続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「「「「美味しい!!」」」」

 水辺でさんざん遊んできた子供達はゼンによって乾かして貰い、焚き火にあたっておやきを頬張っている。

「沢山あるからね。
 ゆっくり食べな。
 どうです?シモンさん。」

 イオリは客人の様子を伺った。

「うむ。美味い。
 これは・・・カボチャかな?」

「そうですよ。
 カボチャに木の実を加えて食感を出しているんです。
 比較的甘いおやきですね。
 こちらはお肉が入ってますから、是非どうぞ。」

 シモン・ヤティムはもう1つ進められると嬉しそうに頷いた。

 《これは我が国でも作れそうだ。
  帰ったらイオリ殿に作り方を聞いてみよう。》

 企むシモン・ヤティムに気づく事もなく、イオリは自分のおやきに手を伸ばそうとした。
 それをパクっと頬張ったのは白いフワフワのヤンチャな奴だった。

「ゼンっ!お肉ばっかり食べないの!
 俺の肉のやつ!こらっ!」

 ゼンがおやきを咥えて逃げて行く。
 それを見て子供達は楽しそうだが、自分は巻き込まれまいと静観する姿勢を崩さない。

 イオリは諦めたのか、眉を下げて溜息を吐いた。

「俺のは野菜か・・・。
 まあ、いいか・・・美味しいし。」

 先程まで“エルフの里の戦士”を震えさせた男とは思えない残念ぶりに子供達もヒューゴもシモン・ヤティムも苦笑するのだった。

___________

 “デザリア”の王ダマン・デザリアは次々と宮殿に運ばれて来る騎士達を向かい出て安堵の表情を浮かべていた。
 
 医師達が確認しても一応に眠りついていると言われる騎士達。
 目覚めれば問題なく復帰が可能だろうと驚きの診断が下された。

 なんの為に結界が張られ、騎士達が眠りにつかされていたのか本当の所は解明できていない。

 救助にあたった騎士の報告によれば、筆頭魔法使いシモン・ヤティムと共にダンジョンに潜った冒険者イオリが1つの答えを見出したという。

《ダンジョンが身を守る為に結界を張った。
 騎士や、冒険者達に危害を加えないようにダンジョン中の生命を眠りにつかせた。》

 歴史深い“デザリア”でかつて同じ事が起こった事はない。

《ダンジョンが警戒しなければならない敵とは何だ?
 なんとも不気味な事件よ。》

 王は解決できない不安に身を震わせた。
 それでも騎士達の無事に宮殿内は明るい雰囲気が漂っている事も確かなのだ。

「スルターン。
 騎士や冒険者の中には目覚め始めた者達がいるようです。
 再び医師に確認を取らせ問題がなければ当事者達に事情を聞いて参ります。」

「分かった。
 何か食べれる物を運ばせろ。
 無事に目覚めても1ヶ月ぶりの食事だ。
 考えてやってくれ。」

 宰相は王の言い付けに頭を下げた。

「スルターン!!ご報告が!」

 騎士が1人飛び込んできた。
 下がろうとしていた宰相も足を止めて報告を待った。

「報告を聞こう。」

「ハッ!
 ダンジョンの奥に潜っていた一行が“エルフの里の戦士”を発見し拘束に成功しました。
 現在“エルフの里の戦士”は魔拘束具をはめたうえで気絶しております。
 牢に閉じ込めた後、魔法使い達により結界を張らせました。
 こちらがシモン・ヤティム様からの書状です。」

 騎士の報告に王だけでなく、宮殿内に激震が走った。

「“エルフの里の戦士”だと・・・。
 それを拘束?!
 なんて事だ・・・王よ!!」

 宰相ナロ・シウバはシモン・ヤティムが送ってきた書状に目を通す王に駆け寄った。

「・・・事実だそうだ。
 “エルフの里の戦士”を誰1人命を落とす事なく確保したと書いてある。
 《我らはダンジョンの奥に進む為に、対処を願う。》と・・・。
 ・・・そうか、ダンジョンが身を守らなければならなかったのは奴らの所為であったか・・・。」

 “デザリア”の王ダマン・デザリアは自分の国を危険に晒した相手を見定めようと歩き出した。

「アースガイルの英雄が我が国を救ったか・・・。」

 ダマン・デザリアは客室でアースガイルの王子が誇らしげ微笑むの姿を思い出し、ニヤリとしたのだった。



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