続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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 異変は王城にいる人間達も目にした。

 眩い光と軽やかな歌声が夜空を覆い、2匹の大きな鳥が舞い飛んだ後に光の玉となって消えて行く姿を執務室にいたデザリア王であるダマン・デザリアは驚愕して窓に齧り付いて見ていた。

「今のは・・・なんだ。
 まさか・・・!!」

 そこに宰相であるナロ・シウバが転がり込むように入ってきた。

「スルターン!!
 外をご覧下さい!
 ダンジョンの辺りが・・・。」

「見ておった・・・。
 ナロ・シウバ、あの光り輝く鳥達はまさか初代様がお会いしたという伝説の神鳥であろうか・・・。」

「その様に察します。
 まさか、我が人生で御姿を拝見できますとは・・・。」

 そこに若者の楽しそうな声がした。

「さすが、イオリだ。
 またもダンジョンから祝福されたか。
 デザリア王。
 どうやら、災いは去ったようですね。」

 客人であるアースガイル第2王子であるディビットが護衛を連れてやって来た。

「ディビット王子の言われた通りになったな。
 礼をしたい。
 彼の者とその仲間達、そしてシモン・ヤティムを王宮に。」

 王の言いつけを宰相ナロ・シウバはニッコリして頷いた。

「早急に迎えを送りましょう。」

 走り去ったナロ・シウバを見送った王はディビットにソファに座るように薦め、廊下に侍っていた侍従に茶の用意を申し付けに行った。

「王子っ!王子っ!」

 背後から小さく自分を呼ぶ声がしてディビットが振り返ると、護衛として立っていたアレックスとロジャーがニヤニヤしていた。

「何?どうしたの?」

 首を傾げるディビットにアレックスが近寄り耳打ちした。

「馬車で迎えに行かれたのでしたら、悪手かと・・・。
 イオリは馬車が苦手ですので・・・。」

 それを聞きディビットは「アッ」と声を上げた。

「失念してた。
 確かにそうだったね。
 あ~。まぁ、良いか。」

 ディビットがイオリを見放すと、アレックスは苦笑し、ロジャーがゲラゲラとお腹を抱えて笑い出した。

「如何したのだ?
 ディビット王子。」

 戻ってきたダマンにディビットは神妙な顔をした。

「デザリア王、問題が発生しました。
 実は・・・。」

 ディビットの話を聞いたダマンは事態を把握して微笑んだ。

「それならば、気分が良くなる飲み物でも用意しておこう。
 まさか、国の英雄が馬車に弱いとはな・・・。
 難儀な事だ。」

 ダマン・デザリアは知らなかった。
 イオリの馬車酔いは冗談では済まされないのだ。

 ダマン・デザリアは国を救ってくれた若者の到着を首を長くして待った。


__________

「今の光は何?」

 薄暗い部屋で少女は呟いた。

「何でしょう・・・。
 こちらからは確認できませんので・・・。
 さぁ姫様、おやすみ下さい。」

「うん。
 眠いわ。」

 布団に入り、うつらうつらする少女の額を侍女が撫でた。

「お労しい・・・。
 王はいつになったら、姫を愛して下さるのでしょう。」

「・・・父様。」

 微睡む少女の顔が歪む。

「お寂しくとも、我々がおりますからね。」

「・・・うん。」

 姫と呼ばれた少女は安堵した顔をして眠りについた。
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