネタカの役に立つ事ができるのか。」
“魅了”が解けた後、塞ぎ込んでいたソウスケの瞳に力が戻ってきた事にムネタカは嬉しく感じていた。
友との別れを決意したムネタカは一抹の寂しささえも見せてはならないと、別れを認めたのだった。
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