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旅路〜ルーシュピケ2〜
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静まりかえった中でハニエル老の溜息が聞こえた。
「ミズガルドの国王が変わった頃か、ルーシュピケを訪れたリルラは自分の罪の告白した。
そして、私達は許したのだ。
奴隷として命令に背けば命を脅かされる状況で必死だった同胞を、どうやって責められるだろうか。
リルラは罪を償うと言った。
ひとえに償うとは言うが、償うとは何だろうか?」
ハニエル老の話を皆がジッと聞き耳を立てた。
「ルーシュピケの民の中には人族に迫害され傷つけられた者や、奴隷として酷使された上で捨てられた者もいる。
特に我らエルフは長命だ。
人族や獣人に比べると、その苦しみは果てしなく長い。
解放されたリルラは、残りのどれ程の時間を償うのだ?
ましてや、自分の望みで犯した犯罪ではない。」
罪を断罪されるなら、その彼女を蹂躙したのは誰なのだ。
死んで全てを終わらせた張本人ではなく、咎を背負う奴隷達の責任とは何なのか。
ハニエル老は説いているのだ。
「同胞を傷つけた者、同胞を助けられなかった者。
互いに、残ったのは罪悪感だ。」
この言葉はムネタカやソウスケ、キク、ロク達の心にキツく刺さった様だった。
それぞれが顔を顰めている。
「だから、私はリルラが自分の使命として奴隷の身に落とした同胞達の解放をすると言った時に嬉しかった。
この子は償いの道を見つけたのだと。
そして、その解放は同胞達だけでなくリルラの心も解放されていくのだろう。
そのリルラが“神の愛し子”を主人と認めた。
長い年月を過ごしてきた老骨にとって、大いなる希望の光だ。」
ハニエル老はイオリとリルラを見比べ、微笑んだ。
「・・・何も知らなかった。
“グランヌス”の人間は他国に目を向けるよりも、自分達の殻に篭る気質があります。
世界で悲惨な状況下に置かれている者達へ、視線を向ける事すらなかった。
無知は罪です。
こんな状況になって・・・自分達が滅ぶ危機になって初めて気づくなんて、私達はなんて愚かなんだ。」
自分達の強さばかりを追求し、他国に目を向けずに外交政治に疎かった“グランヌス”。
結果的に内に籠る事で外敵から身を守ってきたという、自国の臆病さにムネタカは幻滅した。
「人間は馬鹿なくらいが丁度いい。」
明るいイオリの声にムネタカは首を傾げた。
「祖父の言葉です。」
ニコッと笑ったイオリをハニエル老やフェンバインまでもが興味深げに聞き耳を立てている。
「全知全能であったら、それは神です。
本来、種族とはそれぞれに欠点があると同時に得意な事がある訳ですよ。
人族、エルフ、獣人、ドワーフだって互いに補い合えば、神が羨むくらい素晴らしい世界になる。
“グランヌス”は強さを求めると言いますが、強さとは何ですか?
俺の知る強さとは弱者に手を伸ばす余裕の事だと思っています。
自分の強さを押し付け、欲望が加わればタチが悪い。
それを成そうとしているのがダークエルフです。」
「・・・している?
ダークエルフが生きていると?」
ムネタカの国にとってダークエルフは過去の闇で、不可侵の条約を結び里に籠ったという歴史しか知らない。
とっくに亡くなっているものとばかり思っていたのだろう。
「死した後も強い影響力を持っているんですよ。
今の“エルフの里”はダークエルフ・ルミエールの復活を企んでいます。
それが、各国に現れダンジョンの消滅を引き起こし、“魅了”や魔獣を閉じ込める球体の悪用につながっているんです。」
目を見開くムネタカ達にイオリは言い放った。
「すでに“エルフの里の戦士”が貴方を狙っている。
“グランヌス”の・・・ムネタカさん達の敵は、俺達・・・世界の敵と同じなんです。」
ムネタカ達は、そこで初めてイオリ達と見るべき報告が同じであると知ったのだった。
「ミズガルドの国王が変わった頃か、ルーシュピケを訪れたリルラは自分の罪の告白した。
そして、私達は許したのだ。
奴隷として命令に背けば命を脅かされる状況で必死だった同胞を、どうやって責められるだろうか。
リルラは罪を償うと言った。
ひとえに償うとは言うが、償うとは何だろうか?」
ハニエル老の話を皆がジッと聞き耳を立てた。
「ルーシュピケの民の中には人族に迫害され傷つけられた者や、奴隷として酷使された上で捨てられた者もいる。
特に我らエルフは長命だ。
人族や獣人に比べると、その苦しみは果てしなく長い。
解放されたリルラは、残りのどれ程の時間を償うのだ?
