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旅路〜デザリア・王宮〜
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「それは一体、どういう事だい?」
父王・ダマンが驚き、何も言えなくなっている後からディビットの声が聞こえた。
「言葉通りの意味です。
お姫様は・・・バシラ・フレール様は心優しい女の子です。」
ニッコリとするイオリに言われた本人である、バシラ・フレールもポカンと驚いていた。
「理由を・・・その、理由をお聞かせください。」
そこに、女性の声が聞こえた。
夫が娘と会うと聞いて、心配だったのだろう。
いつの間にか王妃であるティエナ妃が庭の片隅に立っていた。
「・・・母様。」
母の姿に初めてバシラ・フレールは涙目になった。
「此度の難局に力添えを下さった冒険者だと聞いています。
英傑であられる貴方に娘が、どのように見えているのですか?」
ティエナ妃は期待するような目をイオリに向けた。
「ご説明しましょう。」
イオリはバシラ・フレールの手を握り歩き出した。
周りの人間はあまりに自然なイオリの行動に注意する暇もない。
「姫様はこちらの庭でガラスの花を見つけたと聞きました。
間違いないですか?」
問いかけられて、バシラ・フレールは戸惑いながら頷いた。
「はい。
でも、次の日には無くなっていました。
だから一緒に見つけて欲しいと侍従にお願いしました。」
視線を受けて侍従は胸を張り頷いた。
「姫様の願いは叶えて差し上げる。
それが私の勤めです。」
「・・・。
そうですか。
王様、お妃様、どうぞこちらへ。
皆さんも、どうぞ。」
イオリの誘いに父王・ダマンと母妃・ティエナは恐る恐る近づいて行く。
「なんだ?
何があるんだ?」
ニヤニヤしながら近づいてくるロジャーにアレックスが肘鉄を食らわした。
「この花をご覧ください。」
イオリが指さしたのは小さな白い花だった。
「可愛い花だね。」
覗き込んだナギが優しく触れる。
「そう。
一見、小さく可憐な白い花ですが・・・
ニナ。
このお花に水をあげてくれないか?」
「はーい。」
イオリが頼むと、走り寄ってきたニナは白い花に霧雨のような優しい水を与えた。
すると・・・。
「まぁ・・・。」
「なんて事だ!」
「凄いな。」
「キレー!!
何これ?!」
小さな白い花の花ビラが透明に変わったのだった。
それはまるでガラス細工のようだった。
父王・ダマンは震える声でイオリに尋ねた。
「イオリ殿・・・これは一体、どういう事なんだ?」
イオリは微笑むと驚く面々に説明を始めた。
「これは、“サンカヨウ”という花です。
本来は冷涼な高地で湿度が高い山腹などの限られた場所でしか見られない、珍しい花です。
もしかして、姫様は雨の日にご覧になったのではないですか?」
今だに驚いていたバシラ・フレールはコクコクと頷いた。
「あの雨の日・・父様に怒られて庭に逃げ込んだのです。
ガラスの花を見つけたので、急いで宮に帰ると心配していた侍女に体を拭いてもらいました。
その時にガラスの花の話をしたのですが、雨が降っていたので翌日にするように言われて・・・。
でも、翌日にはガラスの花は無くなっていました。」
「・・・そうであったか。」
父王・ダマンは娘の頭にポンっと手を乗せた。
「・・・信じてやれず、すまなかった。」
父王の謝罪にバシラ・フレールは驚きながらも、次第にニッコリと微笑んだのだった。
父王・ダマンが驚き、何も言えなくなっている後からディビットの声が聞こえた。
「言葉通りの意味です。
お姫様は・・・バシラ・フレール様は心優しい女の子です。」
ニッコリとするイオリに言われた本人である、バシラ・フレールもポカンと驚いていた。
「理由を・・・その、理由をお聞かせください。」
そこに、女性の声が聞こえた。
夫が娘と会うと聞いて、心配だったのだろう。
いつの間にか王妃であるティエナ妃が庭の片隅に立っていた。
「・・・母様。」
母の姿に初めてバシラ・フレールは涙目になった。
「此度の難局に力添えを下さった冒険者だと聞いています。
英傑であられる貴方に娘が、どのように見えているのですか?」
ティエナ妃は期待するような目をイオリに向けた。
「ご説明しましょう。」
イオリはバシラ・フレールの手を握り歩き出した。
周りの人間はあまりに自然なイオリの行動に注意する暇もない。
「姫様はこちらの庭でガラスの花を見つけたと聞きました。
間違いないですか?」
問いかけられて、バシラ・フレールは戸惑いながら頷いた。
「はい。
でも、次の日には無くなっていました。
だから一緒に見つけて欲しいと侍従にお願いしました。」
視線を受けて侍従は胸を張り頷いた。
「姫様の願いは叶えて差し上げる。
それが私の勤めです。」
「・・・。
そうですか。
王様、お妃様、どうぞこちらへ。
皆さんも、どうぞ。」
イオリの誘いに父王・ダマンと母妃・ティエナは恐る恐る近づいて行く。
「なんだ?
何があるんだ?」
ニヤニヤしながら近づいてくるロジャーにアレックスが肘鉄を食らわした。
「この花をご覧ください。」
イオリが指さしたのは小さな白い花だった。
「可愛い花だね。」
覗き込んだナギが優しく触れる。
「そう。
一見、小さく可憐な白い花ですが・・・
ニナ。
このお花に水をあげてくれないか?」
「はーい。」
イオリが頼むと、走り寄ってきたニナは白い花に霧雨のような優しい水を与えた。
すると・・・。
「まぁ・・・。」
「なんて事だ!」
「凄いな。」
「キレー!!
何これ?!」
小さな白い花の花ビラが透明に変わったのだった。
それはまるでガラス細工のようだった。
父王・ダマンは震える声でイオリに尋ねた。
「イオリ殿・・・これは一体、どういう事なんだ?」
イオリは微笑むと驚く面々に説明を始めた。
「これは、“サンカヨウ”という花です。
本来は冷涼な高地で湿度が高い山腹などの限られた場所でしか見られない、珍しい花です。
もしかして、姫様は雨の日にご覧になったのではないですか?」
今だに驚いていたバシラ・フレールはコクコクと頷いた。
「あの雨の日・・父様に怒られて庭に逃げ込んだのです。
ガラスの花を見つけたので、急いで宮に帰ると心配していた侍女に体を拭いてもらいました。
その時にガラスの花の話をしたのですが、雨が降っていたので翌日にするように言われて・・・。
でも、翌日にはガラスの花は無くなっていました。」
「・・・そうであったか。」
父王・ダマンは娘の頭にポンっと手を乗せた。
「・・・信じてやれず、すまなかった。」
父王の謝罪にバシラ・フレールは驚きながらも、次第にニッコリと微笑んだのだった。
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