続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・王宮〜

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 絨毯が敷き詰められた部屋は赤とゴールドを基調とした派手なインテリアだった。

 部屋には6人いて、明らかに会談中の様相だ。

「旅団長。
 戻りました。
 教会でイオリ様とお会いしたんでお連れしましたよ。」

 そこにエルフのゴヴァンがニコニコして入ってきたのだ。
 注目を浴びないわけがない。

 イオリ達が姿を表すと、嬉しそうな声が上がった。

「これは、イオリ様と皆さんじゃないですか!
 デザリアでお目にかかれるとは思いませんでしたよ。」

 3年ぶりに会ったリルラは女商人の姿でイオリを出迎えた。

「お久しぶりですね。
 リルラさん。」

「本当にお久しぶりです。
 お元気そうで何よりです。
 皆さんもお変わりなく?」

 イオリの後ろから顔を出す子供達に笑みを浮かべ、背後に立っていたヒューゴに会釈をする。

「えぇ。
 元気ですよ。
 そちらの皆さんもお元気ですか?」

 イオリが尋ねると、リルラは満面の笑みで頷いた。

「変わりありませんよ。」

 3年前にミズガルドの貴族の奴隷として諜報活動をしていたリルラ。
 この笑顔は自由を手に入れた彼女の笑顔というよりも商人としてのリルラの笑顔なんだろう。

 リルラの背後にはデザリアに着いた後に別れた熊の獣人であるサミーとウサギの獣人のホセの姿があった。
 2人もイオリ達と再会できて嬉しそうだ。

「仕事は終わったようだね?」

 そこに重厚な声が響いた。
 視線を向ければグラトニー商会の会長ロスの姿があった。

 父であるアーベルから商会を受け継いだロス・グラトニー。
 その手腕は父にも負けない豪胆さと何事も見逃さない鋭い目を持っていた。
 彼の後には秘書でもあり従兄弟のリロイが微笑みながら立っていた。

「えぇ。
 なんとか依頼を終わらせましたよ。ロスさん。」

 満足そうに頷いたロスが中央に座る男を顎で指した。

「この男はデザリアの商人のタージ・ラバン。
 ラバン商会の会頭だよ。
 昔馴染みでね。
 何かと役に立つ男だ。
 旅の面倒事はコイツに頼むといい。」

「ちょっと!
 ロス兄さん。
 その紹介はどうかと思うよ?」

 ロスよりかは年下のだろうか、そこの所は疎いイオリには見当もつかない。
 ターバンを頭に巻いた男は剛健なイメージのロスとは違い、どちらかとういと長身の優男であった。
 
 女性なら頬を染める笑顔でイオリを見つめると、立ち上がって挨拶をした。

「初めまして、イオリ様。
 ラバン商会の会頭タージ・ラバンでございます。
 どうぞ、お見知りおき下さい。」

「初めまして、ラバンさん。
 突然、お邪魔して申し訳ありません。
 冒険者をしています。
 イオリと申します。
 こちらは俺の家族達です。」

 同じく優男感のあるイオリが微笑むとタージ・ラバンはソファを薦めた。

「イオリ様。
 この度はデザリアの危機を救っていただきまして、有難うございます。
 我がラバン商会も先日までのダンジョン閉鎖には苦労致しておりました。」

 表沙汰にはイオリ達の情報は出ていない。
 優男であるがタージ・ラバンも癖のある商人である事に間違いはないのだ。

 イオリはさも面倒だと溜息を吐くのだった。



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