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旅路〜デザリア・ダンジョン〜
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「「「「出発~!!」」」」
荷物を片付けた一行は子供達の掛け声と共に休憩地から出発した。
「これより先は馬車はやめた方がいい。」
シモン・ヤティムの助言に従いイオリは腰バックに馬車をしまった。
「何度見ても、凄まじい容量のイベントリだな。」
魔法使いの驚き様に誤魔化すようにイオリは微笑んだ。
「アウラも大丈夫?」
「ヒヒンっ!」
今や、中型犬ほどの大きさに変化したアウラも子供達と楽しそうに歩いている。
草原エリアと言われる、この階層は先程の水辺から姿を変えていく。
だだっ広い草原から森に変わり渓谷へと移っていくのだ。
森はお手のものとばかりに、子供達も楽しそうだ。
「危なくはないか?」
心配そうなシモン・ヤティムにイオリとヒューゴは肩をすくめる。
「この3年程、魔の森にいたんですよ。
あの子達も森との付き合い方は分かってます。」
ヒューゴが微笑むとシモン・ヤティムは思案顔になった。
「・・・魔の森。
まさか“明けない魔の森”と呼ばれる森林地かっ!?」
「あれ?
ご存じですか?」
嬉しそうなイオリにシモン・ヤティムは顔を硬らせた。
「知ってるも何も、有名な危険な場所ではないか!
ほぼダンジョンと同じ扱いをされ、奥に行けばいくほどに魔獣の強さも比例していくと聞く。
我が国の冒険者も挑戦しては無惨な話が伝わってくる。
本当に彼の地に子供が?」
「えぇ、そうです。
特にイオリにとって魔の森の深層部は故郷と同じなんですよ。」
ーーー驚きは分かります。
とばかりに苦笑するヒューゴが実に自然で冗談ではないのだとシモン・ヤティムは理解した。
《先程の戦闘での子供達の度胸に驚かされたが、まさか“明けない魔の森”で生活していたとはな・・・。》
「ちょっとごめんね。通るよ。」
ナギがライアーを奏で草木に語りかけながら道を作り、それに合わせてニナが鼻歌を歌っている。
「よいしょ!」
「ほいっ!」
そんな2人を庇うように襲ってくる蛇やら虫などの小型の魔獣を双子が追い払う。
「何故に、仕留めないのだ?」
シモン・ヤティムが質問すると決まって2人は声を揃えた。
「「だって、食べないもん。」」
その後にイオリが教えてくれた。
食べれないものは比較的に狩猟しないと・・・。
「ダンジョンであろうと、ここは自然です。
まぁ、スタンピードが起これば対処はしますが、必要以上の狩は得策ではありません。
美味しく食べてこその食料ですから。」
ダンジョンにおいて来るものは始末し、逃げるものも狙っていたシモン・ヤティムにとって衝撃的な答えであった。
金や名誉ではなく美味しい食事こそが彼らの褒美なのだ。
「生きる者の定めか。」
そんな基本的な事を忘れていた自分に森を楽しそうに歩く子供達が眩しかった。
ーーー我々はいつからか間違ってしまったのか?
塔に幽閉されている姫を想い、シモン・ヤティムは考え込んだのだった。
荷物を片付けた一行は子供達の掛け声と共に休憩地から出発した。
「これより先は馬車はやめた方がいい。」
シモン・ヤティムの助言に従いイオリは腰バックに馬車をしまった。
「何度見ても、凄まじい容量のイベントリだな。」
魔法使いの驚き様に誤魔化すようにイオリは微笑んだ。
「アウラも大丈夫?」
「ヒヒンっ!」
今や、中型犬ほどの大きさに変化したアウラも子供達と楽しそうに歩いている。
草原エリアと言われる、この階層は先程の水辺から姿を変えていく。
だだっ広い草原から森に変わり渓谷へと移っていくのだ。
森はお手のものとばかりに、子供達も楽しそうだ。
「危なくはないか?」
心配そうなシモン・ヤティムにイオリとヒューゴは肩をすくめる。
「この3年程、魔の森にいたんですよ。
あの子達も森との付き合い方は分かってます。」
ヒューゴが微笑むとシモン・ヤティムは思案顔になった。
「・・・魔の森。
まさか“明けない魔の森”と呼ばれる森林地かっ!?」
「あれ?
ご存じですか?」
嬉しそうなイオリにシモン・ヤティムは顔を硬らせた。
「知ってるも何も、有名な危険な場所ではないか!
ほぼダンジョンと同じ扱いをされ、奥に行けばいくほどに魔獣の強さも比例していくと聞く。
我が国の冒険者も挑戦しては無惨な話が伝わってくる。
本当に彼の地に子供が?」
「えぇ、そうです。
特にイオリにとって魔の森の深層部は故郷と同じなんですよ。」
ーーー驚きは分かります。
とばかりに苦笑するヒューゴが実に自然で冗談ではないのだとシモン・ヤティムは理解した。
《先程の戦闘での子供達の度胸に驚かされたが、まさか“明けない魔の森”で生活していたとはな・・・。》
「ちょっとごめんね。通るよ。」
ナギがライアーを奏で草木に語りかけながら道を作り、それに合わせてニナが鼻歌を歌っている。
「よいしょ!」
「ほいっ!」
そんな2人を庇うように襲ってくる蛇やら虫などの小型の魔獣を双子が追い払う。
「何故に、仕留めないのだ?」
シモン・ヤティムが質問すると決まって2人は声を揃えた。
「「だって、食べないもん。」」
その後にイオリが教えてくれた。
食べれないものは比較的に狩猟しないと・・・。
「ダンジョンであろうと、ここは自然です。
まぁ、スタンピードが起これば対処はしますが、必要以上の狩は得策ではありません。
美味しく食べてこその食料ですから。」
ダンジョンにおいて来るものは始末し、逃げるものも狙っていたシモン・ヤティムにとって衝撃的な答えであった。
金や名誉ではなく美味しい食事こそが彼らの褒美なのだ。
「生きる者の定めか。」
そんな基本的な事を忘れていた自分に森を楽しそうに歩く子供達が眩しかった。
ーーー我々はいつからか間違ってしまったのか?
塔に幽閉されている姫を想い、シモン・ヤティムは考え込んだのだった。
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