続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 飛び出した小鳥が眩く光り始めると誰もが目を瞑った。
 
ピロロ~ピロ~ピロロ~

 タージ・ラバンが強い光を堪え薄目を開ければ、瞬く間に大きくなった鳥は真紅の翼を広げ、サーヘラから奪った耳飾りを踏みつけていた。

「私のっ!
 私の耳飾りが!」

 サーヘラが必死で手を伸ばすも真紅の鳥の光に遮られているようだ。
 喚くサーヘラの足元ではギルマス・かビスが意識を失い倒れていた。

 光が収まると真紅の鳥はサーヘラを見据え、馬鹿にした様に耳飾りを蹴った。

 必死の形相で耳飾りを手にしたサーヘラは唖然とした。
 美しく輝いていた紫色の宝石が光を失い、単なる石へと変化していたのだ。

 同じように呆然としていたタージ・ラバンの目の前に元の姿に戻った小鳥が飛んできて首をクイっと傾げて見せた。

「オワッタ オワッタ。
 ソル エライ エライ
 モドル モドル イオリ モドル
 バイバイ。」

 真紅の小鳥は、もう用がないとばかりに窓に向かって飛んで行った。
 反応したネイルが窓を大きく開いてやると、礼を言う様に回転し、一直線で飛び去ったのだった。

 一瞬の出来事に呆然となる一同の中、女の悲痛な声だけが響いた。

「あぁぁぁぁ。
 私の・・・私の・・・耳飾りがぁぁぁ。
 どうして?!どうしてよぉぉ。」

 耳飾りを握りしめる手をブンブンと振り、顔面蒼白なサーヘラをタージ・ラバンは見下ろした。

「・・・魅了の力か。
 ギルマスを呪っていたんだな。」

「くっ・・・。」

 唇を噛み、顔を歪めたサーヘラは力を失った自分を信じられないのだろう。
 状況を打開できないか考えているようだった。

「知っているか?
 魅了は呪いだ。
 解かれれば、使用者に呪いが跳ね返ってくるらしい。
 お前には、どんな呪いが返ってくるかな?」

 ニヤリとしたタージ・ラバンをサーヘラは愕然とした顔で見上げた。

「・・・嘘。」

「さぁな。
 私も聞いた話だ。
 しかし、あながち嘘でもないらしい。
 魅了の呪いを使用した人間の末路の悲惨さを目撃している人を知っているからな。」

「・・いや・・いやよ!
 だって、私は・・・そんな事、聞いてない。
 私はただ・・・。」

「欲に溺れただけだろう?
 ギルマスを誘惑して、真っ当なサブマスを追い出すつもりだったか?」

 タージ・ラバンに脅され、ブルブルと震え始めたサーヘラは自分を守るように抱きしめた。

「・・・誰だ?」

「えっ?
 ・・・ヒッ!」

 サーヘラは低い声に釣られて、顔を上げると先程までの怒りが可愛いく見えるくらいの怒気を纏ったタージ・ラバンと目が合ってしまった。

「誰に貰ったのです?
 誰の命令で魅了に手を出したのですか?
 相手は貴方の行く末など気にも止めない外道です。
 格段、隠し事する必要もないでしょう。」

 タージ・ラバンの脇からユーフか顔を出すとサーヘラは、どこかホッとした様に頷いた。

「・・・カズブール商会の人。
 ガレーで商売したいから、融通してくれって。」

 未だに自分の置かれた状況が理解できていないのだろう。
 サーヘラは剥れると耳飾りをポイッと投げた。

「こんなつもりじゃなかったのに・・・。」

「こんなつもりも、どんなつもりもない。
 お前は犯罪に手を染めた愚か者だ。
 衛兵に連絡を・・・。」

 タージ・ラバンが冷たく言い捨てた時だった。

コンコンコン

 女性職員がやって来て顔を覗かせた。
 商人ギルドのギルマスが寝転んでいるのにギョッとしている。

「あの・・・。
 カズブール商会から面会の要望で人が来ています。
 ・・・お帰り願いましょうか?」

 惨劇を目にして、当然の提案をすれば主人であるタージ・ラバンが微笑んだ。

「丁度いいね。
 案内してよ。」

「・・・ここにですか?」

「うん。
 ここに。」

 第2幕の幕開けかと溜息を吐く、ユーフとルトゥであった。



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