続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ〜

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「恐怖し、自分達を卑下した。
 恨み、人族を蔑む事で己達の矜持を守った。
 お前達、外から来た若い物達には歪んで見えるだろう。」

 フェンバインの言葉に住人達は視線を下げた。

「言っておくけど、オレは人族に傷つけられた獣人達の気持ちを蔑ろにしてるわけじゃないからね。」

 スコルに睨みつけられる様に見上げられ、フェンバインは眉を下げて頷いた。

「分かっているさ。
 しかし、ルーシュピケに身を落ち着かせる者達の中には人族への拒否反応を抑える事が出来ない者がいる事も理解して欲しい。」

「だから、それも分かってるよ。
 ある程度は覚悟して来たんだから。
 でも、コイツは駄目だ。」

 スコルは大人への敬意など捨て去り、目の前で憤然とする狼の獣人の男を指差した。

「町であれだけ騒ぎがあったんだ。
 オレ達の到着が集落に報告が届いてないはずがない。
 現に、集落にいたラックが噂話を聞いて迎えに来ていたからね。
 その後に、ラックが真っ黒な姿の男を連れて帰ってきた。
 その後にやって来たオレ達が・・・人族のニナがイオリの関係者じゃない確率ってどれ位?」

 スコルの言っている事が正しかったのだろう。
 狼の獣人の男は顔を背けると、スコルの視線から逃げた。

「ルーシュピケの門番・・・ガーディアンは、そんなにアホなの?」

 スコルの言葉にフェンバインだけじゃなく獣人達もギョッとした。

「ガーディアンが調べて入国を許したんだ。
 ニナが凶悪犯であるはずがないじゃないか。」

 呆れるように言い捨てるスコルは再び、狼の獣人の男を指差した。

「本当はコイツはイオリすら気に入らないんだ。
 人族が英雄って馬鹿馬鹿しいとさえ思ってる。
 でも、イオリは強いから喧嘩は売れない。
 だから・・・そこに現れたニナに目をつけたんだ!
 子供に武器を取り出して威嚇して、精々気分が良かったろうね。
 オレは何度でも言ってやる。
 臆病者!」

 散々、外から来た子供に喧嘩を売られたのだ。
 狼の獣人の男・・・アズロは怒鳴り返しても構わなかった。
 しかし、アズロは大きな口をギュッと閉じ、スコルの怒りを聞いていた。

「この国にも人族がいるって聞いたけど、その人達は大丈夫なの?」

 双子の片割れであるパティがフェンバインに問いかけた。

 まるで、自分達が人族を迫害していると思われたと慌てたフェンバインは手をブンブンと振った。

「大丈夫だ!
 奴らは町で暮らしている。
 オイラ達とは友好関係にあるゾウ。」

「町で何してるの?」

 パティは素直に疑問をぶつけた。

「商人だったり、職人だったり、神官だったり・・・。」

 フェンバインが頬を掻いていた。

「人族の人は何か、出来なきゃルーシュピケにはいれないの?」

「この国は獣人とエルフの国だ。
 当たり前だろう?」

 馬鹿にしたような狼の獣人の男にスコルが輪をかけて馬鹿にした顔をした。

「やっぱりそうだ。
 お前は利用価値のある人族だけ受け入れ、本心では国の住人とは認めていない。
 嫌な人族の国と同じ事をしてる。」

「黙れ!!」

 持っていた槍をスコルに突きつけアズロは叫んだ。

「俺を穢らわしい人族と同じにするな!」

「ほら、本性が出た。
 因みに、その“穢らわしい”って言葉はさ、“エルフの里の戦士”がよく使う言葉だよ。」

 スコルの言葉にアズロはギョッとした。

「ルーシュピケが安全と思って、他に目を向けないから、人を傷付けている事も分からないんだ。
 この、勘違い野郎!」

 スコルはアズロの槍を蹴り飛ばし、その喉元に長剣を突きつけた。

 
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