続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「なに。
 恩人が求めているのだ。
 手を尽くすのが礼儀だ。」

「恩人?
 はて・・・。」
 
 ジュード・ガレーが微笑んでいるのを見て、イオリは首を傾げた。

「ここに来て、イオリ殿以外に誰がいるのだ?」

 呆れているのは筆頭魔法使いシモン・ヤティムだ。

「え?
 ダンジョンの事ですか?
 先程、お礼を言っていただきましたし、王様から褒美も頂きましたよ?」

 不思議そうなイオリにジュード・ガレーは楽しげだった。

「なるほど、どんな人物かと思えば手柄を鼻にかけないどころか、気にもかけない御仁であったか。
 ハハハハ。」

 先程までは優しげでありはしたものの、体格の良さと声の低さで威圧感も十分であったジュード・ガレーが今では和やかな人物であると認識は変わりつつあった。

「ダンジョンの事もそうだが、私が言っているのはバシラ・フレール王女の事だ。
 王と王妃が姫との関係に長らく悩んでいたのは知っていたからな。
 私達も苦心していたのだ。
 それが、出会って数日の冒険者によって解決されたとあれば驚きこそすれ感謝してもしたりない。
 あの子は王女でありながらも私の可愛い姪なのだ。
 一時期はこのガレーでバシラ・フレールを引き取ろうとも考えていたが、王妃・・・ティエナが嫌がってな。」

「手放せば、最後の絆が切れると恐れておられたのだ。」

 ジュード・ガレーに加えてシモン・ヤティムが頷いた。

「まさか、他の手の悪意によってバシラ・フレールが傷つけられていたとは思わなかった。」

 ーーー誰もがバシラ・フレールが我儘なのが、いけないと思っていたのだ。

 ジュード・ガレーは溜息を吐いた。

「しかし、我が父は違った。
 最後まで孫であるバシラ・フレールを信頼し、王城での彼女を心配していたよ。」

「・・・それは、先代のガレー公爵ですか?」

 イオリが聞けば、2人は頷いた。

「少し、変わっているが父は人を惹きつける人物でね。
 バシラ・フレールも心を許していた数少ない人間だった。
 だからこそ、ガレーの地なら王女としての重圧から解放され、バシラ・フレールも心安らかに過ごせるかと思ったんだが・・・。
 1番に賛成すると思っていた父が反対したんだ。
 あの時は驚いた。」

 話は王子ルビシアにも及んだ。

「あの子が元気になったと聞いた時は、我らも家族総出で喜んだよ。
 ルビシアも君に助けられたと聞いた。
 感謝してもし足りないくらいだ。」

 高位貴族として王族の行く末を心配しているのは勿論の事だろうが、ジュード・ガレーが叔父としてバシラ・フレールとルビシアの事を心底喜んでいると分かって、イオリは安心した。

 その後は次々と子供達がダンジョンでの出来事や、王城でバシラ・フレールとルビシアと遊んだ話をしてジュード・ガレーを喜ばせた。

「国の恩人がカカオを求めているんだ。
 我らガレーの人間は何においても手をかそう。
 まずは件の老夫婦を紹介しよう。」

 こうしてガレーの領主との会談は成功したのだった。
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