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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 地獄の砂漠を抜けて鬱蒼とする森の中で1人の男が息を切らしていた。

「はぁはぁはぁ・・・。
 ここ迄くれば、大丈夫か・・・。
 ふぅ・・・今回はヤバかったな。」

 男は流れる川に顔を突っ込むと水を目一杯口に入れた。

「プハァ。」

 常に周りを警戒していた男であったが、背後を取られるまで人がいた事に気づかなかった。

「任務失敗か?」

 男は突然の声を掛けられても驚きはしなかった。

「チッ!お前か・・・。」

「“魅了の魔道具”はどうした?」

「ガレーで没収されたままだよ。
 逃げてくるのに精一杯さ。
 まぁ・・・利用した女はしてきたよ。」

「・・・愚かな女だ。
 “魅了の魔道具”の回収は惜しいが・・・まぁ、いい。
 すぐに帰還するぞ。
 数日でが神託を述べられる日が来る。」

「あぁ、分かってるさ。
 俺もの名を使うのは終いだ。」

 男達は一息つくと誰に見られる事もなく、風の如く姿を消していた。

_________

 
「見て見て・・・しー!静かにっ。」

 パティが指差すとイオリがクッションを枕に眠っていた。
 イオリの隣では子犬姿のゼンがピッタリと寄り添っている。

「イオリが移動中に寝るなんて珍しいね。」

 スコルは静かにブランケットをかけてやると、優しくイオリの頭を撫でた。

「昨日、準備が間に合わないからって夜中まで支度していたらしい。
 寝かせてやれ。」

 御者席から声が掛かればヒューゴが降り返って、口に指を1本当てていた。

「分かった。
 みんな静かにね。」

 スコルが見渡せば、パティもナギもニナも口元に指を1本当てて頷いた。

 ガレーの地はそれまでの街と違って、仕事をするでもなく、のんびりと過ごした子供達である。
 現地の子供達と探検した街は、いつまでも思い出深く残るだろう。

 何せ、久しぶりにイオリが自由に料理をし、買い物を楽しんでいたのである。
 その分、子供達の目には価値のある街として写ったであろう。

 ガレーの地から、しばらくは平坦な道らしい。
 来た時と同じく再び砂漠が続くようだ。

「見てみろ。
 不思議な光景だぞ。」

 ヒューゴの声に子供達が馬車の前方を覗いた。

「砂漠の向こう側が緑一色だ。
 こんな変な土地があるなんてな。」

 遠くからでもハッキリと砂漠と森に境界線があるのが見えていた。

「なんだアレ?」

「本当に不思議・・・」

「でも、砂漠と緑地帯の境があるのはオアシスも同じだよ?
 あれも大きなオアシスなのかな?」

 双子が感嘆の声を上げている隣でナギが首を傾げた。

「いや、アレが“ルーシュピケ”の入り口らしい。
 あの国は森が豊富でエルフや獣人が住みやすいって、シモンさんが言っていた。
 ・・・気を抜くなよ。
 初めての土地は何があるか分からないからな。」

 ヒューゴの警告に子供達は真剣な眼差しで頷いた。

「でも、ラックちゃんがいるんでしょう?
 楽しみだな。」

 ニナの可愛らしい声で馬車は和やかな雰囲気に戻るのだった。
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