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旅路〜パライソの森⒉〜

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「クソ野郎どもが!
 森に火を放つなんて馬鹿な真似を!」

 ルーシュピケのガーディアン“サバト”のメンバーである鳥獣人のタイソンは木々に移っていく火を止めようと必死だった。

「エルフのクセに、森のエネルギーを破壊するなんて信じられない!」

 同じく“サバト”のメンバーであるエルフのエフィリアも突如現れた“エルフの里の戦士”の所業に怒りを抑え切れない。

 2人の思いとは裏腹に火の手が広がっていく。

「エフィリア!!」

 背後で夫であるハルラスの叫びか聞こえた。
 慌てて振り返るエフェリアに“エルフの里の戦士”が襲いかかって来るのが見えた。

「舐めるな!!」

 エフェリアは剣を構えた。

「ウラギリモノ!
 我らが光の代わりに粛清する!」

 剣を交える2人のエルフは種族こそ同じなれど、見た目は全くと言って異なっていた。

 色白で美しい金色の髪を結い上げているエフェリアに対し、浅黒く血走った目にパサつく髪をした“エルフの里の戦士”。

 善戦するエフェリアに苛立ちを見せた“エルフの里の戦士”が、見境もなく体当たりを食らわせてきた。

「クッ!」

 体勢を崩したエフェリアをイヤラしく見下ろした“エルフの戦士”は何度も「粛清」の言葉を口にした。

「こっちにもいるんだよ!!」

 “エルフの里の戦士”を背後から蹴り飛ばしたタイソンがエフェリアを立たせる。

「ありがと。」

「問題ないさ。
 ハルラスも心配してるぞ。」

 エフェリアは夫と視線を合わせニッコリとして手を挙げた。
 別の“エルフの里の戦士”と対峙していた夫も明らかにホッしている様だった。

「にしても、タイソン、ご覧よ。
 こんなに騒いでるのに魔獣達がビクともしないじゃないか。
 こっちの事なんてお構いなしに徘徊してやがる。
 まるで、操られているようだ。」

「・・・操られてる。
 確かにな・・・と関係があるのか?」

 エフェリアの指摘にタイソンは、土煙の中を立ち上がってきた“エルフの戦士”を顎で指した。

「さぁね。
 アイツらだけじゃなくて、洞窟の人族の事も気になるよ。
 一体、何だって言うんだい。」

 タイソンはあちこちで戦闘を繰り広げている仲間を見回した。

 ーーー今はいい。
    だが、いつまで耐えられるか。

 “エルフの里の戦士”がめっぽうタフで戦闘に長けている事は誰しもが知っている事だ。
 自分達も負けない自負があるが、これ以上パライソの森を・・・いや、ルーシュピケを傷つけやさせられない。

 目の前で立ち上がった“エルフの里の戦士”が不気味に笑っているのも気味が悪かった。

「救援が来るまで耐え凌ぐぞ。」

「分かってるさ。」

 エフェリアと健闘を誓ったタイソンであったが、一歩踏み出した瞬間に激痛に襲われ膝から崩れ落ちていった。

「タイソン!!」

 駆け寄ってくるエフェリアを視界に取られながらタイソンは薄れゆく意識と戦う事で必死だった。

 
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