続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 大人達が整理のつかない会話を続けていた時。
 子供達は楽しげに交流を深めていた。

「えっ?
 全員、冒険者なの?」

 驚いて、パンを落としそうになっているのはアシィールの右腕であるジェイドだ。
 
 ジェイドは緑の髪と瞳を持った少年だった。
 初めて会った時はスコル達を鋭い目で観察していたが、アシィールにとって危険はないと判断したのか、今は仲良く会話していた。

「そうだよ。
 パティとスコルはAランク。ナギはCランクに上がったし、ニナはDランクだよ。」

 人懐っこいパティの笑顔にドキッとするジェイドであるが、相手がアシィールの客人とあって冷静を装っている。
 空になりつつあるパン籠にパティは自身の腰バックからクッキーやマフィンを取り出しジェイドに「食え」とばかりに差し出した。

「ふえぇぇ。
 俺より小さいのに凄いな・・・。」

 ナギとニナを見て考え込むジェイドにアシィールは苦笑した。

「ジェイドは冒険者になりたいんだよな?
 ジェイドの母親が冒険者だったんだよ。」

 アシィールの暴露にジェイドは顔を赤らめた。

「母さんは関係ない!」

 ジェイドが大きな声を出すと、1番小さなケシャがビクッとした。

「ジェイド!
 大きな声出さないで!
 ケシャが驚いてるでしょ!!」

 アシィールとジェイドと同い年くらいの少女であるマイカが頬を膨らまして怒り出した。

「わ・・・悪い。
 ごめんな、ケシャ。」

 どうやら、どんな世界にも男より女が強い時があるらしい。

「大丈夫だよ。
 ジェイド。
 マイカ。ありがとう。
 そんなに怒らないで。」

 ニッコリしたケシャにマイカは微笑んだ。

「はい。
 どーぞ。」

 そんな2人にニナがラスクを差し出す。

「・・・カチカチね。」

 戸惑いながら受け取るマイカであったが、生粋の面倒見の良さが期待するように見つめる小さなニナの瞳から逃げられずに恐々と半分ほどを口にした。

 サクッ

「あっ美味しい・・・。」

 口元を手で押さえて目をキラキラさせると残りをポイっと口に放り込んだ。

「美味しい!!
 ケシャも食べてごらんよ。」

 ピョンピョンと座りながら飛んだマイカに勇気を貰ってケシャが頷く。

「うん。
 ・・・本当だ。
 美味しい。
 硬いのに不思議だね。」

 嬉しそうなマイカとケシャにニナは満足そうに頷いた。

「見てみろよ。
 この・・・。」

「マフィンだよ。」

 明るい茶色のクルックルな髪を持つ少年・シトリンがツンツンとマフィンを突っつくのを見てナギが楽しそうに教えてやる。

「マフィンってのか!?
 このマフィン、やわらけぇぇ。
 オレ、こんなの食ったことねぇーよ。」

「シトリン。
 また、に怒られるよ。」

 粗野な物言いをするシトリンを呆れたように注意しているのはサラッサラな橙色した髪が靡いているオランだった。

「うっせーな。
 美味いもんが前にあんだから、ガタガタ言うな。
 ほら、分けてやっから。」

 シトリンはマフィンを半分に分けるとオランと仲良く口に頬張った。

 仲間達の笑顔を見て、アシィールは嬉しそうにスコルに話し始めた。

「イオリ様は料理が上手なんだな。
 俺の母様も上手だよ。
 朝ご飯も母様が作ったんだ。」

 それにはスコル達の方が驚いた。

「貴族なのに?」

 これまで出会った貴族の奥様達は優しく才媛であったが、自ら厨房に立つような事はしなかった。
 イオリの料理を誰より楽しみ、宣伝する上で才能を発揮していたが、それも料理人に任せているのが当たり前だった。

 今朝、テーブルに乗っていた豪勢な朝食を公爵夫人自ら作ったとあれば、スコル達の常識では考えられない事だった。

「基本的に朝食は母様が作るんだ。
 昼と夜は料理人のサニと一緒に作ったりしてるよ。
 ほら、イチゴのは母様が作ったんだよ。」

 あっという間になくなった壺を指してアシィールは誇らしげだった。

「蜂蜜で作ったジャムは初めてだったけど、凄く美味しかったよ。
 俺達の為にイチゴを摘んでくれたんだろう?
 ありがとう。」

「「「ありがとう。」」」

「どういたしまして。
 こちらこそ、ありがとう。」

 スコル達が礼を言うとアシィールは嬉しそうに頷きマフィンに齧り付いたのだった。

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