続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 ガレーの大きな壁は見えているのに、到着まで思った以上に時間がかかった。
 
 すぐに着くと思っていた子供達は途中から飽きたと不満そうだ。
 本来だったら時折、馬車を飛び出すゼンも砂漠の砂が熱いとふて寝している。

 それでも、街に入る為の行列が見え始めるとワクワクしたように顔を出す。

「お前ら、馬車が揺れるだろう!
 落ち着けって!」

 ヒューゴの小言もお構いなしに様々な所から顔を出す子供達にイオリとシモン・ヤティムは苦笑気味だ。
 
「この門から街に入るのは我々のようなバッカスからの旅人だけじゃないからな。
 少なくとも4ヶ所のオアシス領からもやって来る。
 その為に行列も長くなるのだ。」

 貴族門から入るか?と尋ねる筆頭魔法使いにイオリは首を横に振った。

「恩恵は十分に受けています。
 それに、こうやって並ぶのも旅ですから。」

 リルラ達の馬車が並ぶ後に着くと、街へのカウントダウンを楽しむイオリだった。


________

「やっぱりかぁ。」

 後続の馬車から落胆の声が聞こえる。

「旦那様。
 諦めてください。
 この数日でイオリ様の性格はお分かりになったでしょう。」

「イオリ様は主より人が出来てるからな。」

 補佐役と護衛の言葉にラバン商会の会頭タージ・ラバンは不貞腐れた。

「《イオリ殿は貴族門から入らないのか》と言っただけじゃないか!」

「はい。
 だから申し上げました。
 諦めてください。
 列をすっ飛ばして一緒に貴族門から入ると言う、旦那様の目論みは叶いません。」

「ズルは駄目だ。
 主。」

 反論に輪をかけて言い返されて、タージは馬車の座席に突っ伏した。

「何ていう部下達なんだ。
 主人の気持ちを持ち上げるのではなく、どん底におとすとは・・・。
 世の中には私が微笑めば言う事を聞いてくれる人間が山程いると言うのに。」

「そのクソみたいな人間ではないと評して頂き光栄です。」

「主も言ってるじゃないか。
 そんな奴らは1番信頼できないって。」

 ブツブツ悪態をつくタージなど意に返さずに2人は澄まし顔だ。

 イオリの前では大人しくしている補佐役と護衛であるが、主人に対しては辛辣だった。
 それもこれもタージが信頼している人間であるからこそである。

「ほらっ!
 しっかりして下さい。
 商売の時間ですよ。
 どこで誰が見てるか分かりません。
 その、誰もが言う事を聞く笑顔を忘れずに。」

 タージは補佐役ユーフの言葉に反応してシャキッと起きた。

「分かっているさ。
 事はガレー公爵や例の老夫婦だけじゃない。
 件の悪徳商人に鉄槌を下すのは、デザリアで一番の商人である、私・・・タージ・ラバンだ。
 私が出張ってきて好き勝手させるものか。」

 ニヤリと微笑むタージに2人の部下は満足そうに微笑んだのだった。

 
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