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旅路〜デザリア・王宮〜
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翌日の出張は早朝からだった。
デザリアに来た時は海からの上陸だったが今回は反対の門から出て行く事になる。
門前には早めに町を出ようと多くの人々が集まっていた。
イオリは人が少ない場所で馬車を出す。
馬車には車輪の代わりにソリが設置されていた。
サラサラで細かい砂漠の砂では馬車の車輪が埋まると聞いて、急いで付け替えたのだ。
デザリアでは馬車よりもソリの旅が主流なのだそうだ。
「みんな準備できた?」
「こっちは良いぞ。」
アウラにハーネスをつけていたヒューゴが返事をする。
「中も大丈夫。」
馬車では中のクッションを整頓していたスコルが身を乗り出して手を振っている。
「いやいや。
また、この馬車に乗る事になるとはな。」
「これが、例の馬車か。
なるほど・・・他とは違うな。
快適そうだ。」
楽しそうなシモン・ヤティムと羨ましそうな宰相ナロ・シウバが馬車の中を覗く姿があった。
「お待たせしました。
イオリ様。」
そこに、旅商人姿のリルラとゴヴァンが馬車を引っ張り現れた。
後には軽装のサミーとホセの姿がある。
「あれ?
サミーさんだけじゃなくてホセさんも残るんですか?」
ニコニコして頷くウサギ獣人ホセの代わりにリルラが説明した。
「サミーがデザリアに常駐するのなら、彼の代わりに情報を集める人間が必要です。
そのサポートをホセが担います。
サミーに比べホセは身動きが取れる分、自在に活動できます。」
他人がいる時は、イオリに敬語を使うと決めているらしいリルラにイオリは戸惑いながら頷いた。
「俺は商売の事は分からないんで、お任せします。
ポーレットにいるバートさんと話し合ってください。」
「お任せください。
一度、ホセがポーレットに向かい挨拶をしてきます。
グラトニー商会の旦那さんも話し合いに立ち会って下さったので、問題ないでしょう。」
体の大きな熊の獣人サミーと小さなウサギの獣人ホセが顔を見合わせて頷いた。
「イオリさん。
ここで私もお別れだ。
君なら大丈夫だと思うが、きっとアースガイルへ帰ってくるんだぞ。」
そこに威厳たっぷりなロス・グラトニーが現れるとリルラ達が道を譲った。
「はい。
ロスさんもお気をつけて帰国してください。
どうぞ、グラトニーの皆さんによろしくお伝え下さい。」
「分かっている。
ヒューゴ、ニナ。
達者でな。
みんなも、無事に帰っておいで。」
ロスは優しくニナの頭を撫でてやると、子供達に微笑んだ。
「お爺ちゃんに早く帰るねって伝えてね。」
「王都出てくる時、寂しそうだったもんね。」
「それを言うならアルも寂しそうだったよ。」
「アルは大丈夫だよ。
ディビットが帰るんだから。」
子供達にかかればアースガイルの国王も伝説の大商人も形なしである。
ロスとリロイは忍び笑いをして顔を背けている。
「お世話になりました。
旦那さんのご好意を忘れません。
家族と共に、きっと帰ります。」
ヒューゴの決意にロスは肩をポンッと叩き送り出すのだった。
デザリアに来た時は海からの上陸だったが今回は反対の門から出て行く事になる。
門前には早めに町を出ようと多くの人々が集まっていた。
イオリは人が少ない場所で馬車を出す。
馬車には車輪の代わりにソリが設置されていた。
サラサラで細かい砂漠の砂では馬車の車輪が埋まると聞いて、急いで付け替えたのだ。
デザリアでは馬車よりもソリの旅が主流なのだそうだ。
「みんな準備できた?」
「こっちは良いぞ。」
アウラにハーネスをつけていたヒューゴが返事をする。
「中も大丈夫。」
馬車では中のクッションを整頓していたスコルが身を乗り出して手を振っている。
「いやいや。
また、この馬車に乗る事になるとはな。」
「これが、例の馬車か。
なるほど・・・他とは違うな。
快適そうだ。」
楽しそうなシモン・ヤティムと羨ましそうな宰相ナロ・シウバが馬車の中を覗く姿があった。
「お待たせしました。
イオリ様。」
そこに、旅商人姿のリルラとゴヴァンが馬車を引っ張り現れた。
後には軽装のサミーとホセの姿がある。
「あれ?
サミーさんだけじゃなくてホセさんも残るんですか?」
ニコニコして頷くウサギ獣人ホセの代わりにリルラが説明した。
「サミーがデザリアに常駐するのなら、彼の代わりに情報を集める人間が必要です。
そのサポートをホセが担います。
サミーに比べホセは身動きが取れる分、自在に活動できます。」
他人がいる時は、イオリに敬語を使うと決めているらしいリルラにイオリは戸惑いながら頷いた。
「俺は商売の事は分からないんで、お任せします。
ポーレットにいるバートさんと話し合ってください。」
「お任せください。
一度、ホセがポーレットに向かい挨拶をしてきます。
グラトニー商会の旦那さんも話し合いに立ち会って下さったので、問題ないでしょう。」
体の大きな熊の獣人サミーと小さなウサギの獣人ホセが顔を見合わせて頷いた。
「イオリさん。
ここで私もお別れだ。
君なら大丈夫だと思うが、きっとアースガイルへ帰ってくるんだぞ。」
そこに威厳たっぷりなロス・グラトニーが現れるとリルラ達が道を譲った。
「はい。
ロスさんもお気をつけて帰国してください。
どうぞ、グラトニーの皆さんによろしくお伝え下さい。」
「分かっている。
ヒューゴ、ニナ。
達者でな。
みんなも、無事に帰っておいで。」
ロスは優しくニナの頭を撫でてやると、子供達に微笑んだ。
「お爺ちゃんに早く帰るねって伝えてね。」
「王都出てくる時、寂しそうだったもんね。」
「それを言うならアルも寂しそうだったよ。」
「アルは大丈夫だよ。
ディビットが帰るんだから。」
子供達にかかればアースガイルの国王も伝説の大商人も形なしである。
ロスとリロイは忍び笑いをして顔を背けている。
「お世話になりました。
旦那さんのご好意を忘れません。
家族と共に、きっと帰ります。」
ヒューゴの決意にロスは肩をポンッと叩き送り出すのだった。
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