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旅路〜デザリア・ガレー〜
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ーーーかつてアースガイルから送られてきた剣士。
彼も“神の愛し子”です。
唖然とするデザリアの面々を前にイオリはさらっと報告した。
「やっぱり、そうだったか。」
1人冷静なヒューゴが頷いている真正面でシモン・ヤティムとジュード・ガレーが声なき悲鳴を上げ、セルマ夫人はヘタリと椅子に座り込んでいる。
流石のハーディ翁も驚愕して声も出せずにいた。
「アースガイルから剣1本だけ持って海を渡る男なんて、ジュウゾウ様だろうと思っていたんだ。」
「はい。
絶対に十蔵さんですよ。
この時にはグダスクに腰を落ち着けていた頃でしょうね。
マテオさんに依頼されたんでしょう。
まさか、その後のデザリアに“神の愛し子”が現れて魔法が当たり前に使えるようになるなんて思ってもなかったでしょうね。」
再び笑うイオリにデザリアの一同はついていけていない。
「待て待て待て!
イオリ殿が“神の愛し子”というのを受け入れるのにも時間がかかるのに、“愛し子”の秘密など、さらっと話すでない!」
ジュード・ガレーが慌てて立ち上がり頭を抱えた。
「スルターンも知らぬ事を私が知るのか・・・?」
最早、その姿に初対面の時の威厳はない。
「・・・青年。
イオリ殿・・・。
先程の説明をしてくれ。
何故に・・・誰にとって・・・イオリ殿が予定外なのだ?」
震えるように話すハーディ翁にイオリは近づいた。
「んー。リュオン様と“エルフの里”・・・いやダークエルフにとってでしょうか。」
本気とも冗談とも付かぬ顔だったイオリが真剣な面持ちでハーディ翁を見据える。
「今、“エルフの里の戦士”が世界に姿を現しています。
彼らの目的はダークエルフの復活。
その為に、世界中のダンジョンに潜り込んでいます。
ダンジョンに復活の為の鍵があると思っているからです。
“余慶のダンジョン”が機能しなくなったのも、彼等が原因です。」
ハーディ翁はイオリの話に頷いた。
「リュオン様は事前に世界が不穏に包まれる事が分かってたんです。
それならば、世界を護る為にリュオン様は愛し子を誕生させる事を考える。
それが5年前だったとしたら・・・。」
「バシラ・フレールか・・・。」
イオリの言わんとする事が分かったのか、ハーディ翁は身を固くした。
己の孫が世界を背負う宿命を持って産まれてきた事に戦慄しているのだ。
「その、2年後。
この世界とは違う世界で命を落とした男がいました。
男は一緒に死んだ真っ白な子狼と共に絶対神の好意によって転移しました。
男の死は絶対神の範疇外。
絶対神が自身の世界に受け入れたのも、男の世界の山の神に懇願されたからです。
絶対神は男に使命は与えませんでした。
《自由に生きろ。》
それが男に告げられた言葉でした。
・・・それが、俺です。」
イオリの言葉は、静かに部屋を包んでいた。
次の瞬間だった。
イオリはあっけらかんとして言い放った。
「本当はバシラ・フレール様が使命を持って誕生された“神の愛し子”なのでしょうけど、予定外で俺が来ちゃった訳です。
だからバシラ・フレール様が覚醒する前に俺が“エルフの里”の野望ってヤツを潰しちゃえば良いんですよ。」
彼も“神の愛し子”です。
唖然とするデザリアの面々を前にイオリはさらっと報告した。
「やっぱり、そうだったか。」
1人冷静なヒューゴが頷いている真正面でシモン・ヤティムとジュード・ガレーが声なき悲鳴を上げ、セルマ夫人はヘタリと椅子に座り込んでいる。
流石のハーディ翁も驚愕して声も出せずにいた。
「アースガイルから剣1本だけ持って海を渡る男なんて、ジュウゾウ様だろうと思っていたんだ。」
「はい。
絶対に十蔵さんですよ。
この時にはグダスクに腰を落ち着けていた頃でしょうね。
マテオさんに依頼されたんでしょう。
まさか、その後のデザリアに“神の愛し子”が現れて魔法が当たり前に使えるようになるなんて思ってもなかったでしょうね。」
再び笑うイオリにデザリアの一同はついていけていない。
「待て待て待て!
イオリ殿が“神の愛し子”というのを受け入れるのにも時間がかかるのに、“愛し子”の秘密など、さらっと話すでない!」
ジュード・ガレーが慌てて立ち上がり頭を抱えた。
「スルターンも知らぬ事を私が知るのか・・・?」
最早、その姿に初対面の時の威厳はない。
「・・・青年。
イオリ殿・・・。
先程の説明をしてくれ。
何故に・・・誰にとって・・・イオリ殿が予定外なのだ?」
震えるように話すハーディ翁にイオリは近づいた。
「んー。リュオン様と“エルフの里”・・・いやダークエルフにとってでしょうか。」
本気とも冗談とも付かぬ顔だったイオリが真剣な面持ちでハーディ翁を見据える。
「今、“エルフの里の戦士”が世界に姿を現しています。
彼らの目的はダークエルフの復活。
その為に、世界中のダンジョンに潜り込んでいます。
ダンジョンに復活の為の鍵があると思っているからです。
“余慶のダンジョン”が機能しなくなったのも、彼等が原因です。」
ハーディ翁はイオリの話に頷いた。
「リュオン様は事前に世界が不穏に包まれる事が分かってたんです。
それならば、世界を護る為にリュオン様は愛し子を誕生させる事を考える。
それが5年前だったとしたら・・・。」
「バシラ・フレールか・・・。」
イオリの言わんとする事が分かったのか、ハーディ翁は身を固くした。
己の孫が世界を背負う宿命を持って産まれてきた事に戦慄しているのだ。
「その、2年後。
この世界とは違う世界で命を落とした男がいました。
男は一緒に死んだ真っ白な子狼と共に絶対神の好意によって転移しました。
男の死は絶対神の範疇外。
絶対神が自身の世界に受け入れたのも、男の世界の山の神に懇願されたからです。
絶対神は男に使命は与えませんでした。
《自由に生きろ。》
それが男に告げられた言葉でした。
・・・それが、俺です。」
イオリの言葉は、静かに部屋を包んでいた。
次の瞬間だった。
イオリはあっけらかんとして言い放った。
「本当はバシラ・フレール様が使命を持って誕生された“神の愛し子”なのでしょうけど、予定外で俺が来ちゃった訳です。
だからバシラ・フレール様が覚醒する前に俺が“エルフの里”の野望ってヤツを潰しちゃえば良いんですよ。」
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