続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「おい。イオリ。 
 この壁はなんだ?」

 双子をシールドで庇っているヒューゴが問いかけた。

「シモンさんの土魔法ですよ。
 この中で決着をつけろって事みたいです。」

「成程な。
 いや、凄かったな。」

 ヒューゴだけではない。
 双子も興奮気味で壁を見上げている。

「ゴゴゴー!!って言ってたね。」

「一気に高くなっていったよね。
 びっくりした。」

 そんな3人に微笑むとイオリは2人の“エルフの里の戦士”に視線を向けた。

「こんにちわ。」

 睨みつける2人にイオリはお構いなしだ。

「何者だ。
 我らの邪魔をするのなら、脆弱なお前達すら見逃しはすまいぞ。」

 魔法のエルフは今にも攻撃を繰り出しそうだ。

「この壁は何だ!
 面倒臭えな。
 こんなものどうぜ、蹴り飛ばせば穴が開く!」

 剣のエルフが土壁に近づくと大穴を開ける勢いで足を振り上げた。

ドンっ!!

「・・・なっ!
 何だ?!」

 確かに穴は空いたが、一瞬にして塞いでしまった。
 その後、数回ほど剣のエルフが壁に攻撃を仕掛けるも結果は同じであった。

 イオリはシモン・ヤティムが作り出した巨大な土壁包囲網に感心した。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 イライラする!
 何もかも上手くいかねー!
 終いにはお前らのようなクソ共の相手をしなきゃなんねーのか!」

 剣のエルフは短気を隠そうともしない。
 怒りに任せた地団駄で土煙がたっていた。

「・・・・さっきの煙の攻撃は何だ?」

 剣のエルフに構うことなく魔法のエルフがイオリに問いかけてきた。
 彼の目元は真っ赤に腫れ、瞳も充血しているようだった。

「催涙ガスですよ。
 目が痛かったでしょう?
 でも時間が経てば治ります。」

 素直なイオリに魔法のエルフもイラついているのが分かる。
 イオリが答えに剣のエルフは怒気を孕んで近づいてきた。

「テメーか!
 卑怯な攻撃をしてきたのは!」

 それにはイオリは心底不思議そうに首を傾げた。

「卑怯?
 自然と共に生きるエルフに言われるとは思いませんでした。
 貴方達も目の前に獲物がいたら、得る時に罠くらい仕掛けるでしょう?」

 と言われたのが堪忍袋が切れたのか、2人は一斉にイオリに攻撃を向けてきた。

「テメー!!
 貧弱で卑怯で見窄らしい、お前と我らを同じにするな!
 いつでも、お前らなんか壊す事が出来るんだ!」

「我々の崇高な目的をお前のような脆弱な愚か者に邪魔をされるなど恥辱以外の何物でもないわ!!」

 イオリは襲い掛かる剣のエルフが振りかぶる刃を蹴り上げ、魔法のエルフの手首に銃弾を打ち込んだ。

 弾かれて驚く剣のエルフと痛みで杖を落とした魔法のエルフ。
 そんな彼らにイオリは真剣な顔で語りかけた。

「貴方達の理念は知っています。
 決して理解は出来ませんが、必死に事を起こそうとしている事は分かる。
 でも、俺はそれを認めるわけにはいかない。
 たとえ、俺が反対したところで貴方達には関係がないのも分かっています。
 だから・・・。」

 2人のエルフは先程まで薄ら笑っていた若者の瞳が変わったのに気づいた。

「俺は貴方達を徹底的に止めるだけです。」

 イオリの戦闘が始まろうとしていた。
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