続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 ーーーそれは、腹に授かりし子がかつて聖女と呼ばれた子の産まれ代わりであるという神託だった。

 ハーディ翁の衝撃的な言葉に部屋は凍りついていた。

「ちょっと、待ってください。
 だとしたら、バシラ・フレール様は・・・。」

 慌てるシモン・ヤティムを気遣うようにハーディ翁は頷いた。

「そうだ。
 あの子は生まれながらに魔力量が豊富だ。
 それはシモンも知っているだろう?
 覚醒していない今は、かつての聖女と比べる事も出来ぬ程に非力である・・・。
 だからこそ、あの子は守られるべきなのだ。
 神鳥様がお護りくださるバッカスという聖域で。」

 ジュード・ガレーは何故、年老いた父が可愛い孫が王宮で苦しんでいるにも関わらず、手元に呼び寄せる事を良しとしなかったのかを理解した。
 それはシモン・ヤティムも同じだった。
 事の重大さを知らされると納得したように頷いた。

「バシラ・フレール様がお生まれになった時に、魔力査定をしたのは私です。
 確かに魔力量は豊富でありましたが、特別に特質すべきスキルがあるとは考えていませんでした。
 もし、本当に聖女の生まれ変わりなのだとしたら、桁違いな魔法使いになるでしょう。
 覚醒する前に、に知られれば確実に狙われる。
 それは絶対に阻止せねばならん!」

「あぁ・・・何故にバシラが・・・。
 それならば父上、名前もバーシラルから取ったのですね?
 かつての聖女の御加護に縋って。」

 ジュード・ガレーは顔面を青くして父に尋ねた。

「そうだ。
 バーシラル・フレール・・・《神の言葉を伝える花》
 これが聖女の名前だ。
 バシラ・フレールは運命を背負って産まれてきた子なのだ。」

 他国の秘密を聞いて渋い顔をしているヒューゴの隣でイオリは思考していた。
 デザリアの歴史から始まったハーディ翁の話は興味惹かれる物だった。
 しかし、バシラ・フレールの誕生の秘話から何かが引っかかり始めていた。
 
「・・・もしかして。
 そうだとしたら・・・ん?あれ?」

 ブツブツ言いながら考え込むイオリに気づきハーディ翁は声をかけた。

「青年よ。
 何か知りたい事があるのなら、話すぞ?」

「それじゃ・・・。
 例えば、聖女が記憶持ちって事はないですか?」

「ふむ・・・それは記されていなかったな。
 先王と共に文献を読み漁ったが、幼少期は魔法が使える以外は他の子と変わらずに無邪気に過ごしていたそうだ。
 魔法の可能性に気づき世に教え始めたのも15の歳からだったと記録されていたぞ。」

「・・・そうですか。
 じゃぁ、聖女様って女王になった2年後に何があったんですか?」

 ーーー神鳥によって“神の愛し子”と神託された聖女は国の防衛において尽力され、のちに女王に即位された。
    在位は2年。

 この話に入る前にハーディ翁は確かに言った。
 聖女が女王に収まっていたの2年間のみ。
 その時に何があったのか・・・。

 ハーディ翁は眉を下げて弱々しく微笑んだ。

「本当に賢い青年だ。
 私が言っていた事を覚えていたんだね。
 即位して2年後・・・ 
 フレール女王は国を守り、命を絶たれたのだ。」
 
 再び、ハーディ翁によって一同は過去の世界を覗き見る事になった。
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