続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ2〜

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「あの女ですか・・・。
 やっぱり、“神の愛し子”を名乗っているのは女性なんですね?」

 イオリは、これまでの情報と照らし合わせて答えを出した。

「はい。
 姫巫女と呼ばれています。
 自分の事を“セイン”と名乗っていますが、本名かは分かりません。
 子爵であるヨシノリ・アラキなる人物がミカワ屋という商会に囲われているセインを王宮に連れて来たのです。
 そのミカワ屋は鉱石商で町で人気になったセインを気に入り、自分の店で囲い入れていた様です。」

「そのセインさんが王宮に現れてから王様に異変が見られるようになったと。」

「その通りです。
 あの日は夜営訓練で私が居ぬ間の事でした。
 同席した宰相の話によると、謁見の前は父もセキエイ子爵とセインの訪問に不快感を示していたそうです。
 でも、謁見が始まり数分経つと、いつの間にか会話が和やかに進められ、終わる頃には再び訪問の約束を取り付けたとか。
 そして二回目の訪問でセインに宮殿内に屋敷が与えられたのです。」

「急展開ですね。」

「はい。
 父の判断に私達も理解が追いつきませんでした。
 正直、当初は父がセインを側室に迎え入れるのかと思っていました。
 だから後宮の者達も大慌てだったのです。
 セインが後宮に入ったとしても、正妃である母・ソウビが最高位です。
 簡単に好き勝手は出来ません。
 でも、別に屋敷を与えられたとなれば後宮の・・・母の管轄外になる。」

「なるほど・・・厄介ですね。」

「貴族達の姫巫女への心酔は拡大していきました。
 まるでサロンのように老若男女が毎日のように通い、後宮を訪れる者達は減っていきました。」

「お母様の影響力が削がれていった?」

「はい。
 次第に母も体調を崩していきました。」

 その母を置いてでも国を離れなければならなかったムネタカの無念は如何程だったろうか。

「私にはシオンという名の同腹の妹がいます。
 それに側室・アオイ殿の子で弟・キヨマサ、妹・ツバキが続きます。
 側室という立場ですがアオイ殿は母・ソウビを慕い、姉妹の様な関係です。
 母は違えど、我れら兄弟も仲が良かった・・・。」

 声を落とすムネタカは思い出すのも苦しそうだった。

「姫巫女は父を使い、我ら兄弟をも利用しようとしていました。
 妹・シオンを降嫁させ家臣と婚姻を結ばせようと画策したり、キヨマサを自分の手元に置きたがり、アオイ殿を後宮から追い出しツバキを孤立させようとしていました。
 私と母の必死の抗議に最終的には、全員が後宮に閉じ込められる事で決着しました。
 バラバラになるよりマシだと思ったのです。
 でも、あの女は納得などしなかった。
 あの日・・・。
 母の女官が焦った顔で私の執務室に駆けつけたて来たのです。 
 それは、弟と妹達を姫巫女が連れ去ったという報告でした。」

 当時の事を思い出しているのだろう。
 イオリが顔を覗き込むと、ムネタカは何も目に映していなかった。

「姫巫女の屋敷に駆けつけた私でしたが、衛兵達に止められ姫巫女の部屋への入室は禁じられました。
 屋敷の外で愕然としていた私に、姫巫女の屋敷に出入りする下働きの娘が声を掛けて来たのです。
 姫巫女の屋敷の様子を調べる為に、折にかけて声を掛けていた娘でした。
 それが、コーラルです。」

 ムネタカは再び、コーラルが立っていた花畑を見つめた。

「コーラルの言葉を頼りに、屋敷の隠し通路から中に入った私達が見たのは、弟と妹達が姫巫女の秘術によって球体に閉じ込められた瞬間だったのです。」

 涙を流したムネタカは絶望を吐き出すように苦しげな声を絞り出した。
 
 
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