続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜パライソの森⒉〜

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__________

「・・・駒の糸が切れたか。」

 激しく揺れていた蝋燭の火が煙を上げて消えた。

 手のひらを仰ぐと、何処からともなく現れた者が燭台を片づけて行った。

「興醒めだ。」

 何本もの蝋燭を見つめては手に翳して自分の力を確認した。

「・・・問題がない。
 であれば、自分からを切る事はなかろう。
 他の力か・・・。」

 人影は身を翻すと大きく開け放たれた幕から明るい方へ姿を現した。


「おぉぉ、姫巫女様。」
「姫巫女様の神託が降りるぞ!」
「なんと、神々しいお姿。」
「流石、神からの寵愛を得た“神の愛し子”様じゃぁぁ。」

 跪く老若男女が歓喜で涙を流し祈りを捧げている。
 集まる人々を見据え、姫巫女と崇められている女は笑みを浮かべた後に悲しげに眉を下げた。
 その姿は儚くも美しく、人々の心を鷲掴んだ。

「神は悲しんでおられます。
 王子は森の中を彷徨っておられます。
 森の民に囲まれて怯えておいでです。」

 その言葉に集まった人々が殺気立っていく。

「森の民だって・・・?」
「ルーシュピケの民の事か?」
「野蛮な森の獣どもが王子を攫ったのか?!」
「怯えているとは嘆かわしい。」
「いつまでも子供の様に我儘を言っておられた方だ。」
「自業自得だ!」

 王子に対して不満が現れる中でも美しい声が届いてく。

「王子を助けて上げて下さい。
 あの方は、この国に必要な方です。
 至らぬ所は皆で助ければ良いのです。」

 慈愛に満ちた姫巫女に集まった者達の顔が緩んでいった。

 ここは“グランヌス”。
 火山に恩恵を得た“火の国”と呼ばれる国だった。
 
 宮殿の奥地に造られた館は厳重に守られながらも、ひっきりなしに人が訪れていた。
 
 何処から来たのか、誰も知らない。
 3年前に突如として現れた“神の愛し子”と自称する娘に“グランヌス”の人々は沸き立った。

 誰しもが姫巫女に崇拝し、救われ、心の拠り所となった。
 噂を聞き及んだ、時の王は自分の宮殿に呼び寄せ、保護する代わりに“神の声が聞こえる”不思議な力を欲した。


 姫巫女と呼ばれた美しい娘がいた。

 彼女の登場によって誇り高き“グランヌス”は様変わりしていった。

「さぁ、皆さん。
 王子を救いましょう。」

 この日、“グランヌス”による“ルーシュピケ”の進軍が決定した。

_________

 フェニックスの光に当てられたムネタカは2人の幼馴染の側で気を失っていた。
 
「どちらにせよ。
 ルーシュピケが危険に晒されるのか・・・。」

 彼らを見下ろしていたイドリアルの呟きにイオリは小さく頷いた。

 その時、魔獣の川に1匹の小さい鹿が姿を現した。

キューン

 小鹿が一鳴きすると、ウロウロしていた魔獣達が次々と姿を消していく。
 
 唖然とするガーディアン達の中、イオリの目には力が篭っていた。

「好きにはさせませんよ。」

 決意を口にしたイオリの耳に我慢できなくなった少女の声が聞こえてきた。

「お腹減ったぁ。
 早く帰ろうー!」

 パティの叫びに森の木々達が笑うのだった。


 


 
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