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旅路〜ルーシュピケ2〜

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 後を向いて腕輪に話しかけているリルラを見てフェンバインが不満そうに鼻を鳴らした。

「フンっ!
 何でい。コソコソと。
 どこのどいつと話してるんだい?」

 それにはヒューゴが苦笑しながら説明をした。

「恐らく、アースガイル国の宰相グレン・ターナー侯爵閣下でしょうね。
 ホワイトキャビンの旅団長のリルラさんですが、本来は奴隷として元ミズガルドの暗部として活動していました。
 強制されていたとはいえ、犯罪に手を染めていたリルラさんは仲間達の状況などを含めて宰相殿に報告義務があるんです。
 情報の開示にも制限が掛かっています。
 それが、アースガイルがリルラさん達の希望を叶える為に出した条件なんです。」

「リルラ達の希望とは何だね?」

 エルフが奴隷だったと悲しむハニエル老が問いかけると、ヒューゴは顔を綻ばした。

「苦しむ仲間達を解放する事。
 そして、イオリに忠誠を誓う事。」

 アースガイルという国にではなくイオリ個人に忠誠をと言ったリルラ達をハニエル老は楽しげに笑った。

「そうか。そうか。カッカッカッ!」

 フェンバインも納得したのか、うんうんと深く頷いていた。

「それなら、しょうがねーな。」

 黙って聞いていたムネタカはリルラの背をジッと見つめていた。

「アースガイルの宰相殿と・・・。」

「アルさんとも話せますよ?
 国王のアルさんです。」

 イオリが手をヒラヒラさせると、何を言っているのか分かったムネタカは焦ったようにブンブンと首を横に振った。

「いや、いい!待ってくれ!
 今の私には、アースガイル王と話す心を持ち合わせていないのだ。」

「そうですか?
 大丈夫だと思いますけどね。」

 軽々しく言うイオリに真っ青の顔のムネタカ。
 可哀想になってヒューゴがイオリの頭を小突いた。

「辞めとけ。
 いつかは話す必要があるだろうが、彼らはまだ無理だって言ってるだろう。
 代わりに、お前が連絡しろよ。」

「・・・はーい。」

「・・・しろよ?」

「・・・分かってますよ。」

「小言を言われるのは、俺だからな?」

「・・・分かってますよ。」

 連絡不精のイオリの代わりに報告を怠らないヒューゴは目を細めて睨みつけた。
 誤魔化すように、そっぽを向くイオリをパティとニナがクスクスとした。

 やっとの事で戻ってきたリルラが微笑んだ。

「許可が出ました。
 彼方でも、今回の事態を重く受け止めています。
 今まで以上に小まめに連絡する様にとの事です。」

 リルラの視線が自分に向かっている事に気づき、イオリは再び顔を背けた。

「・・・はーい。」

 そんなイオリにリルラはクスっと笑うと、一同を見渡した。

「私はミズガルの暗部として、かつて様々な国での工作活動に携わっていました。
 ルーシュピケを崩壊の危機に貶めた神獣アマメの事件も関係があります。
 捕獲事態は別の者達でしたが私はこの手でアースガイルの地・・・“明けない魔の森”に神獣アマメを解き放った実行犯です。」

 ハニエル老、フェンバイン、キキ医師が冷静に聞いているのとは違い、ムネタカを始めとした“グランヌス”の面々は驚愕した。
 
「アマメだけではありません。
 闇堕ちしたトロールもクラーケンも私が解き放ったんです。」

 一度、目を閉じたリルラはムネタカの目をしっかりと見つめた。

「球体に確保された魔獣達が起こした混乱による影響は大きい。
 ミズガルドの貴族、ルッツ・ヴァハマンの支援によってドミトリー・ドナードが発明した魔道具が“グランヌス”に流出しているのだとしたら、これは既に一国の問題ではなく世界をも巻き込む大事件へと発展したと言う事です。」

 イオリ達は森の中の砦で、様々な国が大きく動き出したと知ったのだった。
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