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旅路〜パライソの森〜
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「みんなー!!」
太い木の根や大きな岩をピョンピョンと飛び越えてニナとナギがやって来た。
双子がニコニコと出迎えると2人は安心したように笑った。
「凄かったね。
大きな魔獣が取っ組み合い!」
「怪我ない?
癒そうか?」
興奮気味のニナと4人の怪我を心配するナギ。
ソルほどの力はなくとも、ナギも癒しの手の持ち主だ。
ライアーを奏でると、4人だけじゃなく辺り一帯の草木が力を取り戻した。
「オレ達は大丈夫。
2人は平気?」
下の弟妹を心配するのは長男のスコルだ。
「ブラックタイガーがさ。
ドカーン!って来たから、横からバーン!ってやってさ。
そうしたら、虫が降ってきてギャー!ってなって大変だよ。」
感情の赴くままに報告するパティには、みんなが苦笑するしかない。
その後、ゆっくりと合流したリルラ達は、先程までの騒動跡をキョロキョロを見回した。
荒れ果てた森であるが、ある意味“パライソの森”の姿の1つであるのだろう。
「イオリ。
お前は凄い奴だ。」
ホワンが迷いなくイオリを称賛した。
「自然を相手に俺の出来る事なんて、たかが知れてますよ。
騒動を収めたのはゼンです。」
イオリが撫でる猛々しいゼンを前にホワンは徐に膝まづいた。
「神に使えし煌々たる獣王にご挨拶申し上げる。」
荘厳な挨拶に張本人のゼンはポカンとダラシなく口を開けてホワンを見下ろした。
「神々しいお姿を拝見できるは我らにとっての・・・。」
驚くほど滑らかな物言いのホワンに驚くイオリ達にリルラがニヤニヤとしていた。
「本来の“純白”はこの様に扱われるのですよ。
しかも、ゼン様はフェンリルなのです。
私達と違い、ルーシュピケで生まれ育ったホワンからしたら、現実に存在する神と同じです。」
『いーやーだー!』
リュオン様の如く祀られるのを想像したのだろう。
成獣化して大きくなっているのも忘れ、ゼンはイオリの後に隠れた。
が・・・無理がある。
今度はホワンの方がキョトンとした。
イオリの従魔のワイルドウルフかと思っていた白い狼が実は“純白のフェンリル”であった。
それだけでも驚きと畏怖を感じているのに、当のゼンが敬われるのを嫌がっている。
「・・・どうしたら良い?」
困った顔をするホワンにイオリは優しく微笑んだ。
「先程までと変わりなく、友人として付き合って下さい。
ここにいるのは、俺の相棒のゼンです。
ただのゼン。
ねっ?」
イオリが振り返れば大きな顔で頷き、一瞬で小さい体に戻ったゼンが膝まづくホワンに近寄った。
『僕はゼンだよ。
イオリと相棒のゼン。
分かった?』
尋ねるように首を傾げるゼンにホワンは戸惑いながら頷いた。
「・・・分かった。」
無理やり納得させられた感が否めないが、ホワンが了承したのが分かるとゼンは満足気にイオリの元に戻って行った。
「さて。今度は俺達に教えて下さい。
“パライソの森”とはいつも争いが絶えないんですか?
これなら、怯えて近づく人もいないでしょうね。」
静かになった一帯を興味深そうに見渡すイオリにホワンは首を横に振った。
「いつもはここ迄じゃない。」
「それなら理由がある?」
「・・・ある。」
とても言いづらそうなホワンに視線が集まった。
太い木の根や大きな岩をピョンピョンと飛び越えてニナとナギがやって来た。
双子がニコニコと出迎えると2人は安心したように笑った。
「凄かったね。
大きな魔獣が取っ組み合い!」
「怪我ない?
癒そうか?」
興奮気味のニナと4人の怪我を心配するナギ。
ソルほどの力はなくとも、ナギも癒しの手の持ち主だ。
ライアーを奏でると、4人だけじゃなく辺り一帯の草木が力を取り戻した。
「オレ達は大丈夫。
2人は平気?」
下の弟妹を心配するのは長男のスコルだ。
「ブラックタイガーがさ。
ドカーン!って来たから、横からバーン!ってやってさ。
そうしたら、虫が降ってきてギャー!ってなって大変だよ。」
感情の赴くままに報告するパティには、みんなが苦笑するしかない。
その後、ゆっくりと合流したリルラ達は、先程までの騒動跡をキョロキョロを見回した。
荒れ果てた森であるが、ある意味“パライソの森”の姿の1つであるのだろう。
「イオリ。
お前は凄い奴だ。」
ホワンが迷いなくイオリを称賛した。
「自然を相手に俺の出来る事なんて、たかが知れてますよ。
騒動を収めたのはゼンです。」
イオリが撫でる猛々しいゼンを前にホワンは徐に膝まづいた。
「神に使えし煌々たる獣王にご挨拶申し上げる。」
荘厳な挨拶に張本人のゼンはポカンとダラシなく口を開けてホワンを見下ろした。
「神々しいお姿を拝見できるは我らにとっての・・・。」
驚くほど滑らかな物言いのホワンに驚くイオリ達にリルラがニヤニヤとしていた。
「本来の“純白”はこの様に扱われるのですよ。
しかも、ゼン様はフェンリルなのです。
私達と違い、ルーシュピケで生まれ育ったホワンからしたら、現実に存在する神と同じです。」
『いーやーだー!』
リュオン様の如く祀られるのを想像したのだろう。
成獣化して大きくなっているのも忘れ、ゼンはイオリの後に隠れた。
が・・・無理がある。
今度はホワンの方がキョトンとした。
イオリの従魔のワイルドウルフかと思っていた白い狼が実は“純白のフェンリル”であった。
それだけでも驚きと畏怖を感じているのに、当のゼンが敬われるのを嫌がっている。
「・・・どうしたら良い?」
困った顔をするホワンにイオリは優しく微笑んだ。
「先程までと変わりなく、友人として付き合って下さい。
ここにいるのは、俺の相棒のゼンです。
ただのゼン。
ねっ?」
イオリが振り返れば大きな顔で頷き、一瞬で小さい体に戻ったゼンが膝まづくホワンに近寄った。
『僕はゼンだよ。
イオリと相棒のゼン。
分かった?』
尋ねるように首を傾げるゼンにホワンは戸惑いながら頷いた。
「・・・分かった。」
無理やり納得させられた感が否めないが、ホワンが了承したのが分かるとゼンは満足気にイオリの元に戻って行った。
「さて。今度は俺達に教えて下さい。
“パライソの森”とはいつも争いが絶えないんですか?
これなら、怯えて近づく人もいないでしょうね。」
静かになった一帯を興味深そうに見渡すイオリにホワンは首を横に振った。
「いつもはここ迄じゃない。」
「それなら理由がある?」
「・・・ある。」
とても言いづらそうなホワンに視線が集まった。
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