続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ〜

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「狼さん、勝負です!」

 そう叫んだニナの手には既に光を集め出した杖が握られていた。

「人族の子供が、魔法を使うぞ!」

「逃げろ!」

 慌てて距離をとる獣人の中、アズロが覚悟を決めたように槍を構える。

「本当に良いんだな?
 オレは知らないからな。」

 もう一度、視線を向けてきたアズロにイオリは肩をすくめて微笑んだ。

「どうぞ。」

 フェンバインとホワンはアワアワと慌てている。

「良いのか?
 お前の妹なんだろう?」

 これまで何も発言しなかったヒューゴにフェンバインの檄が飛んだ。

「・・・まぁ、怪我する事はないでしょう。
 それに、妹は万が一にも負けませんよ。」

 真剣な顔で妹を見つめるヒューゴに2人は諦めの表情をした。

トントントン

 ホワンは肩を叩かれ、振り返るとパティがニッコリとしていた。

「一緒にクッキー食べながら見よう。」

 そこには座り込んでクッキーを摘む、スコルとナギ、エルフのリルラとゴヴァンの姿があった。
 まるで、見せ物を楽しむかのような一同にホワンは怒りを覚えた。

「本当にコイツら・・・。」

 ホワンが思わず怒ろうとした時だった。

「いくぞ、嬢ちゃん!」

 アズロの声がした。

「オラァァ!」

「光の子集まれ~!」

 アズロの雄叫びとニナの声が重なった。

 すると辺り一面が光で包まれ、見物人達は眩しくて目を閉じた。

 それはアズロも同じ事だった。

 正面から、突撃し小突いて終わろうとしていたところ、眩い光で目が開かない。

「ぐあぁぁぁ!」

 槍を離して目に手を当て痛みと戦うアズロ。

「クソがぁ!」

 次の攻撃がどこからあるか分からない。
 アズロは必死で手を振り回した。

 すると・・・

「水の子助けて!」

 ニナの可愛らしい声が聞こえた。
 
ブクブクブク

 水の音が聞こえ始め、アズロは一瞬にして水に包まれてしまった。

「あの・・・アズロが手を出す事が出来ていない。」

 ホワンは目の前の光景を唖然とした顔で見ていた。

「コイツは・・・どう言うこった。」

 驚いているのはフェンバインも同じだった。
 周辺で見物していた住人達も固唾を飲んで見つめている。

 アズロを包んだ水の塊は球体となって浮き始めた。
 球体の中は泡ぶくで満たされていく。
 グルグルと回されているアズロは手も足も出す事が出来ていない。
 
「フフン♪フン♪」

 先程まで怖がっていたニナも、何故だか楽しげに杖を動かしている。

「ニナは魔法に長けているんですよ。
 1番気に入っているのは水魔法で、あれもニナの得意な魔法です。」

 得意気に話すヒューゴにフェンバインとホワンは唖然としている。

「水魔法で攻撃か・・・。」

「まぁ、攻撃でも何でもないですけどね。」

 イオリがクスクスと笑い出すとヒューゴだけじゃなく、双子とナギも笑い出した。

???

 理解出来ないフェンバインとホワンの耳にニナの楽し気な声が届いた。

「これくらいで良いです。」

 水魔法が解かれ、ぐったりとしたアズロが地面に降ろされた。
 ニナは再び杖を振ると楽し気に手招きをする。

「次は風の子~出番ですよ~。」

 ニナが呼びかけるとアズロを強めの風が覆った。
 まるで小さな竜巻のような渦巻きの風。
 しばらく立って、ポーンっと放り出されたアズロはキメ細やかでフワフワな姿になっていたのだった。

「もう。
 狼さん。
 ちゃんとお風呂に入らなきゃダメですよ。」

 ニナは綺麗な体になったアズロを見て、満足そうに笑ったのだった。


 
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