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旅路〜デザリア・王宮〜
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多少のわだかまりがあるにしろ、父王と娘の間には暖かい物が生まれていた。
「イオリ殿、それでしたらダンジョンの話は如何考えます?」
宰相ナロ・シウバの言葉に父王と母妃は「ハッ」とした。
ガラスの花は姫の我儘エピソードの1つにすぎない。
幽閉され、罪を疑われているのは《許しもなく騎士をダンジョンに送り、危険に晒し、あまつさえ“幻の願いを叶える鳥”の捕獲を命令した》事だ。
それが解決しなければバシラ・フレールは許される事はない。
「それについても、大きな誤解だと思いますよ。
俺がシモンさんに聞いた話だと、姫様は《“願いを叶える鳥”を見つけてこい“》と言ったと聞きました。
それなのに、なぜ捕獲という事になっているのですか?」
ーーーー見つけて。と捕獲しろは意味が大きく違います。
イオリが疑問を呈すると、大人達は戸惑ったように顔を見合わせた。
「それは、侍従から“願いを叶える鳥”の捕獲命令が出ていたからですが・・・?」
父王や母妃、宰相・・・筆頭魔法使いの視線を受け、侍従は顔を青くした。
「わ・・・私は・・姫様の願いを!」
「はいっ、分かりました!
姫様の願いを叶えようとしたんですよね?
はい、了解です。」
イオリが乱暴に話を切ると侍従は、顔を真っ赤にした。
青くしたり、赤くしたり忙しい人間のようだ。
「では、お聞きします。
姫様は“願いを叶える鳥”を見つけて何を願うつもりだったのでしょう?」
巷では父王や母妃の愛を乞いる為と言われている、この中にも同じように思っている者もいるだろう。
どうしようかと、言い淀むバシラ・フレールの手を握り、イオリはニッコリと頷いた。
それに勇気を貰ったのかバシラ・フレールは小さい声で話し始めた。
「・・・弟の・・・ルビシアの病気が治るようにと・・・。
それがダメなら、苦しみを和らげて欲しいと願うつもりでした。」
娘の願いを最後まで聞いて、母妃は涙を流した。
「バシラ・・・あぁ、バシラ。
貴方はなんて・・・。」
堪えきれない母妃は走り寄ると娘を抱きしめた。
「御免なさい。
バシラ!
私達が貴方の話を聞かなかったから。
貴方はこんなに優しい子だったのに!
御免なさい。御免なさい。」
泣いて謝る妻と抱きしめられている娘を見下ろし、父王・ダマンは深い深い後悔に苛まれていた。
妻に、もっと娘の話を聞けと言われていた。
宰相から5歳の娘を罪に問うなと言われていた。
筆頭魔法使いから、非難の視線も受けていた。
全て、病弱な後継の息子にばかり目を向けた自分が娘を犠牲にしたのだ。
イオリは優しく王に語りかけた。
「ちなみに、“サンカヨウ”の花言葉は《幸せ・親愛の情》です。
姫様は愛を乞うのではなく、与える事を選んだのでしょう。
でも、愛は与えるばかりでは痩せ細く疲弊していきます。
だから、幼い姫様は沢山の人に愛されるべきです。」
そんなイオリに王は泣きそうな顔を横に振った。
「しかし、私は過ちを犯した。」
「若輩ながら、申し上げます。」
一連の事を見届けたディビットが優しく微笑んでいた。
「何事も遅すぎる事はありません。
過ちというなら、訂正するべきです。
あの輪の中に父君がいてこそ、姫様の幸せなんですから。
国王を父に持つ私は、そう願います。」
そう言うと、ディビットは抱き合い涙する母娘を見つめる父王の背中を押した。
「イオリ殿、それでしたらダンジョンの話は如何考えます?」
宰相ナロ・シウバの言葉に父王と母妃は「ハッ」とした。
ガラスの花は姫の我儘エピソードの1つにすぎない。
幽閉され、罪を疑われているのは《許しもなく騎士をダンジョンに送り、危険に晒し、あまつさえ“幻の願いを叶える鳥”の捕獲を命令した》事だ。
それが解決しなければバシラ・フレールは許される事はない。
「それについても、大きな誤解だと思いますよ。
俺がシモンさんに聞いた話だと、姫様は《“願いを叶える鳥”を見つけてこい“》と言ったと聞きました。
それなのに、なぜ捕獲という事になっているのですか?」
ーーーー見つけて。と捕獲しろは意味が大きく違います。
イオリが疑問を呈すると、大人達は戸惑ったように顔を見合わせた。
「それは、侍従から“願いを叶える鳥”の捕獲命令が出ていたからですが・・・?」
父王や母妃、宰相・・・筆頭魔法使いの視線を受け、侍従は顔を青くした。
「わ・・・私は・・姫様の願いを!」
「はいっ、分かりました!
姫様の願いを叶えようとしたんですよね?
はい、了解です。」
イオリが乱暴に話を切ると侍従は、顔を真っ赤にした。
青くしたり、赤くしたり忙しい人間のようだ。
「では、お聞きします。
姫様は“願いを叶える鳥”を見つけて何を願うつもりだったのでしょう?」
巷では父王や母妃の愛を乞いる為と言われている、この中にも同じように思っている者もいるだろう。
どうしようかと、言い淀むバシラ・フレールの手を握り、イオリはニッコリと頷いた。
それに勇気を貰ったのかバシラ・フレールは小さい声で話し始めた。
「・・・弟の・・・ルビシアの病気が治るようにと・・・。
それがダメなら、苦しみを和らげて欲しいと願うつもりでした。」
娘の願いを最後まで聞いて、母妃は涙を流した。
「バシラ・・・あぁ、バシラ。
貴方はなんて・・・。」
堪えきれない母妃は走り寄ると娘を抱きしめた。
「御免なさい。
バシラ!
私達が貴方の話を聞かなかったから。
貴方はこんなに優しい子だったのに!
御免なさい。御免なさい。」
泣いて謝る妻と抱きしめられている娘を見下ろし、父王・ダマンは深い深い後悔に苛まれていた。
妻に、もっと娘の話を聞けと言われていた。
宰相から5歳の娘を罪に問うなと言われていた。
筆頭魔法使いから、非難の視線も受けていた。
全て、病弱な後継の息子にばかり目を向けた自分が娘を犠牲にしたのだ。
イオリは優しく王に語りかけた。
「ちなみに、“サンカヨウ”の花言葉は《幸せ・親愛の情》です。
姫様は愛を乞うのではなく、与える事を選んだのでしょう。
でも、愛は与えるばかりでは痩せ細く疲弊していきます。
だから、幼い姫様は沢山の人に愛されるべきです。」
そんなイオリに王は泣きそうな顔を横に振った。
「しかし、私は過ちを犯した。」
「若輩ながら、申し上げます。」
一連の事を見届けたディビットが優しく微笑んでいた。
「何事も遅すぎる事はありません。
過ちというなら、訂正するべきです。
あの輪の中に父君がいてこそ、姫様の幸せなんですから。
国王を父に持つ私は、そう願います。」
そう言うと、ディビットは抱き合い涙する母娘を見つめる父王の背中を押した。
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