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旅路〜デザリア・ガレー〜
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しおりを挟むイオリにとって、オンリールの事件は過去のものだった。
ここに来て他国であるデザリアの地で、オンリールの名を聞くとは思ってもいなかった。
唖然としながらもイオリは昨日の出来事を思い出すのだった。
__________
ーーーガレー公爵邸の庭にて
イオリは大人達との会話を終え、逃げ惑う子供達を捕まえると輪を囲みガレーの子供達との会話を楽しんでいた。
「Sランク冒険者って、もっと怖い人かと思っていました。」
アシィールを筆頭にジェイド、シトリン、オラン、マイカ、ケシャは優しげに微笑むイオリを興味津々に見つめている。
「怖い人もいるかもしれないけど、俺の知ってるアースガイルのSランク冒険者は普通だよ。」
イオリが肩を竦めると双子がケラケラと笑った。
「アレックスは真面目さん。
揶揄うと、反応が可笑しいの。」
「ロジャーは駄目人間。
いっつもアレックスに怒られてる。
2人とも凄く強いよ。」
「「でも、イオリが1番強い!」」
双子が楽しそうに笑う隣りでナギとニナが顔を見合わせて声を揃えた。
「フフフ。
ありがとう。」
ガレーの子供達は双子やナギが話すイオリの武勇伝に目を輝かせた。
「ドラゴンに会ったのかよ!?」
「デカい馬って何だよ!?」
「大きな黒い蛇って・・・気持ち悪い!」
ガレーの子供達は表情豊な反応をする。
それでも1番、嬉しそうだったは神鳥であるトルトル・ポルポルの話だった。
やはり、自分達の国の守護神は特別らしい。
「トルトルが空色の青でポルポルが太陽の黄色だよ。
いっつも、笑ってる。」
「いたずらっ子だよねー。」
もっと神々しい・・・猛々しい姿を想像していたガレーの子供達に予想外の事だったらしい。
ニナが腰バックから人形を引っ張り出すとケシャに突き出した。
「こっちがトルトルちゃんでこっちがポルポルちゃんね。
教会のシスターに貰ったの。」
教会で御守りとして人形が売られていると聞けば子供達は羨ましそうに人形を見つめた。
「良いなー。
ガレーの教会でも作ってくれないかなぁ。」
ケシャが呟けば、マイカも同意するように頷いた。
「父さんにお願いしてみようかな。」
「お父さんは何してる人なの?」
イオリが問いかけると、マイカはニッコリして答えた。
「商人ギルドのサブマスターです。」
街の大物の子供だった事にイオリは驚いた。
そんなイオリの反応にアシィールは笑い出す。
「マイカの父親は商業ギルドのサブマスでケシャの父さんはサブマスの補佐役なんです。
ジェイドの母さんは冒険者ギルドのギルマスだし、シトリンの家はガレーでも1番の農家。
オランの両親はラバン商会で働いてるんですよ。」
何気なく重要ポイントを押さえているアシィールの人脈にイオリは感心した。
幼くても人を見極める才能があるようだ。
そんな中、マイカが沈んだ顔しているのが分かる。
「どうしたの?
何かあった?」
ブンブンと首を横に振るマイカを気遣うようにアシィールが代わりに答えた。
「今、マイカの父さんとギルマスが喧嘩してるんです。」
不思議そうに目を見開くイオリを見て溜息を吐くマイカであった。
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