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旅路〜デザリア・ガレー〜
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到着したガレー公爵邸は年季の入った赤茶色のレンガで作られた屋敷だった。
橋を渡り、緑のトンネルを抜けると速度を落として馬車が停まった。
「ようこそ、ガレー公爵邸へお越しくださいました。
私、執事兼家令を務めますウムラと申します。」
イオリが顔を出すと妙齢の男性が胸に手を当てて頭を下げていた。
「久しいな、ウムラ。
世話になるぞ。」
一足先に馬車を降りたシモン・ヤティムが嬉しそうに挨拶を交わす。
「シモン様。
お久しぶりでございます。
ご活躍はガレーにも聞こえて参ります。
ご健勝のご様子にウムラも嬉しゅうございます。」
2人が和やかに会話しているのを邪魔しないようにイオリは子供達を馬車から下ろした。
「ねー。植物に食べられちゃったの?」
裾を引っ張るニナが指差す方を見れば、屋敷の一部が植物に侵食され、青々とした蔦が飲み込むように覆い尽くしていた。
唖然とするニナにイオリは笑いかけた。
「元気な蔦だね。
そう、悪い事ばかりじゃないよ。
暑いデザリアの国では草木が熱量を下げてくれているんだと思うよ。
あの蔦は家を太陽から守ってくれているんじゃないかな。
こんなに綺麗に覆われてるんだ。
きっと屋根とか、雨樋とかを蔦が壊さないように細かくお手入れしているはずだよ。
ガレー公爵家の緑とのお付き合いの1つじゃないかな?」
そんなイオリ達を見ていたのだろう。
ウムラは近づいてきて微笑んだ。
「お客様のおっしゃる通りで御座います。
このガレーの地では植物と共存する事を心掛けているのです。
植物は手をかければかけるだけ、我々を手助けしてくれるのですよ。」
優しそうな笑顔のウムラにイオリは会釈をした。
「はじめまして。
冒険者をしていますイオリです。
こちらで体を伸ばしているのが従魔のゼンです。
馬車を運んでくれたアウラと肩で寝ているソルもいます。
並んでいるのがスコル・パティ、ナギにニナの子供達とヒューゴさんです。
王様からの推薦状をお持ちしました。
公爵にお取り次ぎ願います。」
礼儀正しい若き冒険者にアウラは優しく頷くと推薦状を受け取った。
「連絡はすでに頂いておりました。
シモン様の御一緒なのです。
そのまま、主人の元へどうぞ。
ご無事のご到着で何よりでした。
お部屋をご用意しております。
ご滞在を良きものにするように努めます。」
丁寧な出迎えに恐縮しながらもイオリ達は屋敷に入っていくウムラとシモン・ヤティムの後を追った。
「わぁぁ。」
嬉しそうなナギの声がフロアに響き渡った。
通された玄関は今までの貴族の屋敷と違って、実に清々しいほどに何もなかった。
ただ1つ、大きな窓が開け放たれ心地の良い風の通り道となっていた。
「素敵な家だね。」
イオリが呟いた時だった。
「それはよかった。
ゆっくり滞在していくといい。」
低音の気高い声が玄関フロアを包み込んだ。
声の持ち主はイオリの前に颯爽と現れた背の高い堅いの男性だった。
橋を渡り、緑のトンネルを抜けると速度を落として馬車が停まった。
「ようこそ、ガレー公爵邸へお越しくださいました。
私、執事兼家令を務めますウムラと申します。」
イオリが顔を出すと妙齢の男性が胸に手を当てて頭を下げていた。
「久しいな、ウムラ。
世話になるぞ。」
一足先に馬車を降りたシモン・ヤティムが嬉しそうに挨拶を交わす。
「シモン様。
お久しぶりでございます。
ご活躍はガレーにも聞こえて参ります。
ご健勝のご様子にウムラも嬉しゅうございます。」
2人が和やかに会話しているのを邪魔しないようにイオリは子供達を馬車から下ろした。
「ねー。植物に食べられちゃったの?」
裾を引っ張るニナが指差す方を見れば、屋敷の一部が植物に侵食され、青々とした蔦が飲み込むように覆い尽くしていた。
唖然とするニナにイオリは笑いかけた。
「元気な蔦だね。
そう、悪い事ばかりじゃないよ。
暑いデザリアの国では草木が熱量を下げてくれているんだと思うよ。
あの蔦は家を太陽から守ってくれているんじゃないかな。
こんなに綺麗に覆われてるんだ。
きっと屋根とか、雨樋とかを蔦が壊さないように細かくお手入れしているはずだよ。
ガレー公爵家の緑とのお付き合いの1つじゃないかな?」
そんなイオリ達を見ていたのだろう。
ウムラは近づいてきて微笑んだ。
「お客様のおっしゃる通りで御座います。
このガレーの地では植物と共存する事を心掛けているのです。
植物は手をかければかけるだけ、我々を手助けしてくれるのですよ。」
優しそうな笑顔のウムラにイオリは会釈をした。
「はじめまして。
冒険者をしていますイオリです。
こちらで体を伸ばしているのが従魔のゼンです。
馬車を運んでくれたアウラと肩で寝ているソルもいます。
並んでいるのがスコル・パティ、ナギにニナの子供達とヒューゴさんです。
王様からの推薦状をお持ちしました。
公爵にお取り次ぎ願います。」
礼儀正しい若き冒険者にアウラは優しく頷くと推薦状を受け取った。
「連絡はすでに頂いておりました。
シモン様の御一緒なのです。
そのまま、主人の元へどうぞ。
ご無事のご到着で何よりでした。
お部屋をご用意しております。
ご滞在を良きものにするように努めます。」
丁寧な出迎えに恐縮しながらもイオリ達は屋敷に入っていくウムラとシモン・ヤティムの後を追った。
「わぁぁ。」
嬉しそうなナギの声がフロアに響き渡った。
通された玄関は今までの貴族の屋敷と違って、実に清々しいほどに何もなかった。
ただ1つ、大きな窓が開け放たれ心地の良い風の通り道となっていた。
「素敵な家だね。」
イオリが呟いた時だった。
「それはよかった。
ゆっくり滞在していくといい。」
低音の気高い声が玄関フロアを包み込んだ。
声の持ち主はイオリの前に颯爽と現れた背の高い堅いの男性だった。
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