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旅路〜デザリア〜
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「暑い~。」
弱音を吐いているのはパティだ。
休憩で利用した岩場の影が思った以上に涼しかった事もあり、太陽がギラギラと暑さを増した今はヘロヘロとなっているのだ。
「大丈夫?
テント出そうか?」
提案するイオリにパティは首を振った。
「快適になれちゃったら、ダメだと思う。
それに、今さ、頑張ったらさ、オアシスがスッゴイ気持ち良いと思う。」
正しい事を言っているのだが、汗だくパティが言うと気が抜けるのは何故だろう。
「イオリは黒い服で暑くない?」
コートすら脱がないイオリにスコルが呆れた顔をする。
流石のヒューゴも上着を脱ぎ太陽の暑さから身を守る為にスカーフを顔に巻いている。
「うーん。
暑いんだよね。
暑いんだけど、我慢できるんだよなぁ。
どんな時でも快適に着ていられる防具なんて、さすがカサドさんじゃない?」
ポーレットの小さな工房で鼻息荒く踏ん反り返るドワーフを思い出し、イオリは小さく笑う。
「それにオアシスに着いたらスッゴイ気持ち良いんだろう?」
イオリの視線を受け、パティはニコっとして頷いた。
「うん!」
果てしなく続く砂漠の中でも馬車の中は賑やかだ。
「シモンさん。
ムジーザってどんな所なんですか?
小さい水辺って言ってましたけど。」
イオリの質問にシモン・ヤティムは頷いた。
「初代王アーマッド・デザリアが神鳥様に願った時、多くの光が降ってきた。
我々は《星が落ちた》と言っているのだが、星が落ちた場所に水辺が出来て、周りに草木が現れた。
それをオアシスと言う。
出来上がったオアシスは大小とさまざまな広さであったが、人々は生活の為にオアシスに集まり集落を作った。
国で1番大きいオアシスは首都バッカスだったが、小さいオアシスにも人は住んでいる。
それよりも、もっと小さいオアシスは旅の休憩地として利用される事が多くてな、昔は無人だったんだが・・・。」
饒舌だったシモン・ヤティムが顔を歪めた。
「無人のオアシスは盗賊やら闇商人の縄張りになりやすくて、旅人や旅商人が被害に遭う事案が増えたのだ。
だから、国が無人のオアシスの保護に乗り出した。
軍を送り盗賊などを蹴散らした。
近くの街から衛兵を順番で配置する事で問題を解決した。
衛兵が常駐されると、安全と噂が広まり次第に店を開く商人も現れてな。
旅に必要な物が売られたり、飯屋ができたりしているよ。
ムジーザは休憩地としては中型のオアシスだ。
水場の周辺にキャンプ地があり、身分証を提示すれば無料で休む事ができる。
旅道具の販売や修理をしている店もあるし、ランダムで食べ物の屋台が出ている事もある。」
話を聞いていた子供達は徐々に好奇心が溢れ始めていた。
「楽しそう!」
暑さに当てられてクッションに身を沈めていたパティが軽快に起き上がる。
「中には宿屋まであるオアシスがあるぞ。
ガレーまでの道すがらだから利用してみるといい。」
景色の変わらない砂漠の地に浮かび上がる緑の楽園。
不思議な光景にイオリも心を躍らせるのだった。
弱音を吐いているのはパティだ。
休憩で利用した岩場の影が思った以上に涼しかった事もあり、太陽がギラギラと暑さを増した今はヘロヘロとなっているのだ。
「大丈夫?
テント出そうか?」
提案するイオリにパティは首を振った。
「快適になれちゃったら、ダメだと思う。
それに、今さ、頑張ったらさ、オアシスがスッゴイ気持ち良いと思う。」
正しい事を言っているのだが、汗だくパティが言うと気が抜けるのは何故だろう。
「イオリは黒い服で暑くない?」
コートすら脱がないイオリにスコルが呆れた顔をする。
流石のヒューゴも上着を脱ぎ太陽の暑さから身を守る為にスカーフを顔に巻いている。
「うーん。
暑いんだよね。
暑いんだけど、我慢できるんだよなぁ。
どんな時でも快適に着ていられる防具なんて、さすがカサドさんじゃない?」
ポーレットの小さな工房で鼻息荒く踏ん反り返るドワーフを思い出し、イオリは小さく笑う。
「それにオアシスに着いたらスッゴイ気持ち良いんだろう?」
イオリの視線を受け、パティはニコっとして頷いた。
「うん!」
果てしなく続く砂漠の中でも馬車の中は賑やかだ。
「シモンさん。
ムジーザってどんな所なんですか?
小さい水辺って言ってましたけど。」
イオリの質問にシモン・ヤティムは頷いた。
「初代王アーマッド・デザリアが神鳥様に願った時、多くの光が降ってきた。
我々は《星が落ちた》と言っているのだが、星が落ちた場所に水辺が出来て、周りに草木が現れた。
それをオアシスと言う。
出来上がったオアシスは大小とさまざまな広さであったが、人々は生活の為にオアシスに集まり集落を作った。
国で1番大きいオアシスは首都バッカスだったが、小さいオアシスにも人は住んでいる。
それよりも、もっと小さいオアシスは旅の休憩地として利用される事が多くてな、昔は無人だったんだが・・・。」
饒舌だったシモン・ヤティムが顔を歪めた。
「無人のオアシスは盗賊やら闇商人の縄張りになりやすくて、旅人や旅商人が被害に遭う事案が増えたのだ。
だから、国が無人のオアシスの保護に乗り出した。
軍を送り盗賊などを蹴散らした。
近くの街から衛兵を順番で配置する事で問題を解決した。
衛兵が常駐されると、安全と噂が広まり次第に店を開く商人も現れてな。
旅に必要な物が売られたり、飯屋ができたりしているよ。
ムジーザは休憩地としては中型のオアシスだ。
水場の周辺にキャンプ地があり、身分証を提示すれば無料で休む事ができる。
旅道具の販売や修理をしている店もあるし、ランダムで食べ物の屋台が出ている事もある。」
話を聞いていた子供達は徐々に好奇心が溢れ始めていた。
「楽しそう!」
暑さに当てられてクッションに身を沈めていたパティが軽快に起き上がる。
「中には宿屋まであるオアシスがあるぞ。
ガレーまでの道すがらだから利用してみるといい。」
景色の変わらない砂漠の地に浮かび上がる緑の楽園。
不思議な光景にイオリも心を躍らせるのだった。
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