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旅路〜ルーシュピケ2〜
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「ふわぁぁ。
・・・眠い。」
珍しく起きるのに苦労したイオリはテントから出ると大きな欠伸をした。
「イオリ殿。
おはようございます。」
向かいのテントからムネタカが這いずって出てきた。
あちらのテントは魔道具ではないから、さぞ寝心地は良くないだろうと聞けば、野営は慣れているとムネタカは笑った。
「昨日は凄かったですね。」
エルフの代表者のハニエルと獣人の代表者であるフェンバインがイオリを完全に受け入れた事で、話し合いどころではなくなり、すっかり祭りになってしまった。
やれ、酒だ。やれ、ご馳走だとルーシュピケの至る所で宴会が始まったのだ。
これから“グランヌス”が攻めてくるぞ。と言うのに知った事かと大酒飲み達が大笑いしては上機嫌に騒ぎまくっていた。
人嫌いのルーシュピケの住人達もムネタカ達には同情的で、特に保護本能の強い獣人などは「これ食え、あれも食え。」と構い通しだった。
昨夜の事を思い出すと2人は笑った。
「・・・久しぶりに心の底から笑いました。」
眉を下げて憂いを帯びたムネタカは焚き火の準備を始めたイオリを手伝い始めた。
「・・・イオリ殿。
本当の“神の愛し子”が貴方と分かった今、“グランヌス”にいる、あの者は偽物という事になります。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「だとしたら、“魅了”に惑わされているとしても、あの者をもて囃している“グランヌス”は神の怒りを買うのでしょうか?」
どこか心寂しげなムネタカをイオリは真剣な顔で見つめた。
「リュオン様が常々言っている事があります。
《世界は生きている者達の物である。》
リュオン様は世界の行く末に干渉しないんです。
良くするも、悪くするも生きた者達の責任です。
国が悪くなったら、絶対神の天罰が降ったと言うのは言い訳に過ぎないんですよ。」
珍しく説教じみた事を言ったイオリであったが、フッと顔を緩めると再び焚き火に薪をくべ始めた。
「ただ・・・。
例えば、乱れ壊れた国であろうと立ち向かい、国を作り直して弱き者達を救う。
そんな国のリーダーにリュオン様が微笑む・・・なんて事はあるかもしれませんね。」
そんなイオリをムネタカはジッと見つめ、口元を緩めた。
「それなら、私は絶対神様が微笑んでくれる国のリーダーになります。」
決意ともとれるムネタカの言葉に焚き火が楽しげに揺れたのを見て、既にリュオンが笑っているようだとイオリは思った。
パタンッ
扉が閉じる小さな音がした。
キキ医師の診療所の裏戸から少女が籠を持って出てきたのだ。
花びらが舞う風と共に美しいストレートの髪を靡かせている彼女の頭からは長い耳が垂れていた。
イオリが声を掛けようと立ち上がろうとした時だった。
隣に立っていたムネタカが勢い良く立ち上がった。
驚くイオリの前でムネタカはブルブルと震える手を必死に握りしめ呟いた。
「コーラル・・・?」
耳の良いウサギの獣人の少女には聞こえたのだろうか。
ビクリとして立ち止まった少女は真っ直ぐにムネタカと視線を合わせた。
「・・・お兄さん?」
まるで花が惑わしたいが為に幻を見せたのではと思うほどに、2人はお互いの存在を信じられいように、見つめ合っていた。
・・・眠い。」
珍しく起きるのに苦労したイオリはテントから出ると大きな欠伸をした。
「イオリ殿。
おはようございます。」
向かいのテントからムネタカが這いずって出てきた。
あちらのテントは魔道具ではないから、さぞ寝心地は良くないだろうと聞けば、野営は慣れているとムネタカは笑った。
「昨日は凄かったですね。」
エルフの代表者のハニエルと獣人の代表者であるフェンバインがイオリを完全に受け入れた事で、話し合いどころではなくなり、すっかり祭りになってしまった。
やれ、酒だ。やれ、ご馳走だとルーシュピケの至る所で宴会が始まったのだ。
これから“グランヌス”が攻めてくるぞ。と言うのに知った事かと大酒飲み達が大笑いしては上機嫌に騒ぎまくっていた。
人嫌いのルーシュピケの住人達もムネタカ達には同情的で、特に保護本能の強い獣人などは「これ食え、あれも食え。」と構い通しだった。
昨夜の事を思い出すと2人は笑った。
「・・・久しぶりに心の底から笑いました。」
眉を下げて憂いを帯びたムネタカは焚き火の準備を始めたイオリを手伝い始めた。
「・・・イオリ殿。
本当の“神の愛し子”が貴方と分かった今、“グランヌス”にいる、あの者は偽物という事になります。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「だとしたら、“魅了”に惑わされているとしても、あの者をもて囃している“グランヌス”は神の怒りを買うのでしょうか?」
どこか心寂しげなムネタカをイオリは真剣な顔で見つめた。
「リュオン様が常々言っている事があります。
《世界は生きている者達の物である。》
リュオン様は世界の行く末に干渉しないんです。
良くするも、悪くするも生きた者達の責任です。
国が悪くなったら、絶対神の天罰が降ったと言うのは言い訳に過ぎないんですよ。」
珍しく説教じみた事を言ったイオリであったが、フッと顔を緩めると再び焚き火に薪をくべ始めた。
「ただ・・・。
例えば、乱れ壊れた国であろうと立ち向かい、国を作り直して弱き者達を救う。
そんな国のリーダーにリュオン様が微笑む・・・なんて事はあるかもしれませんね。」
そんなイオリをムネタカはジッと見つめ、口元を緩めた。
「それなら、私は絶対神様が微笑んでくれる国のリーダーになります。」
決意ともとれるムネタカの言葉に焚き火が楽しげに揺れたのを見て、既にリュオンが笑っているようだとイオリは思った。
パタンッ
扉が閉じる小さな音がした。
キキ医師の診療所の裏戸から少女が籠を持って出てきたのだ。
花びらが舞う風と共に美しいストレートの髪を靡かせている彼女の頭からは長い耳が垂れていた。
イオリが声を掛けようと立ち上がろうとした時だった。
隣に立っていたムネタカが勢い良く立ち上がった。
驚くイオリの前でムネタカはブルブルと震える手を必死に握りしめ呟いた。
「コーラル・・・?」
耳の良いウサギの獣人の少女には聞こえたのだろうか。
ビクリとして立ち止まった少女は真っ直ぐにムネタカと視線を合わせた。
「・・・お兄さん?」
まるで花が惑わしたいが為に幻を見せたのではと思うほどに、2人はお互いの存在を信じられいように、見つめ合っていた。
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