続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ〜

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 ラックのオレンジ色の瞳は嬉しさで輝いていた。

 人族の所為で村を焼かれ、親を亡くし、奴隷として隠密部隊で過ごした地獄の日々。
 それから解放してくれたのは、人族の黒を見に纏った不思議な男だった。

 自分を助けてくれた、この人ならウサギのお姉さんも助けてくれるかもしれない。
 少しの望みに期待してラックは町に戻ってきた。


「おや、ラックちゃん。
 お客さんかい?」

「友達!」


「おい、猫の!
 そいつら、人族じゃないか?」

「うん。
 でも、町で噂の英雄さんだよ。」


「ねぇ、猫の坊や。
 まだ、貴方の商隊は来ないのかしら?」

「到着したよ。
 旅団長も、そろそろ来るよ。」


 獣人の集落に到着すると、色々なところからラックに声が掛かった。
 それをラックは慣れたように返事している。

 イオリ達が足を踏み入れた獣人の集落は、まるで人間の家と違っていた。
 立派に聳え立つ大木達を利用して扉や窓、葉っぱなどを利用した屋根をつけている。
 不規則の家並みも、自然と一体になっていて、微笑ましい。
 
 住人達は見知らぬ人族イオリに注目しているのが分かる。
 笑顔の者もいれば、無表情で観察している者もいた。
 それでも、嬉しそうなラックを見て危険はなさそうだと認識してくれたようだ。
 笑顔のイオリが会釈をすれば、ドキッとしながらも慌てて会釈を返してきた。

 スコルやパティのように人族寄りの容姿に耳や尻尾がついた獣人に慣れていたイオリであったが、よく見れば、獣人と言っても様相は様々だった。
 立派な牙に盛り上がった筋肉を持つ、獣に近い容姿の獣人もチラホラと伺える。

「あそこだよ。
 キキ医師の家にお世話になってるんだよ。」

 ラックが指差したのは他と違って、家の外壁に様々な花が飾られていた。
 イオリが不思議そうな顔をしているのに気づいたのだろう。
 ラックはニコニコと花を指差した。 

「これ?
 キキ医師はね。
 リスの獣人のお医者さんなんだ。
 エルフの人に治療魔法が使える人もいるから、本当にマズイ時は助けてもらうけど、元来は獣人の中には魔法嫌いも多いんだ。
 だから、みんなキキ医師を頼りにしてるんだよ。 
 この花は治療して貰った人が感謝の意味を込めて花を飾っていくんだよ。」

 外壁一面に広がる花の量をみれば、キキ医師がいかに集落の者達に愛されているのかが分かる。
 真っ赤な花を優しく撫でるとイオリはニッコリした。

チリンチリンチリン

 嬉しそうにイオリを見上げるとラックは扉についていた鈴を鳴らした。

「あい。あいあい。
 今、行きますよ~。」

 家の中から、とても甲高い声が聞こえる。

「ラックだよ。
 お客さん連れてきた。」

 しばらくするとイオリの腰ほどの背丈の女性が姿を現した。

「ラック。帰ったの?
 お客さんって、いつも話してる人族の人でしょう?
 あら、真っ黒さん。
 いらっしゃいな。」

 丸っこい笑顔を向けたリスの獣人の誘いを受けて、イオリはゼンと共に家に入っていった。
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