ましてや、自分の望みで犯した犯罪ではない。」
罪を断罪されるなら、その彼女を蹂躙したのは誰なのだ。
死んで全てを終わらせた張本人ではなく、咎を背負う奴隷達の責任とは何なのか。
ハニエル老は説いているのだ。
「同胞を傷つけた者、同胞を助けられなかった者。
互いに、残ったのは罪悪感だ。」
この言葉はムネタカやソウスケ、キク、ロク達の心にキツく刺さった様だった。
それぞれが顔を顰めている。
「だから、私はリルラが自分の使命として奴隷の身に落とした同胞達の解放をすると言った時に嬉しかった。
この子は償いの道を見つけたのだと。
そして、その解放は同胞達だけでなくリルラの心も解放されていくのだろう。
そのリルラが“神の愛し子”を主人と認めた。
長い年月を過ごしてきた老骨にとって、大いなる希望の光だ。」
ハニエル老はイオリとリルラを見比べ、微笑んだ。
「・・・何も知らなかった。
“グランヌス”の人間は他国に目を向けるよりも、自分達の殻に篭る気質があります。
世界で悲惨な状況下に置かれている者達へ、視線を向ける事すらなかった。
無知は罪です。
こんな状況になって・・・自分達が滅ぶ危機になって初めて気づくなんて、私達はなんて愚かなんだ。」
自分達の強さばかりを追求し、他国に目を向けずに外交政治に疎かった“グランヌス”。
結果的に内に籠る事で外敵から身を守ってきたという、自国の臆病さにムネタカは幻滅した。
「人間は馬鹿なくらいが丁度いい。」
明るいイオリの声にムネタカは首を傾げた。
「祖父の言葉です。」
ニコッと笑ったイオリをハニエル老やフェンバインまでもが興味深げに聞き耳を立てている。
「全知全能であったら、それは神です。
本来、種族とはそれぞれに欠点があると同時に得意な事がある訳ですよ。
人族、エルフ、獣人、ドワーフだって互いに補い合えば、神が羨むくらい素晴らしい世界になる。
“グランヌス”は強さを求めると言いますが、強さとは何ですか?
俺の知る強さとは弱者に手を伸ばす余裕の事だと思っています。
自分の強さを押し付け、欲望が加わればタチが悪い。
それを成そうとしているのがダークエルフです。」
「・・・している?
ダークエルフが生きていると?」
ムネタカの国にとってダークエルフは過去の闇で、不可侵の条約を結び里に籠ったという歴史しか知らない。
とっくに亡くなっているものとばかり思っていたのだろう。
「死した後も強い影響力を持っているんですよ。
今の“エルフの里”はダークエルフ・ルミエールの復活を企んでいます。
それが、各国に現れダンジョンの消滅を引き起こし、“魅了”や魔獣を閉じ込める球体の悪用につながっているんです。」
目を見開くムネタカ達にイオリは言い放った。
「すでに“エルフの里の戦士”が貴方を狙っている。
“グランヌス”の・・・ムネタカさん達の敵は、俺達・・・世界の敵と同じなんです。」
ムネタカ達は、そこで初めてイオリ達と見るべき報告が同じであると知ったのだった。
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