続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・王宮〜

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___________
ー 北風と太陽ー

『旅人の上着をどちらが先に脱がす事が出来るか競争しよう。』

 北風が太陽に勝負を挑みました。

 先手の北風が強い風をビュービューと旅人に吹きかけます。
 旅人は飛ばされないように上着を強く握りしめました。
 北風はもっと強く風を吹き付けますが、旅人はもっと強く上着を掴みます。
 結局、北風は旅人から上着を脱がす事が出来ませんでした。

 次は太陽の番です。

 すると太陽はポカポカと優しい暖かさで旅人を包み込みました。
 先程まで強風に耐えていた旅人は疲れて木陰で休みます。

 太陽はポカポカと旅人の体を温めます。

「さっきまで、あんなに寒かったのに、今度は暑くなってきた。
 これは堪らん。」

 旅人は上着を脱ぎ、汗を拭いました。

 それを見て北風は言いました。

『私の負けだね。』
___________

 
 最初から度肝を抜かれた様子の面々はイオリを凝視していた。

「結界の解除を試みるのではなく、頼んだだと?
 それでダンジョンが受け入れたのか?」

 訝しげる王に、全てを見ていた筆頭魔法使いは頷いた。

「王よ。
 本当の事なのです。
 我々を拒んでいたダンジョンがイオリ殿が現れた途端に受け入れたのですよ。
 イオリ殿は特別何かをしたという事ではないのです。」

「うーむ。
 それで我々がしていた事がで其方がした事が
 そう言いたいのかな?」

 唸る面々を前にイオリはニッコリとした。

「本当のところは分かりません。
 でも、ダンジョンが受け入れてくれた。
 俺にはそれで十分です。
 発見された騎士の方達や冒険者達は無事と聞きましたが、その後の問題はありませんか?」

 それには宰相であるナロ・シウバが頷いた。

「ダンジョンから救出されると、早い者で1時間もしないうちに目を覚まし始めました。
 健康にも異常がなく、本当に眠っていた状態だったようです。
 1ヶ月も眠りについていたのにですよ?
 今では殆どの者が目覚め、食事も取っています。
 彼らの話では、どこからか歌が聞こえ、いつの間にか眠りについていたとの事でした。」

「まぁ、彼らが眠りについたのは副産物です。
 ダンジョンの本来の目的は“エルフの里の戦士”の足止めです。
 騎士や冒険者を“エルフの里の戦士”や魔獣達から守る必要もあった。
 だから、ダンジョンは全てを眠りにつかす選択をしたんです。
 今回の騒動は“デザリア”に危害を加えようとしたのではなく、国の脅威から守る為だった。
 なぜなら、“余慶のダンジョン”が消滅すれば“デザリア”という国はの恐れがあったからです。」

 イオリの言葉に国王を含め、宰相そして筆頭魔法使いは恐れ慄いた。

「だから、と約束したんです。
 デザリアの王様に一緒に国を守って下さいってお願いするって。」

 デザリアの王ダマン・デザリアはイオリの言っている事を理解したのか真剣な顔で頷いたのだった。

「話を聞こう。」


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