続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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「俺達はディビット様の護衛に戻る。
 お前達だけで大丈夫そうか?」

 アレックスが声をかけるとイオリは頷いた。

「えぇ。
 大丈夫です。」

 簡潔に答えるイオリにギルマスは益々慌てた。

「本当に大丈夫なのか?
 なんせ、この国の武力を持ってしも難攻不落だったんだぞ?
 戦力は多い方がいいだろう?
 準備は?
 結界について知っているのか?
 まさか、子供も連れて行くのか?」

 慌てるギルマスにイオリだけでなく子供達もクスクスと笑っている。

「何とかなりますよ。
 それに《押してダメなら引いてみな》って言葉知ってます?
 国の方がやらない事をしてみますよ。」

 楽しそうに答えるイオリにシモン・ヤティムはジッと視線を向けていた。

「私も連れて行ってくれまいか?」

「シモン!!」

 突然の申し出にイオリではなくギルマスが驚いた。

「私もこの国の戦力の一端だ。
 迷惑はかけない。
 それに、若い頃から何度もダンジョンには入った事がある。
 何か役に立てるはずだ。」

 イオリはヒューゴに問いかけるように顔を向けた。

「良いんじゃないか?
 俺達にとって他国での初仕事だ。
 証人になってもらうのも悪くない。」

「ヒューゴさんが言うなら良いですよ。
 シモンさんの準備は?」

 イオリが気遣うとシモン・ヤティムは己が掴む大きな杖を指差した。

「私はコレで十分だ。」

 魔法使いの武器は杖だ。
 同じく魔法を使うニナは興味深そうに大きな杖を見つめると、自分の腰ベルトから小さな杖を取り出した。

「ニナはこれ。」

 シモン・ヤティムは目を凝らしてニナの杖を見つめる。

「小さいが素直な杖だ。
 お前と相性がいいのだろう。
 一緒にいて楽しそうだ。」

 そう言われてニナは嬉しそうに頷いた。

「分かるのですか?」

 微笑むイオリにシモン・ヤティムは頷いた。

「魔法に長けた者は杖の声が聞こえる時がある。
 この子の杖はおしゃべりだ。
 主と何をしたのか話したくてしょうがないらしい。」

 クククッと笑うシモン・ヤティムに感心していたイオリの裾を引っ張るとニナはニッコリと微笑んだ。

「おじさんの杖はね。
 おじいさんなんだよ。
 眠ったり欠伸したりしてるけど、ニナに宜しくって言ってくれた。」

 それにはシモン・ヤティムも驚いたようだ。

「何と・・・。
 その年で杖の声が聞こえるのか。
 類い稀なる才能を持った子だ。
 それにしても魔力コントロールが良い。
 素晴らしい師匠に出会ったな。」

 師匠であるエルノールを褒められてニナは嬉しそうだ。
 双子とナギに合流すると褒められたと報告をし始めた。

「それじゃ、行きましょうか。」

 ギルマスの部屋を出て受付で依頼の受領の確認をしてもらうとギルドを後にする。

 ヒューゴの時だけ随分と時間がかかっていた。
 先程問題を起こした女性が担当していて、何故か恥ずかしそうに顔を赤らめている事など誰も気づかない。
 
「あのっ!
 先程はすみませんでした。」

「あぁ。」

「コレから依頼ですよね?
 お気をつけて!」

「あぁ。」

 彼女はギルドを後にするヒューゴの背に手を振って送り出した。

「・・・エリーヌ。
 お前、さっきの事忘れたのか?」

 呆れるウパにエリーヌは頬を膨らませた。

「忘れてませんよ!
 素敵だなって思っただけです!」

「あの人はお前の事、困った奴としか見えてないぞ?
 それに、怒られたくせに、よく素敵とか言えるな。」

「だって・・・カッコいいじゃないですか。
 怒ってばかりの人は嫌いですけど、私・・・優しいだけじゃなくて駄目な時は駄目って言える男性が好きなんです!
 あ~あ・・・早く帰って来ないかな~。」

「今、行ったばかりだろうが・・・。
 呆れたやつだな。」

 ウパが引いているのもお構いなしに恋する乙女になったエリーヌだった。
 
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