351 / 781
旅路〜デザリア・ガレー〜
359
しおりを挟む
誰もが言う事を聞く、麗しい笑顔・・・。
タージ・ラバンには大きな武器がある。
街娘から貴族の夫人達、加えて男達でさえ彼の笑顔に絆される。
見窄らしい姿でアーベル・グラトニーに商売のイロハの教えを乞いに行った時でさえ、小間使いで駆け抜けるタージ・ラバンの姿はアースガイルの王都マテオールで、噂になった程であった。
しかし、肝心なアーベル・グラトニーには鼻で笑われてしまい、いたく傷ついたのは心の奥底で眠らせ得ている。
「これはこれは、ギルマス。
お久しぶりです。
わざわざ来られなくても、此方から参りましたのに。」
やって来た商人ギルドのギルマス・カビスは久しく会っていなかったデザリアで最も成長を遂げた男の美しさに目を奪われた。
「ラバン様。
お目に掛からないうちに、また一段と成長されましたな。」
「お褒めの言葉ありがとうございます。
我らラバン商会が、ガレーの地で良き商売を行えるのは領主様のお陰でありますが、秩序を保つ事に尽力されてるギルドのお力でしょう。」
気を良くしたギルマス・カビスは餌を撒かれた網の中にいる事に気づいていなかった。
「・・・ギルマス。
今日は、そちらをご同伴なされたのですか?」
コテっと首を傾げたタージ・ラバンに呆けていたギルマス・カビスは思い出したように隣に立つ娘を紹介した。
「この娘は受付担当、そして私の補佐を務めるサーヘラです。
何せ、美しいだけじゃなく気の利く娘でしてね。
何かと手助けをしてくれるのですよ。
ささ、ご挨拶なさい。」
「はぁ~い。
私はサーヘラですぅ。
タージ様にお会い出来て光栄です。」
サーヘラと名乗った女は挨拶が終わると、ギルマスを見上げニッコリとした。
まるで、『出来たよ!褒めて!』と言いたげな犬のようだった。
その肩耳には大きな宝石がぶら下がっており、およそギルドの受付係とは言えなかった。
その様は明らかに異常であるにも関わらず、ギルマスであるカビスはニコニコとサーレラの頭を撫でた。
《この女がサーヘラか・・・。》
冷静に観察するタージ・ラバンの目端でユーフが異物を飲み込んだかの様に顔を歪めている。
思わず、笑い出しそうになるのを堪えていると、サーヘラがジッと自分を見ているのに気がついた。
「初めまして。」
それ以外の挨拶は不要だ。
美しい笑顔の中に《まるで興味がない》と言われた様で、サーヘラは真顔になった。
それも直ぐに元の目元を潤ませた笑顔に戻り、ギルマス・カビスを腕を引っ張った。
「ギルマスぅ。
タージ様って、本当に綺麗な人ですね。
私、驚いちゃった。」
「そうだろう。
ラバン様はお顔だけではなく様々な貴族からも信頼されいるんだよ。」
「サーヘラもタージ様と仲良くなりたいですぅ。」
再びサーヘラの懇願する様な視線がタージ・ラバンに向かった。
「ありがとう。」
それでも、麗しの微笑みを崩さずに返事をするタージ・ラバンは完結にかつ、それ以上サーヘラに喋る機会を与えずにいる事にラバン商会の面々は気づき、笑いを堪えた。
「こらこらサーヘラよ。
ラバン様を困らせてはいけないよ。」
「はーい。」
なんとも茶番が繰り広げられている中でもタージ・ラバンの笑顔は変わらない。
「それで、今日はどの様なご用件でしょう?」
問いかけるタージ・ラバンにギルマス・カビスはコホンっと咳払いをした。
「少々、困った事になっておりましてな。」
それは、なんとも重っ苦しい話し方だった。
タージ・ラバンには大きな武器がある。
街娘から貴族の夫人達、加えて男達でさえ彼の笑顔に絆される。
見窄らしい姿でアーベル・グラトニーに商売のイロハの教えを乞いに行った時でさえ、小間使いで駆け抜けるタージ・ラバンの姿はアースガイルの王都マテオールで、噂になった程であった。
しかし、肝心なアーベル・グラトニーには鼻で笑われてしまい、いたく傷ついたのは心の奥底で眠らせ得ている。
「これはこれは、ギルマス。
お久しぶりです。
わざわざ来られなくても、此方から参りましたのに。」
やって来た商人ギルドのギルマス・カビスは久しく会っていなかったデザリアで最も成長を遂げた男の美しさに目を奪われた。
「ラバン様。
お目に掛からないうちに、また一段と成長されましたな。」
「お褒めの言葉ありがとうございます。
我らラバン商会が、ガレーの地で良き商売を行えるのは領主様のお陰でありますが、秩序を保つ事に尽力されてるギルドのお力でしょう。」
気を良くしたギルマス・カビスは餌を撒かれた網の中にいる事に気づいていなかった。
「・・・ギルマス。
今日は、そちらをご同伴なされたのですか?」
コテっと首を傾げたタージ・ラバンに呆けていたギルマス・カビスは思い出したように隣に立つ娘を紹介した。
「この娘は受付担当、そして私の補佐を務めるサーヘラです。
何せ、美しいだけじゃなく気の利く娘でしてね。
何かと手助けをしてくれるのですよ。
ささ、ご挨拶なさい。」
「はぁ~い。
私はサーヘラですぅ。
タージ様にお会い出来て光栄です。」
サーヘラと名乗った女は挨拶が終わると、ギルマスを見上げニッコリとした。
まるで、『出来たよ!褒めて!』と言いたげな犬のようだった。
その肩耳には大きな宝石がぶら下がっており、およそギルドの受付係とは言えなかった。
その様は明らかに異常であるにも関わらず、ギルマスであるカビスはニコニコとサーレラの頭を撫でた。
《この女がサーヘラか・・・。》
冷静に観察するタージ・ラバンの目端でユーフが異物を飲み込んだかの様に顔を歪めている。
思わず、笑い出しそうになるのを堪えていると、サーヘラがジッと自分を見ているのに気がついた。
「初めまして。」
それ以外の挨拶は不要だ。
美しい笑顔の中に《まるで興味がない》と言われた様で、サーヘラは真顔になった。
それも直ぐに元の目元を潤ませた笑顔に戻り、ギルマス・カビスを腕を引っ張った。
「ギルマスぅ。
タージ様って、本当に綺麗な人ですね。
私、驚いちゃった。」
「そうだろう。
ラバン様はお顔だけではなく様々な貴族からも信頼されいるんだよ。」
「サーヘラもタージ様と仲良くなりたいですぅ。」
再びサーヘラの懇願する様な視線がタージ・ラバンに向かった。
「ありがとう。」
それでも、麗しの微笑みを崩さずに返事をするタージ・ラバンは完結にかつ、それ以上サーヘラに喋る機会を与えずにいる事にラバン商会の面々は気づき、笑いを堪えた。
「こらこらサーヘラよ。
ラバン様を困らせてはいけないよ。」
「はーい。」
なんとも茶番が繰り広げられている中でもタージ・ラバンの笑顔は変わらない。
「それで、今日はどの様なご用件でしょう?」
問いかけるタージ・ラバンにギルマス・カビスはコホンっと咳払いをした。
「少々、困った事になっておりましてな。」
それは、なんとも重っ苦しい話し方だった。
応援ありがとうございます!
183
お気に入りに追加
9,849
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる