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旅路〜デザリア・ガレー〜
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「・・・なるほどな。
利益は街に還元するのか。
税とは違うのだな?」
「そうですね。
ポーレットの場合、税は民の義務で街を運営するのに重要ですが、公共事業の利益の使い道は・・・あくまでもイオリの善意です。
ご興味があられるのでしたら、一緒に参りましたタージ・ラバンさんとリルラさんに話を聞かれたらどうでしょう?
俺達を後見してくれているポーレット公爵もご紹介しますよ。」
イオリの代わりに説明をしていたヒューゴは、イオリの善意という所を協調して話していた。
居た堪れないイオリは、我関せずとばかりに食事を進める。
その様子をシモン・ヤティムが苦笑しながら楽しげに見ていた。
デザリアの旅でジュード・ガレーの人となりを信頼していたイオリとヒューゴはテオルド・ドゥク・ポーレットと相談して、話しても問題ないだろうと考えていた。
イオリは自分の功績を他人事の様に話す。
それでは駄目だとヒューゴは時折、功績を大袈裟に称えるのだった。
「それは有難い。
まずはラバン商会に話を聞くとしよう。」
嬉しそうなジュード・ガレーがテーブルのカップを手にした時だった。
ふと気づいたように、辺りを見渡した。
「むっ?
子供達はどうした?
・・・イチゴの壺もない。」
夫がキョロキョロしているのをセルマ夫人がクスクスと笑った。
「とっくに逃げ出しましたよ。
壺を持って。
あの子達と食べるんでしょう。」
「・・・そうか。」
子供達が逃げ出した事に不満なのか、イチゴの壺が消えた事が残念なのか唸るジュード・ガレーにイオリとセルマ夫人は視線を合わせ笑い出した。
「昨日、屋敷にくる途中にアシィールを見かけたが、あの子達とは共にイチゴを運んでいた子等か?」
シモン・ヤティムが苦笑しながら聞けば、セルマ夫人は楽しそうに頷いた。
「えぇ、仲の良いお友達なのです。
貴族の息子として本来ならば民との間に一線を引くべきなのでしょうが、ここはガレーですから・・・。
《皆、等しくガレーの子供。》
養父の教えの通りに自由にさせております。
アシィールもいつの間にか、自分で仲間を見つけて来ました。
夫の許可がある時には屋敷にも出入りさせています。
親は見守るしかできませんね。」
そんなセルマ夫人にシモン・ヤティムは声を上げて笑い出した。
「ハハハ。
実に、あの方らしい。
その子供達が後々に領主となるアシィールを助けてくれるだろう。」
「はい。
そう、願います。」
ガレー公爵夫婦が楽しそうに頷くのをイオリは微笑ましく見つめていた。
「そう言えば、お前はどこまで行っていたんだ?
珍しく早朝から、のんびりしていたようだが?」
食後の紅茶を飲みながらヒューゴが何気なくイオリに尋ねてきた。
「あぁ。
大きな畑の道を散歩して来ました。
朝早くから、皆さん働き者ですね。」
領民を褒められてガレー公爵は嬉しそうに頷いた。
「そうだろう。
朝に収穫した方が良い野菜もある。
朝摘みした後に魔法で保存をかけ、他のオアシスに運んで行くのだ。」
「やっぱり、農家さんは忙しいですね。
とても笑顔で挨拶してくれましたよ。
その後は森の中のお家に行き当たりまして。
住人のおじいさんにハーブティーをご馳走になりました。
あっ。
こちらではハチャって言うんですよね?」
イオリが楽しそうに報告するとガレー公爵夫婦とシモン・ヤティムが顔を見合わせた。
「森に住んでいるハチャを呑気に飲んでいた老人・・・。」
「あらあら。
フフフ。」
額に手を当てて天井を仰ぎ見るジュード・ガレーと楽しげに笑うセルマ夫人にキョトンとしたイオリはシモン・ヤティムに助けを求めた。
シモン・ヤティムは苦笑して困ったような顔をした。
「恐らく、イオリ殿が会った老人は前公爵・ハーディ様だろう。」
イオリの顔が固まったのであった。
利益は街に還元するのか。
税とは違うのだな?」
「そうですね。
ポーレットの場合、税は民の義務で街を運営するのに重要ですが、公共事業の利益の使い道は・・・あくまでもイオリの善意です。
ご興味があられるのでしたら、一緒に参りましたタージ・ラバンさんとリルラさんに話を聞かれたらどうでしょう?
俺達を後見してくれているポーレット公爵もご紹介しますよ。」
イオリの代わりに説明をしていたヒューゴは、イオリの善意という所を協調して話していた。
居た堪れないイオリは、我関せずとばかりに食事を進める。
その様子をシモン・ヤティムが苦笑しながら楽しげに見ていた。
デザリアの旅でジュード・ガレーの人となりを信頼していたイオリとヒューゴはテオルド・ドゥク・ポーレットと相談して、話しても問題ないだろうと考えていた。
イオリは自分の功績を他人事の様に話す。
それでは駄目だとヒューゴは時折、功績を大袈裟に称えるのだった。
「それは有難い。
まずはラバン商会に話を聞くとしよう。」
嬉しそうなジュード・ガレーがテーブルのカップを手にした時だった。
ふと気づいたように、辺りを見渡した。
「むっ?
子供達はどうした?
・・・イチゴの壺もない。」
夫がキョロキョロしているのをセルマ夫人がクスクスと笑った。
「とっくに逃げ出しましたよ。
壺を持って。
あの子達と食べるんでしょう。」
「・・・そうか。」
子供達が逃げ出した事に不満なのか、イチゴの壺が消えた事が残念なのか唸るジュード・ガレーにイオリとセルマ夫人は視線を合わせ笑い出した。
「昨日、屋敷にくる途中にアシィールを見かけたが、あの子達とは共にイチゴを運んでいた子等か?」
シモン・ヤティムが苦笑しながら聞けば、セルマ夫人は楽しそうに頷いた。
「えぇ、仲の良いお友達なのです。
貴族の息子として本来ならば民との間に一線を引くべきなのでしょうが、ここはガレーですから・・・。
《皆、等しくガレーの子供。》
養父の教えの通りに自由にさせております。
アシィールもいつの間にか、自分で仲間を見つけて来ました。
夫の許可がある時には屋敷にも出入りさせています。
親は見守るしかできませんね。」
そんなセルマ夫人にシモン・ヤティムは声を上げて笑い出した。
「ハハハ。
実に、あの方らしい。
その子供達が後々に領主となるアシィールを助けてくれるだろう。」
「はい。
そう、願います。」
ガレー公爵夫婦が楽しそうに頷くのをイオリは微笑ましく見つめていた。
「そう言えば、お前はどこまで行っていたんだ?
珍しく早朝から、のんびりしていたようだが?」
食後の紅茶を飲みながらヒューゴが何気なくイオリに尋ねてきた。
「あぁ。
大きな畑の道を散歩して来ました。
朝早くから、皆さん働き者ですね。」
領民を褒められてガレー公爵は嬉しそうに頷いた。
「そうだろう。
朝に収穫した方が良い野菜もある。
朝摘みした後に魔法で保存をかけ、他のオアシスに運んで行くのだ。」
「やっぱり、農家さんは忙しいですね。
とても笑顔で挨拶してくれましたよ。
その後は森の中のお家に行き当たりまして。
住人のおじいさんにハーブティーをご馳走になりました。
あっ。
こちらではハチャって言うんですよね?」
イオリが楽しそうに報告するとガレー公爵夫婦とシモン・ヤティムが顔を見合わせた。
「森に住んでいるハチャを呑気に飲んでいた老人・・・。」
「あらあら。
フフフ。」
額に手を当てて天井を仰ぎ見るジュード・ガレーと楽しげに笑うセルマ夫人にキョトンとしたイオリはシモン・ヤティムに助けを求めた。
シモン・ヤティムは苦笑して困ったような顔をした。
「恐らく、イオリ殿が会った老人は前公爵・ハーディ様だろう。」
イオリの顔が固まったのであった。
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