続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「私はガレーに到着した次第、自身の商会の調査を致しました。
 これは毎回している事です。
 その際に幾つかの不正を発見いたしました。」

 タージの話にジュード・ガレーは眉を上げた。

「それは、其方の商会の落ち度ではないのか?」

 指摘をされるとジュード・ガレーは素直に頷いた。

「仰る通りで御座います。
 我らの誤りで御座います。」

 タージの後ろではガレー支店長のルトゥが冷や汗を掻いていた。

「それについては既に責任者に咎めを与えてあります。
 しかし、不正をした人間達が3人・・・その全てが商人ギルドから派遣されてきた者達で御座います。
 1・2人ならば、まだしも3人ともなれば偶然では片付けられません。」

 常に数字を扱っているタージの言い分も分かるとジュード・ガレーは唸りながら瞳を閉じた。

「商人は偶然や奇跡を信じません。」

 タージは領主の気持ちが傾いたと話を続けた。

「しかも、不正により仕事が他の商会に流れた形跡が御座います。
 全てが同じ商会でした。
 名を《カズブール商会》と申します。
 これにはラバン商会の会頭として認めるわけには参りません。
 件の商会はリルラ殿が求めるカカオ農園の利権を無理やり取得しようとしている動きも御座います。
 デザリアは、その様な横暴な商売を認められていません。』

 タージが話し終えたと踏んだジュード・ガレーは瞳をギラつかせるとウムラに視線を向けた。

「だそうだ。
 調べを進めてくれ。」

「承知しました。」

 自分の言い分が通ったのかと安堵するタージにジュード・ガレーは苦笑した。

「其方の話を鵜呑みにしたわけでは無いのだ。
 実は暫く前から商人ギルドについて調べていた。
 其方の報告は証拠が増えたという事だ。」

 キョトンとしたのはタージとガレー商会の者達だった。

「ご存じだったと?」

「“何故、対策しなかったのだ”と言ってくれるなよ。
 商人ギルドのギルマス・ガビスは経験も豊富で人望も厚い人物だ。
 どこまで絡んでいるのか極秘で調べる必要があった。
 極秘とは時間がかかるものだ。
 まさか、ラバン商会まで触手が向いているとはな。
 しかし、新参の“カズブール商会”については未だに分かっておらぬ。
 何処から湧いて出てきたものやら・・・。」

 溜息を吐くジュード・ガレーに思わぬ相手が答えを与えた。

 リルラだった。

「それについて、私から御報告があります。
 イオリ様。 
 イオリ様にも関係がある話ですよ。」

 突如、話を振られイオリは驚いた様に目を丸くした。

「・・・俺ですか?」

 リルラは微笑むと、思ってもいなかった言葉を出した。

「イオリ様が、まだアースガイルにおられた時にオンリールの後継問題でクーデターがあったと記憶しております。」

「・・・オンリール。」

 イオリは瞬時に欲に溺れた男と気の毒な老人思い出していた。
 
「オンリールはアースガイルの首都マテオールより東の奥地にある街でござます。
 この地にかつて悲劇があり後継者が次々と亡くなる不幸がありました。
 領主の甥がクーデターを企てた結果なのですが、現在は問題が解決され正当な後継者が跡を継いでいます。」

「成程・・・。
 それで?」

 リルラの説明にジュード・ガレーは頷いた。

「クーデターの問題は貴族の問題だけでは終わらず、件の甥によって冒険者ギルド・商人ギルドが掌握されました。
 オンリールの冒険者や商人はアースガイルの各地で横暴的な働きを始めたのです。
 アースガイル王によって全て解決された際に、その冒険者や商人達の多くが処罰を受けたり、現在も拘束されたりと対処されています。
 ・・・しかし、国の動きよりも先に逃れた輩がいたようです。」

「それが“カズブール”であると?」

「はい。」

 リルラの報告にイオリは呆気に取られるしかなかったのだった。


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