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旅路〜デザリア・王宮〜
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「皆さん、どうもお待たせしました。」
群衆の中から声をかけて来たのはラバン商会の会頭タージ・ラバンであった。
驚くべき事に旅の衣装に身を包んでいる。
「まさか、タージさんも行くんですか?」
戸惑うイオリに髪をかき上げ笑顔で頷き馬車を指差した。
「勿論ですよ。
ガレーのカカオ農園はホワイトキャビン事案ですが、ラバン商会にとっても大きな儲けのチャンスですからね。
この目で見ないでいられますかっ!」
興奮気味の顔を近づけてくるタージ・ラバンにイオリの顔が引き攣る。
「やめろ。
イオリさん。
この男はこんなでも一流の商人だ。
契約などに関して役に立つ。
それに旅の邪魔になるのなら、魔獣の餌にでもしてしまえば良い。」
ロス・グラトニーがタージ・ラバンの首根っこを力強く引っ張っる。
「ちょっとロス兄さん!
魔獣の餌って酷いじゃないか。
えっ・・・?
そんな事しないよね?
しないよね?」
イオリの後ろから顔を出しニヤニヤしている双子にタージ・ラバンは冷や汗を掻いた。
「イオリ様。
唐突に我々ホワイトキャビンが顔を出すよりもデザリアで信頼が厚いラバン商会に仲介して頂いた方が先方のご夫婦が安心されます。
ここは同行を願いましょう。」
リルラの手助けもあってタージ・ラバンもキャラバンに加わる事になった。
彼の馬車にはタージとその補佐、そして護衛の3人が乗る事になるそうだ。
今は、補佐と護衛の2人が出発の準備をしている。
「これは想像より大所帯になったな。」
並んだ3台の馬車を見て苦笑したヒューゴにイオリは困ったように眉を下げた。
「なんだか変な事になっちゃいました。」
「良いじゃないか。
アイツらが楽しそうだ。」
微笑むヒューゴの視線の先を見れば、子供達がそれぞれの馬車を覗いてははしゃいでいる。
「・・・そっか。
皆んなが楽しそうなら良いか。」
諦めたような笑顔をするイオリにヒューゴは笑った。
クイッと裾を引っ張られ、下を見ればゼンが後を振り返った。
イオリもつられて見れば、そこに黙って立ったままのバキル・カルダイン侯爵が立っていた。
「あっ。」
イオリが慌てて会釈をするとバキル・カルダインが聞こえるか聞こえないかのような小さな声で囁いた。
「・・・世話になった。」
「いいえ。
俺は出来る事をしただけです。」
「・・・そうか。
我ら一族は今回の事態に打ちひしがれた。
それでもスルターンと君に与えられた機会を無駄にしない。
この巡り合わせに感謝している。」
決意を込めた瞳にイオリは頷いた。
「ご健勝をお祈りします。」
バキル・カルダインが恐る恐る出す手をイオリが力強く握ると互いに顔を見合わせ微笑んだ。
群衆の中から声をかけて来たのはラバン商会の会頭タージ・ラバンであった。
驚くべき事に旅の衣装に身を包んでいる。
「まさか、タージさんも行くんですか?」
戸惑うイオリに髪をかき上げ笑顔で頷き馬車を指差した。
「勿論ですよ。
ガレーのカカオ農園はホワイトキャビン事案ですが、ラバン商会にとっても大きな儲けのチャンスですからね。
この目で見ないでいられますかっ!」
興奮気味の顔を近づけてくるタージ・ラバンにイオリの顔が引き攣る。
「やめろ。
イオリさん。
この男はこんなでも一流の商人だ。
契約などに関して役に立つ。
それに旅の邪魔になるのなら、魔獣の餌にでもしてしまえば良い。」
ロス・グラトニーがタージ・ラバンの首根っこを力強く引っ張っる。
「ちょっとロス兄さん!
魔獣の餌って酷いじゃないか。
えっ・・・?
そんな事しないよね?
しないよね?」
イオリの後ろから顔を出しニヤニヤしている双子にタージ・ラバンは冷や汗を掻いた。
「イオリ様。
唐突に我々ホワイトキャビンが顔を出すよりもデザリアで信頼が厚いラバン商会に仲介して頂いた方が先方のご夫婦が安心されます。
ここは同行を願いましょう。」
リルラの手助けもあってタージ・ラバンもキャラバンに加わる事になった。
彼の馬車にはタージとその補佐、そして護衛の3人が乗る事になるそうだ。
今は、補佐と護衛の2人が出発の準備をしている。
「これは想像より大所帯になったな。」
並んだ3台の馬車を見て苦笑したヒューゴにイオリは困ったように眉を下げた。
「なんだか変な事になっちゃいました。」
「良いじゃないか。
アイツらが楽しそうだ。」
微笑むヒューゴの視線の先を見れば、子供達がそれぞれの馬車を覗いてははしゃいでいる。
「・・・そっか。
皆んなが楽しそうなら良いか。」
諦めたような笑顔をするイオリにヒューゴは笑った。
クイッと裾を引っ張られ、下を見ればゼンが後を振り返った。
イオリもつられて見れば、そこに黙って立ったままのバキル・カルダイン侯爵が立っていた。
「あっ。」
イオリが慌てて会釈をするとバキル・カルダインが聞こえるか聞こえないかのような小さな声で囁いた。
「・・・世話になった。」
「いいえ。
俺は出来る事をしただけです。」
「・・・そうか。
我ら一族は今回の事態に打ちひしがれた。
それでもスルターンと君に与えられた機会を無駄にしない。
この巡り合わせに感謝している。」
決意を込めた瞳にイオリは頷いた。
「ご健勝をお祈りします。」
バキル・カルダインが恐る恐る出す手をイオリが力強く握ると互いに顔を見合わせ微笑んだ。
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