続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「御目通りの願いが叶い感謝申し上げます。
 ラバン商会・会頭タージ・ラバンに御座います。
 後ろにおりますのが、補佐役ユーフ、ガレー支店を任せておりますルトゥに御座います。」

 タージ・ラバンが挨拶するのをジュード・ガレーは頷いて聞いていた。

「久しいな。ラバンよ。
 先のダンジョン閉鎖にはバッカスの商人達も大変だったろう。
 見事な立ち回りでデザリアの枯渇の危機を支えてくれた。」

「勿体無いお言葉にございます。
 流通の速さは民間こそ得意分野とお考え下さった、王とガレー公爵様の御命令のお陰でございます。」

 ジュード・ガレーは笑顔で話すタージ・ラバンの隣りで静かに傅く美しいエルフの女に目を向けた。

「今日は見慣れない者もおるのだな?」

「はい。
 こちらはアースガイルから参られた“ホワイトキャビン”という名の商会の旅団長リルラ殿です。
 この度、デザリアとの商売を求めバッカスに新しい拠点を作られました。
 “ホワイトキャビン”については宰相ナロ・シウバ様を通じて王もご存知の事と聞き及んでおります。」

 他国の商会であるが、宰相筆頭に王までもが認めていますよ。

 そんなタージ・ラバンの説明にジュード・ガレーは笑い出した。

「そんなに意気込まずとも良い。
 我らの屋敷に誰が滞在されているか、其方達も知っているだろう。」

 次の瞬間、イオリが窓から顔を出した。

「あれ?もう来てたんですね。
 ジュードさん。
 彼女がリルラさんですよ。」

 ニコニコしたイオリがピョンと窓から入っていくると、タージ・ラバンは見事にガックリと項垂れた。
 
「俺の営業努力は・・・。」

 貴族と平民。
 決して越えられない壁を簡単に乗り越えるイオリに脱力しているタージ・ラバンをリルラはクスクスと笑った。

「お初にお目にかかります。
 “ホワイトキャビン”にて旅団長を務めます。
 リルラでございます。
 代表であるバート・グラトニーはグラトニー商会の一族に連なる者。
 商会の立ち上げにも豪商アーベル・グラトニーが関わりました。
 どうぞ、宜しくお願い申し上げます。」

 グラトニーの名前は他国にも轟いている。
 信用を得るのに1番効果がある。

「其方の事はイオリ殿に聞いておった。
 カカオの買い付けに来たのだな?」

「その通りで御座います。」

 話し合いは和やかに進みそうだ。
 
 イオリは冷たい紅茶を持って来てくれた執事のウムラに礼を言って窓辺に腰掛けた。
 
 応接室の扉には護衛で共に来たのだろう。ネイルが澄ました顔で立っていた。
 イオリが手を振ると、「フッ」っと微笑み頭を下げた。

「それで?
 面会を求めた理由は?」

 ジュード・ガレーはタージ・ラバンに声を掛けた。

「はい。
 端的に申します。
 商人ギルドにて不正が行われている可能性が御座います。」

「・・・ほう。」

 ガレーの商人ギルドの評価は高い。
 バッカスに次いで大きなオアシスのガレーは人も集まるが食材などを各地のオアシスに輸送など大きな取引が多い為に優秀な人材がギルドに集まっている。

 タージの進言にジュード・ガレーが懐疑的な返事をしたのも無理はなかった。
 基本的に不正をするのはギルドよりも商会の方が多いのだ。

 ここは勝負だとタージ・ラバンは気合を入れるのだった。
 
 
 



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