続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ダンジョン〜

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 元々、断るつもりはなかったが、簡単に引き受けるなと言うヒューゴの視線から、ポーレット公爵の名を出したイオリ。
 ヒューゴもイオリの判断に満足そうだ。
 主にあたるポーレット公爵の許可も得たとなれば、話を聞かない訳にもいかない。

「それで?依頼内容は?」

 腰を落ち着かせると説明を促した。

 シモン・ヤティムの許可を得たギルマス・ウェッジが話し始めた。

「この国には“余慶”の名がついたダンジョンがある。」

「・・・“余慶のダンジョン”。」

「ダンジョンの難しさで言えば、比較的楽な部類に入る。
 その為、多くの冒険者の食い扶持になってきた。
 のダンジョンとも言われるほど愛されている。
 しかし今、“余慶のダンジョン”が正体不明の結界が現れて誰も出入りできない状態なんだ。」

「ダンジョンに結界ですか・・・?」

 イオリが疑問を呈するとアレックス達も唸るように考え込んだ。

「そこだよ。
 入れないエリアなんてのはあるが、ダンジョン全体が結界に覆われているなんて聞いた事がない。」

 すると、ヒューゴが呟いた。

「まるで、ダンジョン自体が何かから己を護っている様だな。」

「我々も同じ結論に至っている。」

 神妙な顔をしたシモン・ヤティムにイオリは視線を向けた。

「筆頭と呼ばれながら解決できない愚かな魔法使いだが、結界については多くを学んできたつもりだ。
 その、私が何1つ解明できない。
 まるで、神の力が及んでいるようだ。」

 悔しそうなシモン・ヤティムを労わる様にギルマス・ウェッジが肩を叩いた。

「問題はダンジョンの中から30人程の騎士達、50人程の冒険者が帰ってこれない事だ。
 結界ができて1ヶ月ほど経っている。」

 人が囚われているとなれば国としては問題だろう。

「騎士達は生存反応は確認されている。
 王宮に存在する魔道具が騎士の魔力を感知しているのだ。」

 人の生存が分かる魔道具にも驚きだが、イオリは少し気になった事に口出した。

「だいたい何で騎士の人達が30人の大所帯でダンジョンに?」

 アレックスやヒューゴも不思議そうにシモン・ヤティムを見つめた。

 すると、シモン・ヤティムだけでなくギルマスやサブマスも、どこか気まずそうになった。

「それは国の機密で・・・。」

「いや、国の危機に手を貸してもらおうと言うのだ。
 全てに答えよう。」

 答えを拒もうとするサブマス・フォートナムをシモン・ヤティムが制した。 

「事の発端は我が国の一姫である、バシラ・フレール・デザリア様の一言から始まった。
 《ダンジョンにて願いを叶える鳥を見つけてこい。》
 姫の願いを叶える為に騎士達はダンジョンに向かったのだ。」

 顔を歪めるシモン・ヤティムの後を追うようにギルマス・ウェッジが吐き捨てるように言った。

「バシラ・フレール様は我が儘姫として有名なんだ。
 アレを探せ、コレを持って来いと命令するともっぱらの噂だ。
 今回だって姫の我が儘がダンジョンの怒りに触れたのさ!」

「ウェッジ!
 口が過ぎるぞ!」

 ギルマスとシモン・ヤティムは立場が違う。
 王臣であるシモン・ヤティムは姫の悪口を言う友人を嗜めた。

「たしかアースガイルでは、絵本が流行っていると聞くが?
 《願いが叶う鳥》の話を知っているか?」

 シモン・ヤティムの話にアレックスは首を傾げるが、イオリ達は分かっている。
 子供達のお気に入りの童話の1つだ。

 案の定、子供達ははしゃぐように近づいてきた。

「パティ、あの話大好き!」

「ニナも!綺麗な鳥さんなんだよね?」

「アレックスとロジャー知らないの?」

「僕が教えてあげるよ!」

 次々と話す子供達をシモン・ヤティムは優しい笑顔で見つめた。

「そう。姫様も同じような喜び様であった。
 そして、欲したのだ。
 ダンジョンの奥にいると言われる、伝説の鳥を・・・。」

 どこか疲れきったような筆頭魔法使いをイオリは静かに見つめるのだった。
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