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旅路〜ルーシュピケ2〜
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「俺達は“神の愛し子”を名乗る人物が広める“魅了”の魔道具を見てきました。
それは、腕輪だったり首飾りだったり、イヤリングでもあった。
アースガイルの事件の場合、自分の欲の為に“魅了”の魔道具を利用していましたが、デザリアでは“魅了”にかかった人物が他者を貶める道具にされている事に気づきました。
グランヌスでは、それが顕著のようです。
では、誰が?何の為に?」
見渡すイオリに聴衆が真剣に耳を傾けた。
「答えは知っているのだろう?
本物の愛し子様よ。」
優しげなハニエル老の微笑みにイオリは釣られるように頷いた。
「それは・・・。」
「ちょちょちょっと、待ってください?!」
続きを話そうとしたイオリをムネタカが止めた、その顔はさっきとは違い引き攣っている。
「何ですか?」
「・・・当たり前のように話されていますが、イオリ殿が・・・その・・“神の・・・”。」
「“神の愛し子”だろう?
この国の連中は皆んな知っている事だ。」
言い淀むムネタカに焦れたようにフェンバインが割り込んだ。
「“神の愛し子”と言えば、伝説の存在。
過去に数人現れたと聞きますが、まさかイオリさんが?
・・・事実なのですか?」
信じられないと瞠目するムネタカの後ろではソウスケとキクが顔面蒼白で震え、ロクが楽しそうに目を輝かせている。
「うーん。まぁ、そうなりますかね。」
此処に来て誤魔化すように笑うイオリの隣で真っ白なフワフワが立ち上がった。
『《まぁ、そう》じゃなくてイオリが“リュオン様の愛し子”なの!!
何が、“グランヌスの神の愛し子”だよ!
嘘付き!
絶対に許さない!』
吠えるゼンに流石のルーシュピケの住人達も驚いた。
「おい!
あの狼が喋っているぞ。」
「客人の従魔だろう?」
騒めく同胞達にフェンバインが声をかけた。
「お前達!
静かにしろ!
・・・ホワンから報告を受けている。
白い狼じゃなくて、フェンリルなんだろう?」
ーーー純白のフェンリル。
まさかというように、人々はゼンを凝視した。
『そうだよ。
僕はリュオン様から力を授かった神獣フェンリルのゼン。
“神の愛し子”であるイオリの相棒だよ。
“グランヌス”にいる偽物がリュオン様を馬鹿にしているとしたら、僕は絶対に許さない!』
突如として大きな体になったゼンは広場に集まった者達を圧倒した。
怯え、畏怖、崇拝・・・様々な感情が一瞬で渦巻いた。
それでも、誰もが分かっていた。
“グランヌス”で“神の愛し子”を名乗る人物は神獣に嫌われた。
すなわち、絶対神を敵に回したのだと言う事を・・・。
それは“グランヌス”の王子であるムネタカも同じだった。
圧倒的なゼンの怒りを、受け止め切れずにフラつくムネタカは、止まらない汗を気にする余裕もなかった。
「“神の愛し子”と言えば、古き伝説の存在。
我らが崇拝する“大将軍様”こそが、その伝説と伝えられています。
愚かにも、自分を“神の愛し子”と名乗る、あの女の事を信じるわけがなかった。
でも、不可思議な力で我らを捻じ伏せる、あの者を心のどこかで、畏れていたのです。
本当に“神の愛し子”だったとしたら、私は神の意志に反する行いをしているのだと・・・。
しかし、あの者は偽物だった・・・。」
自分に言い聞かせるように呟くムネタカの肩をイオリは優しく叩いた。
「大袈裟ですよ。
結局は俺は普通の人間ですから。」
ーーー大器な御仁だ。
とてつもない事実をクスクスと笑うだけのイオリにムネタカは救われるようだった。
それは、腕輪だったり首飾りだったり、イヤリングでもあった。
アースガイルの事件の場合、自分の欲の為に“魅了”の魔道具を利用していましたが、デザリアでは“魅了”にかかった人物が他者を貶める道具にされている事に気づきました。
グランヌスでは、それが顕著のようです。
では、誰が?何の為に?」
見渡すイオリに聴衆が真剣に耳を傾けた。
「答えは知っているのだろう?
本物の愛し子様よ。」
優しげなハニエル老の微笑みにイオリは釣られるように頷いた。
「それは・・・。」
「ちょちょちょっと、待ってください?!」
続きを話そうとしたイオリをムネタカが止めた、その顔はさっきとは違い引き攣っている。
「何ですか?」
「・・・当たり前のように話されていますが、イオリ殿が・・・その・・“神の・・・”。」
「“神の愛し子”だろう?
この国の連中は皆んな知っている事だ。」
言い淀むムネタカに焦れたようにフェンバインが割り込んだ。
「“神の愛し子”と言えば、伝説の存在。
過去に数人現れたと聞きますが、まさかイオリさんが?
・・・事実なのですか?」
信じられないと瞠目するムネタカの後ろではソウスケとキクが顔面蒼白で震え、ロクが楽しそうに目を輝かせている。
「うーん。まぁ、そうなりますかね。」
此処に来て誤魔化すように笑うイオリの隣で真っ白なフワフワが立ち上がった。
『《まぁ、そう》じゃなくてイオリが“リュオン様の愛し子”なの!!
何が、“グランヌスの神の愛し子”だよ!
嘘付き!
絶対に許さない!』
吠えるゼンに流石のルーシュピケの住人達も驚いた。
「おい!
あの狼が喋っているぞ。」
「客人の従魔だろう?」
騒めく同胞達にフェンバインが声をかけた。
「お前達!
静かにしろ!
・・・ホワンから報告を受けている。
白い狼じゃなくて、フェンリルなんだろう?」
ーーー純白のフェンリル。
まさかというように、人々はゼンを凝視した。
『そうだよ。
僕はリュオン様から力を授かった神獣フェンリルのゼン。
“神の愛し子”であるイオリの相棒だよ。
“グランヌス”にいる偽物がリュオン様を馬鹿にしているとしたら、僕は絶対に許さない!』
突如として大きな体になったゼンは広場に集まった者達を圧倒した。
怯え、畏怖、崇拝・・・様々な感情が一瞬で渦巻いた。
それでも、誰もが分かっていた。
“グランヌス”で“神の愛し子”を名乗る人物は神獣に嫌われた。
すなわち、絶対神を敵に回したのだと言う事を・・・。
それは“グランヌス”の王子であるムネタカも同じだった。
圧倒的なゼンの怒りを、受け止め切れずにフラつくムネタカは、止まらない汗を気にする余裕もなかった。
「“神の愛し子”と言えば、古き伝説の存在。
我らが崇拝する“大将軍様”こそが、その伝説と伝えられています。
愚かにも、自分を“神の愛し子”と名乗る、あの女の事を信じるわけがなかった。
でも、不可思議な力で我らを捻じ伏せる、あの者を心のどこかで、畏れていたのです。
本当に“神の愛し子”だったとしたら、私は神の意志に反する行いをしているのだと・・・。
しかし、あの者は偽物だった・・・。」
自分に言い聞かせるように呟くムネタカの肩をイオリは優しく叩いた。
「大袈裟ですよ。
結局は俺は普通の人間ですから。」
ーーー大器な御仁だ。
とてつもない事実をクスクスと笑うだけのイオリにムネタカは救われるようだった。
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