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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「イオリー!
 ジョムシードってお肉は食べられるの?」

「口から毒出してたからね。
 身体中に充満してる可能性があるから、やめておこう。」

 パティと共にジョムシードの解体作業をし始めたイオリはフサフサの蜘蛛の様な脚を切り落としていく。
 始めこそ、顔を歪めていたパティであったが、解体作業は自分の役目である自負が勇気を持たせていた。

「甲殻類の魔獣の解体なんて、よく知っていたな。」

 関心するヒューゴにイオリは苦笑した。

「あ・・・いや。
 知らないですよ。
 でも、エビとか蟹と同じかなって。」

 イオリにとって解体作業は食べる上での延長線上にあるのだ。

 それを聞いてヒューゴは「クククッ」と忍んで笑った。

 シモン・ヤティムの助言に従い硬い外殻はギルドで買い取ってもらおうと丁寧に削ぎおそして作業をする。

「イオリ殿・・・すまんがジョムシードのハサミの事だがね・・・あれは国が喉から手が出る程に欲しい代物なのだ。
 ・・・片腕を譲ってはもらえぬものだろうか。
 勿論!国が対価を支払うだろう。」

 言いずらそうなシモン・ヤティムにイオリは苦笑した。

「うーん。
 俺よりもスコルと交渉してください。
 お土産にあげるって約束しちゃったんで、今はスコルの物ですから。」

「そうか。了解した。」

 シモン・ヤティムはパティを手伝っているスコルの元にイソイソと歩いて行った。


ポロンッ♪ポロロン♪

 ナギのライアーの音色がする。
 
 ジョムシードの毒に汚染された砂の地を浄化作業しているのだ。
 その後ろからニナが洗浄魔法で一帯を綺麗にしている。

 1人1人が出来る事をする。
 それがイオリ達家族の在り方だった。

『お肉食べられないの?』

 ゼンは見上げながら残念そうに呟いた。

「毒だよ。ゼン。
 毒。
 お腹壊すからやめておこう。」

『・・・うん。」

「ゼンも頑張ったからね。
 帰ったらさ。
 ご馳走を沢山食べようね。」

『うん!!』

 褒められたのが嬉しいのか、ご馳走が嬉しいのかご満悦なゼンはピョンピョンとイオリの後を着いて回った。



「良いよ!」

 どうやらシモン・ヤティムの交渉が上手くいったのか、スコルはジョムシードの片腕を譲ることにした様だ。
 ミスリルと同等の硬さを持つジョムシードのハサミだ。
 国王に献上する事ができてシモン・ヤティムもホッとしたように微笑んでいた。
 
 暫くの間、黙々と作業をしていたイオリたちであったが終了すると疲れを感じていた。

「流石に、この大きさの魔獣を少人数で解体するのはキツかったね。」

「疲れたぁぁぁ。」

 イオリと共に最前線で頑張ったパティはヘロヘロである。

「思ったんだがな。
 イオリの腰バックに全て収納して持ち替えれば良かったんじゃないか?」

 ヒューゴが思いついたように言うと、イオリとパティはピキッと固まった。

「確かにね。
 そうすれば、ギルドの解体職人さんに手伝ってもらえたかもよ。」

 スコルが追い打ちをかける。

 するとシモン・ヤティムが顔面蒼白になり否定した。

「それは困る。
 全部を持ち帰ったらギルドがパニックを起こすぞ!
 この大きさをどこに出すと言うのだ!
 今までの達成者たちも部位の一部を持ち帰ったにすぎん。
 全部となると・・・。」

 自分達の苦労が無駄にならずに済んだと、イオリとパティは頷いた。

「そうだよ!
 迷惑かける!」

「うん。
 お肉食べられないんだよ?」

「それに、毒で腰バックが汚れるし。」

 自分達を納得させようと必死のイオリとパティをヒューゴとスコルとナギが大笑いした。

「腰バックが汚れたら、ニナがお手伝いするよ。」

 可愛いニナは汚れていたイオリとパティを洗浄魔法で綺麗にするとニッコリした。

「「・・・ありがとう。」」

「どういたしまして。」

 素直なニナに何も言えない2人だった。


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