続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ2〜

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 ーーームネタカが意識を取り戻す前の事

「ご迷惑をお掛けしました。
 目覚めぬ主に代わり、お礼申し上げます。」

 4人の中で1番最初に目覚めたのはロクだった。
 頭を下げるロクにイオリはカップを差し出した。

「貴方も気を張っていたでしょう。
 仲間を疑うのは疲れます。」

「・・・はい。」

 深刻な顔をしているロクは渡されたカップにも口をつける事が出来ずにいる。

「2人の“魅了”は解かれました。
 経験上、目覚めるまでには多少の時間が必要なようです。」

「そうッスか・・・あっ、そうですか。」

「フフフ。
 普通で良いですよ。
 俺は貴族でも何でもありませんから。」

 イオリは隣で伏せて目を瞑っているゼンの背を撫でながら、焚き火に薪を焚べた。

 
 不安気に待っていたルーシュピケの獣人達は帰還したガーディアン達に安堵し、パライソの森の安全が確認された事に喜んだ。
 事態の原因となった人族の受け入れに難色を示す者もいたが、イオリが頼み込むと仕方がないと了承してくれた。
 簡単な報告はイドリアルやタイタン達に任せ、詳しい話は本人達が目覚めてからと決まり、解散となった。
 
 イオリ達を受け入れてくれたキキ医師の診療所の裏に咲く花畑の側でテントを張り、お腹を空かせた子供達の腹を満たした後に、やっとの事で休ませたところだった。 
 
 「お言葉に甘えて」と前置きをしたロクが緊張した面持ちで焚き火に近づいてきた。

「・・・あの。
 ちょっと良いッスか?」

「何ですか?」

 目をくれる事もなく焚き火を突っつくイオリにロクは思い切って問いかけた。

「もしかして・・・イオリ様って黒狼ッスか?」

「イオリ様って・・・やめてくださいよ。
 イオリで良いですよ。
 それに・・・黒狼って・・・海を渡ってまで聞く事になるとは思いませんでしたね。」

 困ったように溜息を吐いたイオリに『我当てたり!』とばかりにロクが嬉しそうに話し始めた。

「聞いた事があったッスよ。
 アースガイルのポーレットに突如現れた英雄の話を!
 本当にアンタが噂の黒狼なんスか!?」

 興奮したロクの反応にイオリは誤魔化すように遠くに視線を泳がせた。

「・・・まぁ。
 いつしか、そう呼ばれるようになりましたね。」
  
「本人だよ。」

 追い討ちをかけるように、イオリの後からヒューゴがベーコンの塊を持ってきて、イオリに差し出した。

「本当に?」

「本当に。」

 何度も確かめるロクにヒューゴは何度も頷き、分厚めに切ったベーコンを焚き火で炙り始めたイオリの指に顎をしゃくった。

「あれが、ポーレット公爵の専属冒険者である証の指輪。
 他のはポーレットの冒険者ギルド、ギルドマスターの信頼の証とアースガイル王に認められた証だ。」

 イオリの指に輝く指輪を凝視するロクにイオリは溜息を吐くばかりだ。

「ヒューゴさんだって、イルミナーレって二つ名があるくせに。」

「お前!俺の二つ名をさらっと言うな!
 やめろ!恥ずかしい!」

 そして、2人はギョッとすることになった。
 ロクが涙を流していたからだ。

「どうしたんですか?」
「腹でも痛いのか?」

 そんな2人にロクは笑った。

「違います。
 絶対神が主人の願いを聞き遂げてくれて嬉しいんっスよ。
 実は・・・。」

 ロクが説明をしようとした時だった。

ガシャーン!

 キキ医師の診療所から大きな音がしたのだった。

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