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旅路〜ルーシュピケ2〜

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 ーーー悪夢の始まりとは・・・。

「交流を持たないと言いましたが、決して我が国は国を閉ざしている訳ではありません。
 火山の恩恵で温泉施設が多く、秘湯を求めて他国の者が滞在もします。
 強さを求め修行に来る者など当たり前の事です。」

 そんな“グランヌス”の国を騒がす人物・・・。
 人々の心を瞬く間に掴んでいった占いを得意とする修験者は突如として、やって来た。

「その後、町人を味方につけた修験者に目をつけた貴族が現れ始めました。
 それを足がかりに、かの者は貴族社会でも話題になりました。
 私が、初めに修験者の事を耳にして1ヶ月も経っていなかったはずです。
 言いなりになる貴族が増え、修験者の影響力が大きくなるにつれ、危機感を持った国王である父、トウカ・ノブタカ・ショーグンは占いなどの怪しげな祈祷を禁止する考えを示しましたが、時は遅く。
 ・・・ついに、かの者を宮殿に連れて来た者が現れました。」

 唇を噛み締めるムネタカは悔しそうに震えた。

「国の秩序を乱すとして、件の修験者を捕らえた上で調べ上げようとした父でしたが数日後には、かの者に宮殿の敷地内に屋敷を与えていました。」

「・・・うぅむ。」
「確かに怪しいな・・・。」

 詳しく聞けば聞く程に“グランヌス”が怪しげな事態に巻き込まれていると感じ、ハニエル老とフェンバインは考え込んでしまった。

「当時は“魅了”のスキルの事を知りませんでした。
 考えを急激に変えた父に、私を含めて国の中枢は困惑し荒れていきました。
 私自身も父に抗議すればする程に距離を置かれていったのです。
 父が陥落すれば、後は楽だった事でしょう。
 私の周りにいた者が1人、また1人と修験者の陣営に加わっていってしまったのです。
 私に残ったのは、この者達だけでした。
 此処に来て、それも罠だったと知りましたが・・・。」

 疲れた顔をしたムネタカの後ろでは、ソウスケとキクが苦しそうに顔を歪めた。 

「修験者の力が“魅了”のスキルであると気づいたのは治療師でした。
 我が国では剣術こそが嗜好であるとし、魔力の無い者も多くいます。
 その中でもヒールの魔法が使える治療師は珍しく貴重な存在です。
 ある日、毎日のように健康診断を行ってきた国王から拒否されたと、治療師は私に報告をしてきました。
 父は自分の全てを修験者に委ねるようになったのです。
 密かに、鑑定できる魔道具で調べたところ“魅了状態”と診断したのです。
 変わり果てていく家臣達も同じでした。
 自分の考えで、決断で行動しているのならまだしも、他者からの“魅了”の力で言いなりになっているのだとしたら、簡単に処罰など出来ません。
 ましてや国王自らが“魅了”に犯されているのです。
 私は、無事であった家臣達を集め対策に乗り出そうとしたのです。
 しかし、家臣達も家族など異変していく周囲に身動きが取れなくなっていきました。
 全ての者を信じる事が出来ずになっていく宮殿内は、瞬く間に修験者の手によって掌握されてしまったのです。
 既に自分達の手に余ると考えた私達は、魔法に明るい“デザリア”に救いを求めようと国を出ました。
 王子である私だけでも修験者から引き離そうと考えた家臣達の一存で国を出たのです。」

 今も身の危険に苛まれている家臣を置いて国を出た自分にムネタカは恥じているようだった。
 不満を持っていたルーシュピケの民達も、今や同情し静かに見守っている。

 「今更、何も出来なかった事を悔いてはいけません。」

 静まりかえった広場に、確かな声でイオリはムネタカに言葉をかけた。
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