329 / 781
旅路〜デザリア・ガレー〜
337
しおりを挟む
暗にイオリが自分を“神の愛し子”であると認めた事にシモン・ヤティムとガレー夫婦は驚愕していた。
当初は警戒していたヒューゴも微笑み合うイオリとハーディ翁の成り行きを見守っている。
「ちょっと待って下さい。
ハーディ様。」
「なんだ?」
慌てた様子のシモン・ヤティムが立ち上がると、ハーディ翁は何事もなかったかのようにコテンと首を傾げた。
「ここで話し合われた事を私は王に報告する義務が生じます。
それでは今まで煙に巻いてきた事が無駄になります。」
「それは知らん。
スルターンが踏み込まなかったからと言って、私がイオリ殿について考察し交流を持つ事を禁止されているわけではあるまい。」
「「うわぁぁぁぁぁ。」」
ーーー常に穏やかだが、時に自分勝手
「あぁ、確かに似ている。」
イオリとハーディ翁を見比べてヒューゴは溜息を吐いた。
頭を抱えるシモン・ヤティムとジュード・ガレーを気の毒に思い、助言する。
「イオリはポーレット公爵の専属冒険者です。
他の国とはいえ、イオリの考えを実現するには公爵の許可を得てください。
先の通り、イオリはアースガイル国王の庇護も受けています。
ご相談されるが宜しいかと。
大丈夫です。
かの王はイオリが自由に行動する事を認めておられます。
デザリアでも、何かやらかすと想定されているはずです。
皆さんの考えを無碍にはされますまい。
アルフレッド・アースガイル国王は大器な御方です。」
2国間が揉めてしまうかもしれない事案がガレーから巻き起こるのではないかと危惧していたジュード・ガレーは安心したように肩の荷を下ろした。
「それならば、お言葉に甘えて相談させていただこう。」
「それが宜しいかと・・・。」
何故かヒューゴがジュード・ガレーとシモン・ヤティムに協力的・・・いや、仲間意識を持っている事を不思議に思いながらイオリは首を傾げたのだった。
「そう言えば、ハーディ様。
バシラ・フレール姫とルビシア王子からお手紙を預かってますよ。」
思い出したように荷物を漁るとシモン・ヤティムは恭しく差し出した。
「ほう。
孫達からか・・・。」
受け取ったハーディ翁の顔は孫を愛でる普通のお爺さんだった。
「・・・庭の花が美しい。と書いてある。
この花はバシラが生まれた時にガレーより贈った薄紫の美しい花だ。」
目を細めて手紙を読むハーディ翁を一同は仄々した顔で見つめた。
「そう言えば、ハーディ翁はバシラ・フレール様をガレーに迎えるのを反対なさったと聞きました。
何か、お心に思う事があったんですか?」
イオリの問いかけに興味深げだったのはジュード・ガレーだった。
彼にしても可愛い姪が王都で上手く立ち回れていない事に心を痛めていた。
同じように苦悩の表情をしていた父ハーディならば、バシラ・フレールを快く迎えると思っていたのだ。
《バシラは王都にいなければならん。》
まさか、反対されるとは・・・。
「父上。
私も知りたい。
何故、バシラ・フレールは・・・。
王都にいなければならないのですか?」
好々爺の顔を崩し、ハーディ翁は溜息を吐いた。
「かつての聖女の名はフレール。
バーシラルと称えられたデザリアの光だった・・・。」
ハーディ翁は会った事もない、かつて聖女に思いを馳せた。
当初は警戒していたヒューゴも微笑み合うイオリとハーディ翁の成り行きを見守っている。
「ちょっと待って下さい。
ハーディ様。」
「なんだ?」
慌てた様子のシモン・ヤティムが立ち上がると、ハーディ翁は何事もなかったかのようにコテンと首を傾げた。
「ここで話し合われた事を私は王に報告する義務が生じます。
それでは今まで煙に巻いてきた事が無駄になります。」
「それは知らん。
スルターンが踏み込まなかったからと言って、私がイオリ殿について考察し交流を持つ事を禁止されているわけではあるまい。」
「「うわぁぁぁぁぁ。」」
ーーー常に穏やかだが、時に自分勝手
「あぁ、確かに似ている。」
イオリとハーディ翁を見比べてヒューゴは溜息を吐いた。
頭を抱えるシモン・ヤティムとジュード・ガレーを気の毒に思い、助言する。
「イオリはポーレット公爵の専属冒険者です。
他の国とはいえ、イオリの考えを実現するには公爵の許可を得てください。
先の通り、イオリはアースガイル国王の庇護も受けています。
ご相談されるが宜しいかと。
大丈夫です。
かの王はイオリが自由に行動する事を認めておられます。
デザリアでも、何かやらかすと想定されているはずです。
皆さんの考えを無碍にはされますまい。
アルフレッド・アースガイル国王は大器な御方です。」
2国間が揉めてしまうかもしれない事案がガレーから巻き起こるのではないかと危惧していたジュード・ガレーは安心したように肩の荷を下ろした。
「それならば、お言葉に甘えて相談させていただこう。」
「それが宜しいかと・・・。」
何故かヒューゴがジュード・ガレーとシモン・ヤティムに協力的・・・いや、仲間意識を持っている事を不思議に思いながらイオリは首を傾げたのだった。
「そう言えば、ハーディ様。
バシラ・フレール姫とルビシア王子からお手紙を預かってますよ。」
思い出したように荷物を漁るとシモン・ヤティムは恭しく差し出した。
「ほう。
孫達からか・・・。」
受け取ったハーディ翁の顔は孫を愛でる普通のお爺さんだった。
「・・・庭の花が美しい。と書いてある。
この花はバシラが生まれた時にガレーより贈った薄紫の美しい花だ。」
目を細めて手紙を読むハーディ翁を一同は仄々した顔で見つめた。
「そう言えば、ハーディ翁はバシラ・フレール様をガレーに迎えるのを反対なさったと聞きました。
何か、お心に思う事があったんですか?」
イオリの問いかけに興味深げだったのはジュード・ガレーだった。
彼にしても可愛い姪が王都で上手く立ち回れていない事に心を痛めていた。
同じように苦悩の表情をしていた父ハーディならば、バシラ・フレールを快く迎えると思っていたのだ。
《バシラは王都にいなければならん。》
まさか、反対されるとは・・・。
「父上。
私も知りたい。
何故、バシラ・フレールは・・・。
王都にいなければならないのですか?」
好々爺の顔を崩し、ハーディ翁は溜息を吐いた。
「かつての聖女の名はフレール。
バーシラルと称えられたデザリアの光だった・・・。」
ハーディ翁は会った事もない、かつて聖女に思いを馳せた。
応援ありがとうございます!
214
お気に入りに追加
9,851
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる