続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

旅路〜デザリア・ガレー〜

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　タージは渋い顔で合図を送ると、ユーフは面倒そうな顔で報告を始めた。

「半年前からの一部の見積もりの甘さが目立ちます。
　従業員の再研修が必要です。
　それと件の商会と繋がってる恐れがある者が3人いました。
　現在、ネイルさんに拘束して貰ってます。
　取り調べ次第、商人ギルドに突き出します。
　あちらから派遣されてきた人間なので、責任を追求しますよ。」

　ーーーがっぽりとね。

　そう、呟いたユーフは悪巧みをするタージにそっくりな顔で微笑んだ。
　幼顔であるが故に、怖さが倍増している。
　
「・・・そうか。」

　やはり商人ギルドが関わっていたと確信しタージは居た堪れない気持ちで溜息を吐いた。

「ルトゥ。
　商人ギルドの調査を申請する。
　領主様に面会の申し込みをしておいてくれ。」

　自分の部下に裏切り者がいたとあって衝撃的な顔をしたルトゥだったが、一気に真剣な顔になり頷いた。

「お任せください。」

　出ていったルトゥを見送ると疲れた様なタージにユーフが肩を竦めた。

「ルトゥさん、割と頑張ってますよ。
　彼の周辺の人間は間違いなく優秀です。
　ダンジョンが閉鎖された間に尽力してくれたのは彼らのお陰です。
　しかし、彼らでも目が届いていない所があるんですよ。
　人材が足りないのかもしれません。」

「それでも、ルトゥは責任者だ。
　責任を取るのが仕事だよ。
　・・・それは私も同じだな。」

　もう何度目か分からない溜息を吐くタージはユーフが差し出す報告書を受け取った。

「あっ。
　それと、ホワイトキャビンのリルラさんが来てます。」

「それ早く、言いなさいよ！」

　ダラシのない姿で寝転んでいたタージは慌てて起き上がると身支度を整え始めた。

「やる気がなくてお休み中かと思いました。」

　凍てつく様な目を細めるのユーフに冷や汗を掻くタージであったが客が来たとあって素早く笑顔を顔に貼り付けた。


　
「お邪魔しますよ。」

　同じように笑顔を作ったリルラが部屋に入ってきたのは、数分後の事だった。

「お忙しそうですね。」

　見る人が見れば分かる慌てようでラバン商会が忙しないのが分かるとリルラは美しい笑顔を向けた。

「申し訳ない。
　久々に来てみればってヤツですよ。
　お客様に見せる物ではないですね。
　ご勘弁頂きたい。」

「いいえ。
　そのお蔭で炙り出しが順調だと聞きましたよ。」

　リルラがユーフに視線をやる。
　タージは、とってつけた笑顔をやめ眉間に皺を寄せた。

「ユーフの調べでは怪しい人間が2人だそうだ。
　どちらも商人ギルドから派遣された人材らしい。
　これについて、商人ギルドの調査依頼をする為に領主様に面会の嘆願を出したところだ。」

「それは、好都合です。
　我らもイオリ様に報告があるんです。
　同行させてください。」

　抜け目のないリルラにタージはジロリと睨みつけた。

「こちらが恥の情報を話したんだ。
　そちらも報告とやらを話してもらおうか。」

　そんなタージにリルラはクスッと笑った。

「勿論ですよ。ラバン会頭。
　なんて事はないんです。
　相手の正体の目星がついたんですよ。
　イオリ様なら、もっと詳しくお分かりかと思って。
　何せ、相手はイオリ様によって居場所を奪われた輩ですから。」

　話し合いを終えたリルラがラバン商会を出たのは1時間が経った頃だった。
　
　2人がガレー公爵邸に呼び出されたのは翌日の昼下がりの太陽が真上に来ていた時の事。
　イオリは以前関わった事件がデザリアにまで広がりを見せていたとは、この時はまるで気づいていなかったのである。