続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「よく、参られた。冒険者殿。
 ガレーへようこそ。
 お待ちしてましたよ・・・先生。」

 男性はイオリ達に挨拶をするとシモン・ヤティムに顔を向けた。

「ジュードよ。
 久しいな。
 昨年の《星降る日の祭典》以来か。」

「えぇ、その通りです。
 バッカスのダンジョン閉鎖のおかげで、ガレーは大忙しでしたよ。
 何せ、王都を含めて他のオアシスが食糧難に襲われましたからね。」

「そのダンジョンを救ってくれたのが、このイオリ殿と皆だ。
 イオリ殿、彼がジュード・ガレー。
 今代のガレー公爵だ。」

 微笑んだジュード・ガレーは先程と打って変わって興味深そうに自己紹介をするイオリを見つめていた。

「君には礼を言わないといけない。
 玄関ではなんだ。
 部屋へ向かうとしよう。」

 主人が客を出迎えた為に一足先に応接室に出向いていた執事兼家令であるウムラが扉を開けて待っていた。
 部屋に入ると広々とした造りに座り心地の良さそうなソファが置かれていた。
 
 お茶を用意してくれているウムラにスコルが近づき、袋を差し出した。

「イオリの作ったお菓子です。
 公爵様に食べて貰っていいですか?」

 驚くウムラであったが、ニコニコするシモン・ヤティムと主人であるジュード・ガレーが頷くのを見て微笑みながら受け取った。

「先程は先生と呼ばれていましたが、公爵に魔法を教えていたんですか?」

 イオリの質問に2人は苦笑して頷いていた。

「その通りだ。
 幼少期より魔法の教授を受けていた。
 しかし、私はどうも・・・魔法の才能がなくてね。」

 気まずそうに頬を掻くジュード・ガレーにシモン・ヤティムは楽しそうに笑った。

「適正であった水魔法を試すと、何度もずぶ濡れになっておったな。
 そのうち、剣術の方が向いていると分かって鍛錬の方向を変えたのだ。」

 それでも師には変わりないらしく、シモン・ヤティムへの敬う気持ちは失われていないとジュード・ガレーは言った。

「お待たせ致しました。
 先程、頂きました菓子と紅茶でございます。」

 ウムラがテーブルに用意していくと、子供達は嬉しそうにお菓子を見つめた。

「ほう。
 これが貴殿が作った菓子か。」

「はい。
 チョコレートを混ぜたクッキーとナッツの飴がけです。
 ティエナ王妃にも気に入ってもらった物ですので、どうぞ試して下さい。」

「ティエナが・・・。
 そうか。」

 妹が気に入ったと聞き、俄然興味を抱いたのかジュード・ガレーは迷いなくクッキーに手を伸ばした。

「・・・香ばしい。
 苦味があるが、甘味が和らげている。
 美味いな。」

「これが、カカオで作られているのだ。
 アースガイルの国王夫婦も気に入られ、輸入を求められた。
 我らの王はアースガイルとの交流をお望みだ。」

「・・・理解しました。
 件の老夫婦のカカオ農園が必要なのですね?
 私の方でも手を尽くしましょう。」

「「「「ありがとうございます!!」」」」

 カカオが手に入ると分かったのか、いの一番に子供達が喜んだ。

「なに。
 恩人が求めているのだ。
 手を尽くすのが礼儀だ。」

 ここにきて、満面の笑みを浮かべたジュード・ガレーにイオリは首を傾げたのであった。

「恩人?
 はて・・・。」
 

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